表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
チートスキルを生むチート!!  作者: 入江九夜鳥
北のバグ
7/31

1-5 朝になったら助けた少女が部下になってた犬。



 †



 眠い目を擦って「おはよう」と挨拶を返したら、盗賊から助けた美少女が片膝をついて頭を下げて、


「わたしの身命を尽くし堅忍不抜の精神でお仕えいたします所存でございます。未熟者ではございますが、ぜひ使っていただきますようお願い申し上げます」


と言われた。


 な、何を言ってるかわかんねーと思うが、俺だって訳が分からない。

 助けた娘とキャッキャうふふとか、そんなチャチなレベルなんかじゃ断じてねぇ。もっと予想の遥か斜め上をブッ飛んで行きやがったぜ……!


 えーっと。

 ネタぶっこんでる場合じゃない。


 いや現実逃避というか、ちょっと寝起きでついていけなかっただけだ。



 状況を確認しよう。

 俺は今、異世界プラクトアースに降り立って二日目。森の中。


 目の前で消えかけていた焚火を熾し直したり、盗賊の洞窟から何か食べ物が無いか探してきてくれている犬の耳と尻尾を持つ藍色の髪の美少女は、アニエス・アマーハイと名乗った。


 アニエスさんは盗賊たちに攫われた被害者だ。

 それをたまたま通りがかった俺が助けた。

 ついでにちょっとばかり家族の仇を討たせてやったりもしたのだが、そしたら忠誠を誓われた。


 ……訳が判らない。

 異世界の人たちって、みんなこう義に篤いんかね?




  †



「ですから、わたしたち犬人種の習性なんです」


 どうにか俺が作るよりはまともな朝食を終えて、俺たちは森を歩きながらそんな会話を交わしていた。


「誰かに強烈な恩義を感じた時、ごくまれに一部の犬人に発現するんです。その相手に絶対の忠誠を誓い、生涯を尽くして仕えるという……」


 マジか。

 こんな美少女――近い将来絶対スレンダー美人に成長すること確定――に、俺は主として本能レベルで認定されてしまったというのか。


 もっと詳しい話を聞いてみると、ちょっと命の危険を救ってもらったとか、莫大な借金を肩代わりしてもらったとか、そんなのでは発現しないらしい。勿論個人差があるから、狙って発現させることもできない。


 けれどもしその忠誠を発現させることができたなら、絶対に裏切らない忠臣が生まれる。国王とか将軍とか、そんな立場の人間でれば金貨を山の様に積んででも手に入れたい人材だそうだ。


 もっともその忠誠は金では買えないし、忠誠の対象を移したりもできないのだが。


「じゃあもし……仮に俺がアニエスさんに」


「わたしのことは呼び捨てにお願いしますご主人様」


「えー、アニエスさ」


「呼び捨てで、ご主人様」


「…………」


「呼び捨てで」


「……アニエスが俺の事をご主人様と呼ばないのなら」


「畏まりました、アキラ様」


 ため息一発。

 ……もうそれでいいよ。


「それで、えー、もし俺がアニエスに死ねと言ったら」


「勿論死にます。可能であれば、アキラ様の敵となる人物を道連れに。その後更に可能であれば魂だけの存在となって、そちら側からアキラさまのことをお守りしようかと」


 やべぇ。目がマジだ。

 しかも生涯どころか死後も仕える気でいやがる。


「え、ええ……と。じゃあもしここで今すぐ服を脱いで、全裸で四つん這いで三回回ってワンと言え、と命令すれ―――ちょおおお、ストップ! 脱ぐなうそうそ脱がなくていいから冗談だからただの確認だから着て着て服着て服を着れぇぇぇーッ!!」


「え、そうなのですか……? はぁい……」


 躊躇いなく脱いだよこの娘!

 しかも途中で止められてちょっと残念そうだよ!

 出会ってまだ一晩だよ? ちょっと忠誠心仕事しすぎじゃねぇ!?

 

 形の良いおっぱーがおっぱーでつい目が釘付けになってしまったのは男として致し方ないサガであることは、その、あの、すんませんっした!


「あ、そうだアキラ様。わたしにはいかなる命令を下さっても構いませんしむしろ嬉しいくらいですが、他の犬人のことをイヌ扱いするのはお辞めください」


 犬系の獣人をイヌ扱いすることは最上級の侮辱らしい。その場で刃傷沙汰になってもおかしくないそうだ。


「俺がアニエスをイヌ扱いするのはいいんだ」


 一瞬遠い目をして、アニエスが身体を抱いてぶるっと震えた。


「……むしろご褒美です」


 しかし一方、誰かに忠誠を奉げた犬人にとって、その相手のイヌ扱いは称賛にすら思えるのだという。

 なんだそりゃ。


 そう思って、俺はアニエスに【鑑徹】を使用する。




名前:アニエス・アハーマイ


年齢:16歳


種族:犬人種 ハスキー系


職業:アキラ・コウジロウの部下 元農民


所持スキル: 【肉体強化Lv1】【農業Lv2】【料理Lv2】【犬人の忠誠Lv-】【???】



 マジだ。

 所持スキルに【犬人の忠誠】がある。


 俺は更に、その【犬人の忠誠】に【鑑徹】を使用した。

 

昨晩アニエスが横にいて俺は殆ど眠れなかったから、暇な時間を利用して新しいスキルを生み出したり持っているスキルを改良したりレベルを上げたりしていたのだ。

今まで【鑑徹】ではスキルの詳細までは判らなかったが、Lv5まで上げたらもっと細かいところまでわかるようになったわけだ。


 んでその【犬人の忠誠】の詳細だが……




【犬人の忠誠】

ユニークスキル。

犬人種独特のスキル。特定の人物に絶対の忠誠を誓う。

絶対に傷がつかない物の代名詞とまでされている。

その人物が周囲にいる、或いはその命令を遂行しているなど、主人と認めた相手の為に行うあらゆる行動中の全能力に強力な上昇補正。

発現条件が個人で大きく変わり、しかも主人となる人物との相性も必要とされるため狙っての発現が困難であるとされている。


副次効果として通常イヌ扱いされると激怒する犬人種だが、仕える主のイヌ扱いは非常に喜ばれるようになる。並びに主からの理不尽な命令や叱責に興奮するようになる。





 ドMか!!


 途中まですげぇスキルとか思ってたのに、最後ので台無しだよ!



 あと、【???】ってなんだ?



【???】

詳細不明。



まんまだな。

それでも気になって、【鑑徹】を強く意識して使用すると――少しだけわかってきた。


 この【???】って、スキルの芽みたいなものだ。


 まだ具体的な形にはなっていない可能性。

 本当に発現するかどうかもわからない。発現するにしても、今の時点ではどんなスキルなのか全くわからない、これからいくらでも変化する余地があるのだろう。

 

なるほど、中身が定まっていないから【鑑徹】でも看徹すことができないのか。


もしかしたら犬人種は【犬人の忠誠】を【???】の形で生まれながら持っているのかも知れない。種族特性として特に【犬人の忠誠】って形になりやすいのだろう。


 さておき、アニエスのことである。


 この娘、付いてくる気満々だよね。

 置いていったら地の果てまで追いかけて来るよね。

 どうしよう。


 アニエスを俺から引き剥がすには、滅茶苦茶簡単な方法が一つ存在する。

 俺が「ここから動くな。別命あるまで待ってろ」と言えば良い。


 が、もしそれをしたとして、【犬人の忠誠】が限界まで仕事してくれちゃった場合、きっとアニエスは餓死するまでここにいるだろう。

忠犬アニ公物語の出来上がりだ。

 俺の配役は、奉げられた忠誠を踏みにじるクソ野郎ってとこか。


 却下だな、うん。


 だが俺に付いてくるっていうことは、バグ退治に連れまわすってことだ。

 一日目にして早速盗賊団とモメたことだし、今後も荒事とは無縁でいられるとは思えない。


 俺は良いんだよ。自分の事だし、バグ退治の話断っていたらそのままオダブツだったんだから。

 そんな危険な旅に、只の農家の娘であるアニエスを連れていくべきではない。

 せっかく助かったんだから、人並みの幸せを掴むべきだ。


 よし、そんな感じで命令――もとい説得すればいい。


「アニエス。俺は訳あってこれから危険な旅に赴かね……あの、ちょっと、近くないッスかねアニエスさん?」


 近いっていうか、具体的には腕を組まれている。むにっとした感触がね。腕に伝わってきてね。


「はい。わたしの勘が言っています――『逃がすな』と」


 バレてるぅ!


 アニエスは、右手の中指に通している指輪を俺に見せた。

 シルバーのリングの中央に青い石がはめ込まれて、シンプルながらも美しい一品だ。


「母の形見です。アキラ様が取り返してくださいました」


「……コーザーが持っていただけだよ」


 俺は別に、聖人君子ってわけじゃない。

 できるだけ善人でありたいと思っているけど、割と、『割り切る』人間だって思っている。


 だから悪人だって確認した上で盗賊団たちを殺したし、金になるならその死体を持って行くし、そいつらの貯めこんだ金貨やお宝を懐に入れたりする。

 アニエスが装備しているマントや剣だって、盗賊たちが使っていたのを拝借したものだ。


この指輪だってコーザーの懐から出てきたもので、たまたまアニエスが気が付かなかったら【無限収納】に放り込んで、いつかどこかで換金していたことだろう。


「この指輪は、母も祖母から、祖母も曾祖母から受け継いだものだそうです。その母は言っていました。自分たちの種族は、とても情の深い種族なのだと。家族や身内をとても大切にして、その人たちがどこか遠くで苦しむことに耐えられないのだと」


 だから、


「いつかわたしに、恋人や家族が出来たのであれば離れず、ともに歩みなさい。共に歩んで、その苦しみを分かち合いなさいと」


 そして今ならわかります。


「わたしたちのこの忠誠は、誇りなのです。主となった人の危難を討ち払い、困難を助け、苦難にあってその支えとなるのは――わたしたちにとって、なによりも誇らしい」



 そんな真っ直ぐな目で言われては、もう俺に言い返すことなどできなくなる。

 全く……。


 可能性としては、考えていたことである。あの銀色モヤモヤと一緒にいた時、味方を増やすスキルというのは選択肢にあったはずだ。

 

それに、相手を支配下に置くとか、国家規模の集団をつくるとかはさて置いても数人程度の仲間が必要になるのではないかとは、薄々思っていたところではある。

 

俺一人では色々と手が足りなくなることはありえるしな。

 けどまさかたった一日で仲間が増えるとは思ってもいなかったが……。


 覚悟を決めることにしよう。


 俺は、バグについての話をすることにした。





前回の予告で、チートスキルがチート過ぎる話をすると言っただろ?

すまんありゃウソだ。

思ったより今回分が分量あったんで二回に分けることになったんだ。

なんでもしないが許してくれ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
よろしければクリックお願いいたします 小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ