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チートスキルを生むチート!!  作者: 入江九夜鳥
北のバグ
3/31

1-1 予定は未定で想定外な予定外

 1-1


 †



 浮遊感を抜けると、そこは異世界であった。


「おお……」


 感動を覚えて、俺は周囲を見回す。

 そこは、森の端っこの方だった。小高い丘になっていて、眼下に街道らしき道がある。当然だがアスファルトで舗装されていたりなんかしない。


 青い空に、白い雲。そして輝く太陽、そよぐ風は俺のいた世界と違いはないが、雲と同じ高さに巨大な岩が浮いているのは、まさしくファンタジーの光景である。


 着ている衣服もジョギング用のスポーツウェアではなく、麻布の服と革のブーツ、そしてフード付きのマントである。腰にはこの世界ではごく一般的な性能の剣を帯びている。


 感無量とはこのことだ。


 だが、感動に浸っているばかりでもいられない。

 俺をこの世界【プラクトアース】に送り込んだ創造神が一柱【テン・テル】、つまりあの自称神様の銀色もやの言うことには、この世界は剣と魔法、そして魔物がいる世界である。


 早速俺は、予め言われていたように心の中でスキルの使用を念じた。


(【目録図(メニュー)】!)


 ユニークスキル【目録図(メニュー)】。

 俺の力の根源である【創造・力(スキルメイカー)】を補助するために生み出したスキルである。


 俺とテン・テルは現地に来て慌てないようにと、既にいくつかのスキルを生み出して身に着けておいたのである。


 【目録図(メニュー)】は文字通り、俺が所持している能力や項目を表示するスキルだ。まんまゲームのメニュー画面を意識して創った。

 視界に映る半透明の【目録図(メニュー)】画面には俺に関する項目が並んでいる。 


【神代 明 コウジロ アキラ】

 種族:純人族

 年齢:20

 職業:無職


 所持スキル:

創造・力(スキルメイカー)

目録図(メニュー)

【言語Lv5】

【適応力Lv5】

【肉体強化Lv2】

【魔力操作Lv2】

【基礎魔術Lv-】

【通神Lv-】

【無限収納】

【感探Lv-】

【隠形Lv5】

【超鋼体Lv5】

操剣術(マリオネットソード)Lv5】



「よしよし、問題なさそうだな」


 思わずニヤリとしてしまう。特別に年齢を若くしてもらったのだ。お陰で腹回りもすっきりである。メタボ気味だった体形で戦いに赴くなんて無茶だってことで、サービスしてくれたのだ。

 マジありがてぇ。


 一通り確認を終えた俺は、スキルの設定を次々にオンに変更する。


 ユニークスキル【感探】をオンにした瞬間、不思議な感覚が全身を駆け巡った。

 意識を集中することで草の一本一本、虫の息遣いすら感知できるような気分。


【感探】の能力はまさしくそれで、あらゆる知覚能力と探知能力の向上だ。俺が意識すれば、百キロ先に落ちた針の音すら聞き分けることができるし、何か探しものをするとき直感的な補助が受けることができるようになる。


「おいおい、どうなってんだ……」


俺は戸惑いを覚えた。


 【感探】は俺のこの世界における使命である、バグ退治のために用意したスキルだ。様々なことを感知するのは副次効果。どんなに離れてもバグの位置を感知するのが本来の目的のスキルなのである。


その【感探】によると、バグが割と近くに、ある。街道の先の方、流石にここからでは見えないが、人の気配が沢山ある街の付近だ。


そちらを正面に見据えた時、背後方向遥か向こうに一つ。右後ろ、そして左後ろにも一つずつバグの存在を感知できる。


 つまり、バグの数が四つあるのだ。

 テン・テルもそんなことは言っていなかった。


 俺は早速ユニークスキル【通神】を使用し、神テン・テルに連絡する。報連相は社会人の基本だからな。


ぷるるるっという俺だけに聞こえる呼び出し音の後、がちゃっと音がして神様が応じた――っていうか、電話みたいだなこのスキル。


『はいもしもし、テン・テルです。アキラかい、早速どうした? もうバグ倒したの?』


「んなわきゃあるか。おい神様、スキルで感知できるバグの数が四つある。聞いていないんだが」


『えっ、マジで?』


 おい。

 大丈夫か、この創造神。


 俺は自分の使命に、一抹の不安を覚えた。



 †



 テン・テルは、バグが世界を侵食し、世界崩壊まで三年の猶予があると見ていた。

 それはバグの数が一つであると思っていたからだ。


 だがバグの数が四つともなれば話は変わる。

 【通神】によるやり取りで、俺たちはその猶予が、もっと短いのではないかという可能性があることを確認した。


『一年未満……ということはないはずだよ。それだったらもっと世界に異変が起きているはずだし、僕がそれに気づかないはずがない』


 とはあてにならない神様の言である。


 マジか。せっかく異世界に転生したのにその世界の寿命が三年なんてシャレにならねぇと思っていたのに、それがもっと短いだなんて。

 これは思っていた以上に猶予が少ないと考えて行動するべきだ。


『いずれにしろ情報が足りなさすぎるね。先ずはその最寄りのバグを調べてみてくれ。可能であればなるべく早く駆除してくれるとありがたい。それで時間が稼げるはずだ』


「了解した」


 神様は神様でやること沢山あるから、ずっと俺をモニターしている訳にもいかないという。


 俺は現地で、神様は神様のやり方で情報を収集する。

 互いに連絡を密にする必要があることを確認しあい、【通神】を終了した。


「さて、待たせたな」


 俺が振り返ると、そこにいたのは三匹の獣である。

 緑色の毛並みを纏った狼。唸り声をあげて、こちらを威嚇している。


 【感探】でこいつらが迫っていたのには気づいていた。


「逃げることも先制することもできたんだが」


 俺は腰の剣を抜いた。冷たい刃が太陽光を反射する。

 それを合図というように、狼たちが俺に向かって走りこんできた。


 俺は【肉体強化】と【操剣術(マリオネットソード)】のスキル頼りに剣を振るった。飛びかかった狼を躱し、次の一頭を肩から一刀両断に切り裂く。


 時間差で飛びかかったもう一頭を剣を握ったままの拳で殴り飛ばした。

 ぎゃうん、と悲鳴を上げて地面に転がる狼。入れ替わるように、最初の一頭が俺の喉を狙って噛みついてくる。


「おっと」


 【肉体強化】は、身体能力全体を強化するスキルだ。専用スキルに敵わないまでも動体視力や反応速度も強化してくれる――だからその攻撃も丸見えだ。余裕をもって飛び退って噛みつき攻撃をかわした。


 が、足に衝撃。

 藪の中に隠れていたもう一匹が、隙をついて噛みついたのだ。


 囮役となった目の前の狼がにやりと笑ったような気がする。気がするだけだけど。

 だが、笑うのは俺もまた同様である。


 右足に齧りついた緑狼が、血を流しながらその口を離したのである。


 レアスキル【超鋼体】。

 文字通り肉体を鋼以上の硬度に上げるスキル。


「俺の身体を喰い千切るには――」


 足元で混乱している狼。そりゃそうだろうな。肉に齧りついたら岩よりも硬くて牙が折れたんだから。口から血を流し隙を晒している狼を俺はためらいなく切り捨てた。


「ちっとばかし顎が弱かったな」


 俺は残った二頭を見る。

 一頭はまだ無傷でこちらに牙を剥いているが、もう一頭は文字通り鋼の拳で殴りつけられたのだ。手応えもあったし、結構な重症であるようだ。こちらを睨みつけているが息が荒い。


 俺は剣を一振りして、血糊を落とした。


 俺が狼どもの存在に気付いていたにも関わらず逃げも先制もしなかったのは、現時点での戦闘能力を確認しておきたかったからだ。


 テン・テル曰く【超鋼体】の硬度はちょっとやそっとでどうにかなるものでもないって保証してくれたからでもある。


 まぁ、バグの件といい、創造神という割にはどーにも不安の拭えないところがあるが。ああ、だから見習いなのか。やべぇ、超納得した。


 さておき、緑の狼である。

 俺の【感探】は、茂みに更に二体の狼が潜んでいるのを知らせてくれている。爪や噛みつきが【超鋼体】の防御を突破できないと確認できた以上、俺が負けることはまず無い訳で、これ以上の戦いに意味はないのだが。


「ま、これもそっちから襲い掛かってきたのが悪い」


 俺はスキル任せに踏み込んだ。

 無傷の方は素早く反応し、横っ飛びに距離を取るが殴られた狼の方はそうはいかない。反応はできても、身体が付いていかない。

 隙だらけの胴体に刃が通り、絶命させる。


 俺が振り返って顎で合図すると、無事な狼と、まだ茂みに潜んでいた二頭はガウッと一鳴きして身を翻し、森の奥へと駆けて行く。


 俺は戦利品として緑狼の死体三頭分を手に入れた。やべぇ、解体の仕方わかんね。取り合えず【無限収納】に放り込んでおく。


「さて」


 俺は再び街道の方を見た。

 バグがいる方向に人の気配が沢山集まっている。街があるのだろうと思われる。


 だが、【感探】のスキルは、このまま背後の森の中に進んだところに、数人の人間の気配を感知していた。なんとなくだが、俺の勘がそちらに行くべきだと告げている。

 これも【感探】の効果なのかな?


 少し考えた末に俺は、森の方へと歩を進めた。






 ----------------------------


 使用スキル

 Lvがあるものは、最大で5。その業界で神と呼ばれるほどの技能を持つ。

 Lv-となっているものは、限界突破しているもの。

 Lv表記がないものは、そもそも鍛えることができない類のもの。



目録図(メニュー)

 ユニークスキル

 スキルメイカーを使用するにあたって補助的に作り上げたスキル。

 ゲームのメニュー画面を意識してつくられた。スキルの管理のために用いる。


【肉体強化Lv2】

 コモンスキル

 身体能力の全強化。同レベルの個別能力強化には劣るが、反射神経や視力なども強化される。レベル2は一般的な中級冒険者の平均。


【通神Lv-】

 ユニークスキル。

 神属性の存在と通じ合うことができる。習得にはなによりその神との相性が必要。

 アキラのそれがLv-となっているのは創造神テン・テルのホットラインとして設定してあるため。

 通常、特定の神の巫宜とされる存在が修行の果てに【天啓】や【神託】を得るのにLv3が必要とされる。Lv5でも電話のような会話など普通はできない。



【無限収納】

 ユニークスキル。

 レアスキルである【収納】を使いまくり鍛えてLv限界突破したものが開花させることのできるスキル。文字通り容量無限。中に入った物質の重さは全く感じない。

 ただし【収納】スキル持ちが死亡した場合、収納されたものが周囲に飛び散るので注意が必要。



【感探Lv-】

 レアスキル

 コモンスキルである【感知】と【探知】を鍛えた才能ある者が至る上位スキル。周辺のあらゆるものを感知し、あらゆるものを探知する。このスキルの前に同レベル以下の【隠蔽】系スキルは意味を成さない。

 また、このスキルをもっている者は【予感】系スキルや【読心】系スキルを得やすくなり、その前兆として勘が鋭くなり、人のつく嘘や悪意や殺意などに対し敏感になる。

 何故かどれだけ鍛えても異性から向けられる恋心を感知することはできず、【鈍感】スキルを得やすくなる。


 アキラの場合はどれだけ遠くともバグの存在を感知することができるという特殊仕様。



【超鋼体Lv5】

 レアスキル。

 肉体が鋼以上の硬度を得る。ただし不壊属性という訳ではなく、防御力を上回る物理攻撃でダメージを負う。副次効果として熱に強くなる。熱くないわけではないが、鋼を溶かす熱量でないと火傷を負わない。また急速冷却で脆くなる。通電体質になり、電撃を浴びると一時的に肉体に磁力を帯びる為、砂鉄が身体にくっつくようになる。





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