表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
チートスキルを生むチート!!  作者: 入江九夜鳥
北のバグ
16/31

2-8 路地裏でお金を(ry 解答編


   †


「アキラさま」


 アニエスに小声で尋ねられる。

 他に何も言葉は無いのに、彼女が何を言いたいのかはわかった。


「大丈夫。考えがある」


 後を追けられてる。

 雑踏の向こう、少し離れた場所から、付かず離れずの位置をずっと保ってこちらについて来る、猿人冒険者。


 彼女の存在には、早い段階で気が付いていた。

 具体的にはギルド内にいる時から。


 ……インデドウ村からノーストの街まで徒歩で二日。

 その間片っ端から魔物を狩りまくっていたお陰でギルドの職員さんとかが呆れる程の量になったのだが、そうなったのにはちゃんと理由がある。


 戦闘向けのスキルを創造したのもそうなのだが、一番大きかったのは感知系スキルである【感探】を改良したことだった。


 新しい感知スキル――【感全界析(オールサーチ)】。

 簡単に説明すれば、感知・探査・解析・分析・鑑定のスキルだ。


 このスキルを起動させると、まず周辺の地図が脳裏に浮かぶ。

 その範囲に存在する物質や生命について感知することができ、それらに意識を合わせればある程度の精度で【鑑徹】使える、というスグレモノだ。

 

何か探し物があれば即判るし、近くに無い場合でも方向くらいは感知できる。

周辺にいる人たちの、自分に向ける意識――この場合は敵意とか殺気とかもある程度判別がつくのだ。


んで、その【感全界析(オールサーチ)】にひっかかったのが、猿人種の冒険者だった。俺たち、というか俺に対して強い関心を持っている。


……敵意は無いみたいだけど、なんつーか……一応準備はしておきましょうかね。


という訳で、ギルドを出た俺とアニエスはストーカー引き連れてノーストの街を散策して回った。


雑貨屋では大きな木箱を購入。丁度良いサイズのものがあった。

 小腹が好いていたので露店で串肉の焼いたものを購入する。

 甘じょっばくてスパイシーなタレが旨かった。


 何の肉かと聞いたら、まさかの子食い百足(ベイビーイーター)だった。


「美味しいんですね、あのムカデ……」


「でかかったからそりゃ食えなくはないと思っていたがな」


 殻を剥いてしまえばそれとわからない。牛肉か何かと思っていたぜ。

 ムカデも美味いとは異世界おそるべし。


 さておき、丁度良い路地裏が脳裏の地図で発見したので、俺たちはそちらへと移動していく。ストーカーは諦めずに追いかけてきているようだった。


「アニエス、そこの角を曲がったところで作戦通りにやるぞ」


「了解です」


 そして人気のない路地裏へと入る角を曲がったところで、俺たちはスキルを発動させた。


多重存在(ドッペルゲンガー)


 任意の物体或いは自分と全く同じ姿形の存在を一時的に多重化させるスキル。

 つまり、俺とアニエス――の姿形が全く一緒で、しかも自己判断で動き回ることのできる偽物を発生させたのだ。


 そして同時に、俺は【無限収納】からさきほど購入した木箱を取り出し、引っ繰り返した箱の中にアニエスと共に隠れる。


 スキル発動。


隠侵伏蛇(スニーキングスネーク)

 敵地への潜入行動、あるいは物陰や箱などに隠れた際の発見される確率が極小になるスキルだ。


 加えて、見た目が全く一緒な存在が目の前にいるとなれば、まさかそれが偽物だなんて思う筈も無い。


 猿人冒険者は、角を曲がって路地に入ってくるが、俺とアニエスが隠れている木箱を全く気にすることなく、スキルで生み出したもう一人の俺とアニエスに向かって行った。


 木箱の隙間から、俺とアニエスは冒険者の行動を見守っていた。

 ところでアニエスさん?

 ちょっと狭いんで、箱の中で尻尾ぶんぶんさせるの止めてもらえませんかね?


 木箱の隙間から外を窺う。

 そこには、女性冒険者と俺たち二人のドッベルゲンガー。


 想定通り彼女はそうと気付かず、偽物に話しかけていた。


「あ、ああ。もしかしてアンタら、あたしのことに気付いていたのかい? 流石だね」


「後を追けたりして悪かったよ。アンタらにさ、ちょっとばかしお願いというか、話があってさァ」


「その、なんだ。あんたら、大金持ってるんだろ……あたし、物入りってヤツでさ。事情があるんだ。アンタらの持ってる二百万を」


(強盗……ですかね。そんな風には見えませんが)


 隣のアニエスが囁く。


(でも人って、追い詰められれば何するか分からないしな……ところでなんで、アニエスはさっきから深呼吸してるん?)


 あと、木箱が狭いからってちょっと近すぎ。


(またと無い機会ですからね!)


 何の機会だよ。

 

 ンなことやっているうちに、女性は手にする鉄棍を強く握りしめる。

 纏っている空気が変わる――ドッペルゲンガーたちも腰の武器に手をかけて。


(偽物たちが耐えている間に、後ろから張っ倒す。一応殺さない方向で)


(了解しました)


 そして彼女が動く。


 鉄棍を――地面に放り出し、流麗な動きで土下座した。


(さぁ、行きま――――ええええええ)


(土下座!?)


「は、恥を忍んで頼む! どうか、この通りだ!! どうしても金が必要なんだ、頼む、その二百万を貸してくれないか!!」


 沈黙が、周囲に満ちる。


 そりゃ沈黙が満ちるよ!

 どうすんだよこれ! こんなん、普通に襲われた方がまだマシだったよ!!


 俺とアニエスは取り合えず、木箱から外に出た。

 それを見て偽物たちがニヤニヤしてやがる。


 畜生、そっくりさんってことは、逆の立場だったら俺がするのと同じ対応ってことだ。

 つまり今、俺は俺自身に笑われてるってわけだ。

 どうしてこうなった! どうしてこうなった!?

 

いや、だってほら、分かるだろ!

 路地裏までついて来たんだから、襲われるって思うだろ!

 それがテンプレって奴だろ!


 おま、ちょ、アニエス! 

 他人事の様に笑い堪えてるんじゃねぇよ!

 お前もお前の偽物に笑われてるんだからな!


 あと、土下座女!

 さっさと顔上げろ!

 状況に気付いてくれ!


 少し経って、冒険者の女が顔を上げた。

 目の前の偽物たち(ニヤニヤ顔)に促され、後ろを向く。


「え、な、なに? なに……?」


「………………ぷ、く、ふふっ」


 笑いを噛み殺しているアニエスと、


「…………………………」


 憮然とした顔の俺がいるわけで。

 あーもう、この抜いた剣は一体どうしたものですかね。


「えっ!? あれ、前、えぇ!? だってそこに……!?」


 混乱する冒険者。

 その目の前で、すぅっと姿を消す俺とアニエスの偽物。

 スキルで生み出された存在なのだから、スキルを解除すれば勿論消える。


「え!? なに、何なの!? 消えて……うしろ!? どういうことぉ!?」


 それは俺が知りたい。

 マジで知りたい。


「はぁ……なんなんだ、全く……」


 ため息しか出ねえよ!










-----------------------------

使用スキル


感全界析(オールサーチ)

 ユニークスキル

 【感探】の完全上位互換スキル。

 感知・探査・解析・分析・鑑定の複合効果。

 周辺の地図地形を脳裏に反映し、そこに存在する無機・有機物について感知する。

 対象に意識を合わせれば離れていても【鑑徹】も使用可能。

 このスキルを前にあらゆる隠蔽と偽装と虚偽は意味を成さない。


 また対象の自分に対する敵意や殺気なども判定可能であり、言動に対する真偽判定も付随する。

 ただし、異性による恋愛感情だけは相変わらず感知することが出来ない。


 全力で稼働させると、範囲内の雨粒すら数えることができる。

 ただし脳に強い負担が掛かるので、出力は抑え気味にして常時展開するのが望ましい。 



 アキラの場合、バグの位置をより高い精度で捕らえることが出来る特別使用。

  

 

多重存在(ドッペルゲンガー)

ユニークスキル

対象とする物体や現象を多重化する。

多重化した存在は独立して行動することができるが、本体の能力値の八割しか再現されない。

基本的にスキル使用者に対し忠実。任意での消去が可能。

アキラが自身に使用した場合、多重存在は【創造・力(スキルメイカー)】だけは使用できない。




隠侵伏蛇(スニーキングスネーク)

レアスキル

建物や施設内に密かに侵入したり物陰に潜伏する際、発見される確率が大幅に減少する。

また段ボール箱や木箱の類を被ってじっとしていると発見される確率が極小になる。


なぜか野生動物や魔物が食べることが出来るかどうか、その味がどうなのかが気になってしまう副次効果あり。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
よろしければクリックお願いいたします 小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ