第5話 救世主=生贄
GW突入です!
俺は勢いよく群がってきた男達に担ぎ上げられると、酒場のど真ん中でわっしょいわっしょいと胴上げされる。
「これで平和になるぞおおぉぉ!!」
「もうあの視線に怯えなくていいんだよな!!」
「これで、これであいつも浮かばれる……、ううぅ……」
次々に歓喜の声を上げる男達、胴上げから降ろされた俺は椅子に座らせられると、目の前に次々と豪華な食事が運ばれてくる。どうなってんだこれ、まるで意味が分からんぞ!!
「さぁじゃんじゃん食ってくれ救世主殿! 遠慮はいらないぞ!」
「おーい! 酒もじゃんじゃん持ってきてくれ。今日は祭りだ!」
「祭りじゃ祭りじゃ! じゃんじゃん祭りじゃ!!」
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ! いったいどういうことなんですか!」
意味も分からず救世主と言われても困惑するだけだ。せめて理由を教えてもらわないと。
実は俺って玩具屋じゃなくて勇者として転移させられたとか?
「ああ、そういえば今日異世界から来たばかりだってハイナが言ってたな」
「そうです。俺はこの村のこと何も知らないし、ちゃんと説明してください!」
「なーに、簡単なことだ」
そういって俺の隣に座ったのは、先ほどシルハと相対していた犬獣人の男性だ。体毛も髪の毛も濃いグレーで、今にも着ている服が筋肉ではじけ飛びそうな程の巨体だ。
「俺はデュレイグ=ハナート。さっきは助かったぜ、兄ちゃんがいなけりゃ殴り飛ばされたのは俺の方だっただろうからな」
立花宗司ですと名乗って握手する。手の平が明らかに俺の顔よりもでかい、握りつぶされるかと思った……。
この人よりも強いシルハってホント何者だよ。
「救世主って呼ばれる理由はな、兄ちゃんがシルハに気に入られたからだ」
「気に入られた? 冗談でしょう、何回も殺されるかと思いましたよ!?」
「シルハの奴が兄ちゃんの匂い嗅いで赤面してたろ。あれは俺ら獣人特有の反応なんだが、獣人は伴侶になる相手を匂いで選ぶんだ」
「つ、つまり。俺はシルハに匂いで気に入られたからあの後何もされずに解放されたと」
「あんな性格でも年頃の女だからな、体が男を求めてんだよ。つまりこれからシルハの標的は兄ちゃんに集中するってことだ、これを救世主と呼ばずに何て呼ぶ?」
「生贄って言葉知ってます?」
「はっはっは! これは兄ちゃんの歓迎会も兼ねてるからな、しっかり楽しんでくれよ」
デュレイグさんは俺の背中をパシッと叩いて、他のテーブルで騒ぐ獣人達のところに混ざっていった。
誤魔化して逃げやがったな。
「なぁハイナちゃん。俺はひょっとして来る場所を間違えてしまったんじゃ」
「おいひぃ〜、ひあわへれす〜!」
ハイナちゃんは皿の上に盛りに盛った料理を次々に口に運びながら、盛大に涙と鼻水を垂れ流していた。それはちょっと少女がしていい顔じゃないぞ。
まあでも、よっぽどお腹空いてたんだろうな。少女でも少しは肉付きのいい方がいいと思うし、幸せそうで何よりです。
俺は木のジョッキに注がれた飲み物、ビールによく似た薄い琥珀色の飲み物に口をつける。味も炭酸が弱いがどことなくビールに似てる気がする。
テーブルに置かれた料理も、うん、食材はよくわからないけど美味いな。
「うふふ、シルハも根は悪い娘じゃありませんから。よろしくお願いしますねソウジさん」
空になっていた俺のジョッキに追加で注ぎながら話しかけてきたのは、革製のワンピースを着た獣人の女性。ライトブラウンの髪の毛を背中の中程まで伸ばしており、それ以外の体毛は全てが降り積もったばかりの雪のように綺麗な純白。顔つきからして猫の獣人だろうか、やや丸みを帯びた輪郭に頭頂部の猫耳は前方に向かって曲がっていて、まるでスコティッシュフォールドのようだ。
「私はアイカ=ファスラルドって言います。シルハとは幼馴染なんです」
「ああ、あなたがアイカさん。ハイナちゃんから名前は聞いてたよ。この酒場の看板娘だって」
「そんな、看板娘だなんて」
「ソウジさん、アイカさんは美人で優しくて料理も上手くて、しかも戦ってもわたしのゴーレムよりもよっぽど強いんですよ!」
「マジで? 獣人の女性怖っ」
「なんてこと言うのハイナちゃん! あの、勘違いしないでくださいね。一般的に獣人は他種族よりも筋力があるってだけですから」
「そういうことね。よかった、みんながみんなシルハみたいなわけじゃないんだ」
「シルハはちょっと口が悪くて性格が好戦的なだけですから」
あれはちょっとの範疇を十分超えてると思うんだけどな。
「でもよかったですソウジさんが来てくれて。あの性格直さないとシルハは結婚できないって私ずっと心配してたんですから」
いやいやなにもう結婚前提で話進めてるの?
あんな暴力ウサギの相手なんか絶対嫌だからね!?
「とりあえずその話は置いておいて、実はデュー・ガルドには俺の店ごと転移してきちゃって。できればレイン村でも商売させてもらえないかと思ってハイナちゃんに連れてきてもらったんだけど」
「そういえばそうでしたね、忘れてました!」
口の周りをソースまみれにしてハイナちゃんはあっけらかんとのたまう。
おい。
「へぇ、何のお店なんですか?」
「とってもすごいですよ! 見たことない人形がいっぱいで、ぷらもでるでしたっけ」
「まぁ、玩具屋みたいなものかな」
「玩具屋さんですか。いいと思いますよ、レイン村にはないですし」
しかしやはり、移住はともかく商売を始めるには村の代表である魔人『フレイル=バーガディ』の許可が必要になるらしい。仕方なく俺は帰ってくるまで、酒場で宴を楽しむことにした。
シルハとどうこうなるつもりはいっっっっさい無いが、見ず知らずの俺のために開いてくれた宴なんだし、少しは楽しませてもらおうかな。
現在リアルではグリモアレッドベレーの制作に入っています。
GW中に積みプラを少しでも減らさなくては……。




