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09.AngeRー失われたタカラー

やっと10話ですー(^○^)ここまで長かった。いろいろと話がそれましたが、全て最後にまとめるので全部読んでいただけると嬉しいです。

◆◆◆15


「何してんのっ!?」


おだやかな美術室に美智子の罵声が響く。彼女にしては珍しく大きな声をあげた。

それと同時に肖像画に駆け寄り、急いで液体を拭き取る。

紙が破れないように、少年の顔を壊さないようにゆっくりゆっくり丁寧に。

だが、無惨にも液体は速度をあげて滴り、美智子が拭き取るのと同時に少年の顔も崩れていく。



「………あやの…なんで!?先輩、大事にしてたんだよ?なのになんで……」



かすれた声で呟きながら、破れそうな絵を必死に元に戻そうとする。


「ねぇ!答えてよっ…」


だが綾乃は答えない。ただ溶けていく少年を眺めているだけ。その顔にはなんの感情もない。


「あやのっ!!」


美智子の声が寂しく響く。綾乃はただ静かに少年の最後を見守っていた。



「……どうしたの…?」



ふいに場違いな声がした。

綾乃と入れ替わるように、職員室に行っていた永池香織が戻って来たのだ。




「あや…?みーちゃん…?」



状況が呑み込めないらしく、戸惑いを浮かべている。


「………あやのが…先輩の肖像画を壊したの…」


ぼろぼろになった肖像画を美智子が指差す。


「あやのがやったの…」


「えっ」


香織の戸惑いに波紋が広がる。


「水をかけて、それで…」


今はもう紙切れのようになってしまった絵をそれでも美智子は拭き続けた。


大事に…大事に…


肖像画を慈しむかのように。


「なんで…!」



理解出来ない!と言わんばかりに声を張り上げる。



「だってそれはあやが先輩のために描いたものでしょう!それなのに…」


力なく拳を握った。

失ったものを掴むように。二度と手に取れない宝を求めるように。



「ねぇー…あやっ…先輩はあやが美術部を辞めてから、ずっとあやの肖像画を大事にしてたんだよ?

あやが一生懸命描いてくれたからって。もぉーいないけど、それでも僕にとってはいるんだ、大事な絵なんだ。って。いつも悲しそうに笑って……なのになんで!?」


壊れた肖像画を掴み取る。


「見て!!あやが一生懸命描いた絵なんだよっ!!」


綾乃前に壊れた肖像画をかざした。

しっかりと瞳に映るように腕を伸ばして、ぎゅっと力を込めて。



「止めて」



今まで黙っていた綾乃が大声を張りあげた。

そしてぐっと香織の腕を握り、肖像画を見えない位置に移動させる。

それから、肖像画を取り上げた。


「なっ……」


香織が離した肖像画はぱらりと落ちていく。

その肖像画を掴み取り、綾乃は一気にばらばらに切り刻んだ。



「……!!」



綾乃の突拍子もない行動に二人とも目を見張った。

ありえない…その言葉がぴったりと合う顔をしていた。

だが、当の本人は鋭い瞳で美智子と香織を眺めるだけで、怯みもせずに静かに言い放った。



「悪いのは先輩。あの人はあたしを裏切った…」



切り刻まれた肖像画がひらひらと宙を舞う。



「あたしは先輩を信用してたのに…先輩は違うって…そんなことしないって…それなのに…!!」


肖像画の最後の一欠片が床に落ちた。


綾乃の過去その2でした。これが案外あとに繋がるはずです…評価&感想お待ちしてます。

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