六郎について
六郎は飛ばして走り過ぎて、警察に捕まった。
自分はゲイであることがバレるの恐れた彼は、捕まった後、警官の羽交い締めをかいくぐり、飛ばして逃げた。
それ以後、交番のポスターに容疑者として貼り出されることとなった。
いっぽうその頃、藤川はトランクに上半身だけ挟まったままの状態で、変死体として発見された。完
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飛ばして走る意味を考えてはいけない
意味などあとから勝手に誰かが付け足したものに過ぎない
夜に飛ばして走る君を私はニヤニヤしながら見ていた。
彼はよく前を見ていなかったので、電柱に激突した。
人知れず、そっと息を引き取った。
六郎の誕生である。完
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六郎は何故か裏山の穴の中に暮らしていた。
六郎は何故かムラムラしていた。
六郎はゲイコミュティで何故かナイトランした。
六郎はすすきので何故か黒服をしていた。
六郎は屁をこくと、一緒にうんこが出た。
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六郎
それは神がもっとも最初に創造した人間
原初の人類
ナノテクノロジーで、数万年間生きている
飛ばして走るその想い
誰にも理解されず
ゲイのセックス話を生々しく若者たちの前で説法し、僕らはかなり飽きた。
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さびしくて、さびしくて
なつかしくて、なつかしくて
どうしたらよいのか、
わからなくて、わからなくて
孤独の凄まじさ
六郎の凄まじさ
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六郎が伝えたかったのは希望だったが、
誰しもがホモの求愛ソングと勘違いした。
事実、六郎はナイトランをした時を、「チーしようとした気持ちは若干あった」と認めるような供述をしている。
孤独が背筋を走るのは、耐え難い苦痛だとも回想していることから、誰かに手を出したのではないかという疑いも残っているのだった。
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男女の綾に他人が踏み込んだ時、大いなるエモーショナルが生じることがある。
しかし、六郎は男同士の綾だった。余計にエモが膨張し、誰も帰って来れない場所まで行き着く。
「飛ばして走る」とは、そう言うことではないだろうか。
六郎はいつでも飛ばしてないと居ても立ってもいられなかったのだ。置き去りにするようなスピードが彼には必要だったのである。
幸せを掴むために。誰しもがそうするように、六郎もそうしたに過ぎない。
ただ、片田舎のゲイであることが、マイノリティだったので、ナイトランしたのである。