第3話 デュー・ガルド
とあるソシャゲをプレイしているんですが、ゴーレムって何でもできてすごい便利ですよね!
さて、とりあえず俺の置かれている状況は理解できた。
ここは異世界『デュー・ガルド』、その中でも大国と言われる『フレア』の辺境にある荒野地帯に俺と俺の模型店が飛ばされてきた。原因は不明、しいて言うならあの大地震だろうけどはっきりとしないし。
とりあえずこれからどうするか考えないと。
「ハイナちゃん、確かレイン村っていうのが近くにあるんだよね。そこに連れて行ってもらってもいいかな」
ひとまず他に人がいるところに行こう。今はとにかく、この世界で生活基盤を築かないと。
「はい、わたしもそれを言おうと思ってました。離れてる間このお店はゴーレムに守らせますね」
「そんなことできるの?」
「人間大位のゴーレムだったらちゃんと言うこと聞いてくれますから。とりあえず5体ほど置いておいて、野生動物や人間が近づいたら自動で撃退するようにしておきますね」
「すごいな、何でもできるんだゴーレムって」
「ふふん、わたし造型は苦手ですけど、命令を与える魔刻紋は得意なんです」
「さっき大きいのは言うことを聞かないって言ってなかった?」
気が付けば屋根を修理していた巨大ゴーレムは、修理の終わった屋根の上にさらに謎のオブジェを作り始めていた。
「お、大きすぎると伝達がうまくいかないだけで、ちゃんと命令したことはやってくれますもん!」
「まあ確かに、修理はやってくれたみたいだね」
ハイナちゃんは店護衛用のゴーレムを作り終えた後、今度は馬のような4本足のゴーレムを作り出してその背に跨る。ただ馬にしては背が低いな、どちらかというとロバだこれ。
「いじわる言うなら置いて行っちゃいますからね!」
「ごめんごめん、わるかったって」
もともと大して怒っていたわけではないようで、俺を置いて行くようなそぶりは見せずに後ろに乗るのを待っていてくれた。岩肌の上に直に座っているようなもので座り心地はあまりよくないが歩き続けるよりはマシだろう。
「揺れますからしっかり掴まっててくださいね」
「お、おう」
掴まってと言われても、掴まれそうな場所は……。
ハイナちゃんの肩、もしくは腰になるだろうな。こうしてすぐ近くで見るとちょっと掴んだだけで折れて仕まいそうな程細い。この世界ではこれくらいが普通なのか? いやでもお金が無いとか言ってたしやっぱり普段からあまり食べていないんだろうか。
「どうしたんですか? 早く腰に手をまわしてください」
「こ、腰でいいの?」
「肩でもいいですけど、振り落されても知りませんよ」
「わ、わかった」
こ、この娘は危機感というか警戒心がちょっと薄いんじゃないだろうか。
元の世界でハイナちゃんくらいの歳の娘にこんなことしたら間違いなく通報される、転移する前にニュースで見たけどセクハラの被害者が不明のまま告発されて職を追われた政治家がいたからな。まったく世知辛い世界だったぜ。
ハイナちゃんの忠告に従って、俺は両手をハイナちゃんの腰に回してしっかりホールドする。どうしても体ごと密着する形になるからやっぱり恥ずかしいな。
ちょっと埃くさいけど、いい匂いがする。
「飛ばしますよー! ハイヨー!!」
ロバゴーレムは嘶きこそあげないものの、ハイナちゃんの掛け声に合わせて前足を高く掲げると勢いよく疾走する。なんだこれロバの速度じゃねぇ! 一度だけ友人に連れられて見に行ったことがあるけど競走馬並じゃねーか!
「ハイナちゃん! は、速すぎ!!」
「しゃべったら舌噛んじゃいますよ!」
羞恥心などとっくに消え失せて、俺は振り落とされないよう必死にハイナちゃんの腰にしがみつくのだった。
「見えてきました、あれがレイン村です」
出発してからしばらくはとんでもない速度でかっ飛ばしていたロバゴーエムだったが、やがて荒野を抜け見通しの悪い森に差し掛かったあたりで速度を落としてくれた。さすがに衝突したらシャレにならない。
森を抜けている間にハイナちゃんはいろいろとデュー・ガルドについて教えてくれた。まずこの世界にはハイナちゃんや俺のような所謂『人族』の他に、全身に獣のような特徴を持つ『獣人』、頭部に一対の角を生やして異形の姿を持つ『魔人』、水中に住処を持ち魚以上に自由に泳ぎ回る『水人』の4つの種族がいること。それぞれの種族は大昔に大きな戦争していたが、現在はそれぞれの国に分かれて暮らし交流が始まっているということ。そして今から行くレイン村は、そんな中で珍しく他種族が一緒に暮らしている開拓民野村だということ。
「移民達による開拓村、ね」
「はい、小さな村ですけどいろんな人がいてとっても賑やかなところですよ」
ハイナちゃんは村で宿屋兼酒場を営んでいる『ファスラルド』さんのところで部屋を借りているらしい。村付きの専属ゴーレム技師として特別に格安で貸してもらっているのだとか。
「アイカさんって人がお父さんと一緒に営んでいるんですけど、アイカさんの作ってくれるギューシーのスープがもう絶品で」
「へぇ、それは行くの楽しみになってきたなぁ」
「ソウジさんも絶対に気に入ると思いますよ」
やがて村に近づくと、簡単に木材を組み合わせただけの門が見えてきた。何人かの村人がハイナに気が付いたようで、こちらに向かって手を振ってくれる。
「ただいまでーす!」
それに答えるようにハイナも大きく手を振り返す。
さあて、俺も受け入れてもらえるよううまく立ち回らないとな。こういうのは第一印象が大事だ、企業の面接と同じと思えばいい。
落ち着けよー、宗司。
「お帰りハイナちゃん、今日は早かったね」
最初に声をかけてきたのは門の傍で見張りをしていた人族の男性。金髪を短く刈り込んでいて、歳は見た感じ俺よりちょっと年上のアラサーってところか。
「荒野の辺りまで行ったんですけど、そこで」
ハイナちゃんが俺に視線を向ける。
「初めまして、荒野で途方に暮れていたところをハイナちゃんに助けてもらいまして。立花宗司っていいます」
「ソウジさんは異世界から転移してきたみたいなんです」
ええええぇぇぇぇ!! いきなりばらしちゃうのおおおぉぉぉ!
「どうりで変な服を着てると思ったぜ。そうか、そりゃ災難だったな。この村は仕事さえしっかりやってくれれば誰でもウェルカムだ。ようこそレイン村へ。俺はサクダイ=トーレス、よろしくな」
ええええぇぇぇぇ!! 納得してるうううぅぅぅ!!
「サ、サクダイさん驚かないんですか!? 異世界から来たんですよ!?」
「驚くことじゃないだろ、異世界からの転移なんてよくあることじゃないか」
「マジっすか!?」
なるほど、どうりでハイナちゃんも驚かなかったはずだ。どうやらデュー・ガルドには異世界転移というのはありふれた現象らしい。大丈夫かこの世界!?
「さすがにソウジさんみたいに、お店ごと転移してきたのはわたしも初めて見ましたけどね」
「はっはー、そりゃずいぶんと豪快な転移だな。店ってことは、なにかこの村で商売でもするつもりなのか?」
「俺の店は所謂玩具屋なんですが、そういうのって開拓村で需要有るんですかね?」
「玩具屋か、子供もそれなりにいるが、大きな街とも離れていてそういったのは全然入ってこないからな。いいと思うぞ」
「ありがとうございます。じゃあそのことも含めて、村の代表の方に挨拶したいんですが」
「代表、だったらフレイルさんだな。朝早くに狩りに出かけたから今は不在なんだが」
「なら、酒場で待ってましょうよ。わたしも帰ってきたこと報告しないといけないですし」
「さっき言ってたファスラルドさん、だっけ」
「それがいいな、ただついさっきシルハの奴が入っていったの見たから気を付けろよ」
「気を付ける? その、シルハさんって人にですか?」
「ああ、村一番の乱暴者だ。目をつけられないようにな」
「わ、わかりました……」
やっぱり酒場となるとそういうのが集まってくるんだな。しかもこんな昼間っから、きっとろくでもない野郎に違いない。来て早々に騒動を起こすわけにはいかないし、大人しくしておこう。
ヒロインとしてはいろんな種族を出していこうと思っています。
ただ個人的な趣味として、獣人が多くなるかも。




