プロローグ
25歳アルバイトが転生した世界で生きていくようです。の第2章的な話ですが読んで居なくても大丈夫だと思います。
まだ昼の熱気の残る夕方の町。
その町のほぼ中心にある酒場の中。
喧噪の中で、全身甲冑の音をうるさく鳴らしながら大きな身振り手振りで擬音たっぷりに話すアイナの相手を僕達はしていた。
丸いテーブルに置かれた甲冑の頭部がカンテラの明かりを反射している。
「だからね、今回の――」
僕の斜め前に座り、一緒に丸いテーブルを囲んでいるアレクが金髪の髪を掻き上げながらアイナの話を遮る。
「つまらん、おまえの話はつまらん。要点だけ話せ」
あ、アレクが切れた。
「なっ、あのねぇ――」
アイナも赤い色の髪を振り乱し、アレクに反応して切れかけるので僕は助け船を出す。
「今回の敵は淫魔の可能性が高い、
目的の伯爵家では男女ペアで参加できる舞踏会がある、
だから一人足りない、もしくは一人多いでしょ?」
「ふん、なるほど。
ならナキア、お前はこいつと組め。
おれは心当たりを当たってくる。」
そう言うと、アレクは席を立ち酒場を出ていく。
まぁイケメンだから女の調達は簡単に成功するだろう。
べ、別にうらやましくなんかねーし! と、自分に言い聞かせながらアレクを見送る。
アイナは怒りながらも、また話を続ける。
僕は空になったグラスを店員に渡し、おかわりを注文する。
「あのね、それで淫魔にはこのデッカイ実がドーンと有効でこれをパクパクーって食べると――」
アイナの話はまだまだ終わりそうにない。