俺というジョーカーについて
俺は改めて、自身のステータス画面を見開いた。
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class : #joker__ジョーカー__#
【名前を設定して下さい】
LV : 1
HP : 5/5
MP : 0
#ATK__攻撃__# : 5
#DEF__防御__# : 1
#MAT__魔法攻撃__# : 0
#MAE__魔法防御__# : 0
【固有スキル】
・スキルドレイン LV :xxx (一対象につき一回のみ使用可能)
・スキルブレイク LV :xxx (一対象につき一回のみ使用可能)
※一対象に対してスキルドレインとスキルブレイクの併用は不可とする
・なし
【メソッド】
・ LV :2まで残り経験値56
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ステータスは以前見た時と何ら変化はない。
当たり前だ。まだ何もしてはいないのだから。
もしも今後変化があるとするならば、それは一番下の【メソッド】という欄に記された条件をクリアすること以外考えられない。
【メソッド】とは、即ち俺の成長に必要な要素を表示してくれるものらしい。
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【メソッド】
・ LV :2まで残り経験値56
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経験値56という値が如何程のものかは定かではないが、最初だからそこまで高い数値でもないだろう(と思いたい…)。
この経験値56を獲得するには、嫌でも敵を倒さなければならないことは分かっている。ただ、倒すって感覚がイマイチ分からん。
敵をボコボコに痛めつけて戦闘続行不可能にまで追い込めばいいのか、それかそもそも痛めつけるとかではなく殺してしまえばいいのか…いかんいかん、怖いこと考えてるな、俺。でもそういうことだったはそうするしかないからね、うん。
どちらにしろ戦闘しなければ分からないわけだから、この点に関してはその時になって考えればよし。
大体今の俺にはどちらにせよ無理なわけで、今このままの状態で戦ったところでやられてしまう未来は目に見えている。それじゃあ最早経験値がどうだと気にしているレベルじゃない。
だからまずは戦闘を行えるだけの状態にするのが先決だ。そのために、俺は兎に角として青年の力を奪取する事を決めた。
その為に俺はスキルドレインを発動させるーーー#joker__ジョーカー__#としての#役割__クラス選定__#を得た俺にだからこそ使える固有スキル。
方法は至ってシンプル。定まった対象の体に触れた状態でスキルを発動させる、ただそれだけでいい。
スキルドレインの発動が成功した後、俺は対象からスキルを奪うことが出来る、ということだ。
実際にはまだ試したことがないだけに詳しくは分からない。ただ#そうなるんだろうな__・__#という予測が曖昧ではあるが理解できる程度である。
しかも奪うって言ったって果たしてどこまで奪い取る事ができるのかはまだ分からない。ちょっとなのか、全部なのか…まだまだ予測範疇、結局は不明瞭なままだ。
「それでもやるしかねぇってことに変わりはないが…」
ジリジリと、青年との距離を詰める。青年が剣を振るっている場所は、森の中だと云うのにも関わらず、其処だけが草木が生えておらず、円形のくぼ地と化していた。故に見失なうことはない。
しかもだ、幸いにも青年がいる場所までは然程遠くない。また青年がいるくぼ地までは生い茂る草木などで身を隠す場所は幾らだってある。
気配を殺して、するりするりと慎重に足を進めた。木影から雑草の茂みへ、また茂みから木影へ、何だこれ、まるでストーカーみてぇじゃねぇか、おい。
まぁ実際ストーカーと何ら変わりはないけどな。これから青年を襲うわけだし、いやそれじゃあ聞こえが悪いな。別にホモとかじゃないし、うん。てか誰も見てないわけだからそんなこと気にする必要はないか。
この際ストーカーだろうがホモだろうがどっちだっていい(いややっぱり良くない)。俺は青年の能力を奪い取ると決めたのだ…それは生きる為に。
こめかみを一筋の冷や汗が伝う。あれ、おかしいな、俺緊張してんのかな?でもそういった感情はアンヘルに消されたわけで…いや待てよ、緊張は緊張でも場面によっては緊張することはあるのか?
確かに街の散策に出掛けた二日間、俺は何故だか誰かに声を掛けるのを躊躇っていた…それは要するに、俺が誰かに『声を掛けるの』という行為に対して恐怖を感じていたからではないのか?
もしかしたら、デスゲームで勝ち抜く為に必要な非道な行いや思考などに対する一抹の感情を失っただけで、俺という人間に元々備え付けられていた『コミュ障』という障害は取り除かれてないとか?
うっわ、そうだったらマジで嫌だな…
せっかく異世界転生を果たして新しい俺の幕開けだというのにも関わらず、ただ非道な糞野郎になっただけで、生前の鼻くそみたいな人間性はそのままとか…何だそれ、マジで救いようねぇじゃん…
「だったら尚更だ、俺はもう…後には引けない」