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わたしの出番がありません

 昨日は結局いつものように寝てしまったが、土曜日の朝夜明け前に起きてしまったログインしたが知り合いは誰もいない。

屋敷の自分の部屋で、じっと自分のステータスを見る。

ふぅ、スキルもレベルもまったく上がっていない。

このワールドの中は時間の進行速度が違うので今お昼前。

農園のNPCを指揮して農園クエストを進めていく。

このクエストは収穫物を指定どおりに出荷するもので俺ではなく農園のレベルが上がっていく。

農園レベルを上げないとこんなに広いのに客も呼べないんだ。

クエストで新しい農地も手に入り、昨日ミニダンジョンでドロップした種をまいておく。

たいした物はないと思うが何が生えてくるか楽しみで鑑定はしていない。


 売った野菜の代金で鉱石や木を買い込み鍛冶や細工の工房に閉じこもってやっとLV7。

20は遠い。


 ふと思いついて狼を出してステータスを見てみる。

LV1は当然として…攻撃スキルを持っている。

むふっ、思わず浮かぶ悪人笑い。

ちがうちがう悪事を考えたのではない。

これとペアすればモンスターが倒せるんだ。

このゲームには動物やモンスターを使役するテイマーやサモナーという職業があるが、一般でペットを操れる職業は聞いたことがなかった。

「行くか」

「うぅ~」

全く受けていなかったLV1からの討伐クエストを受けてフィールドに出る。

木のまだらな林の中、棍棒を持ったゴブリンが襲ってくる。

余裕でかわして顔に桜の枝を叩き込む。

チビ狼が飛び掛ってゴブリンは消滅。

なんだかんだで俺はLV17まで上がり、チビ狼も15まで上がった。

リアル時間で7時半、いったん落ちて朝ごはん。

おいしいねぇ、食パン+バター+コーヒー+ゆで卵だけだけど。

昨日よりおいしかった。


 ログインするとまだマホのまま屋敷に出て、目の前にあった鏡をじっと見る。

装備をなんとかしないといかん。

まだ早いのか、露天は出ていない、仕方なく店売りのLV15ノーマルグレードの服を買い求める。

一般に布製の服はヒラヒラしたものが多く魔法系の能力が付加されている。

能力に不満はないのだがヒラヒラは動きづらい。

かといってレザーは装備できない。

明智さんめ、思いっきり鬼仕様にしてくれたもんだ。

結局海兵隊の下っ端でも着てそうなミリタリー仕様の布の服になってしまった。

俺は色気を求めない、うん。


 服屋を出たところで個人チャットが来た。

「マホちゃん、今から狼と猿の連戦するんだけど一緒に行く?」

「ペット連れてますけどいいですか?」

テイマーなどペットを連れているとそちらにも経験値をとられるので断られることも多い。

なのであらかじめ断りを入れておくのがマナーだったりする。

「いいわよ」

パーティー申請が来て仲間に入れてもらう。

「よろしく」

「よろ」

「狼のダンジョン前に来てね」


 「マルスそれあのときのレジェンドですか、すごいですね」

その剣と盾は、他の装備と風格がもう違っていた。

盾は炎を纏い剣は冷たく輝く。

「今までのとは世界が違う感じだね。ダイアナの弓は構えないとエフェクトが出ないけどあれもいいぞ」

俺とマルスさんがそんな会話をしている間、ダイアナさんはチビ狼を追い掛け回していた。

「ちょっと愚らい触らせてくれてもいいのに」

あきらめたみたいだ。

「このこどうしたの?」

「課金ガチャです」

「いいな~、いいな~。ゆずって」

「だめですよ、こいつがいなければ攻撃力ないんですから」

「聞くの悪いかなって思ってたんだけど、マホ君レア職でしょ、それからその枝何?」

「職に関しては秘密です。これはそのまま桜の枝です。木の棒とかと同じ道具類で武器ではないので攻撃力はありません」

「へ~」


 道中は出てくる狼を順調に屠りながら進んでいけた。

ここの狼は牙に毒があるので、俺の役割はもっぱら解毒時々ヒールだけ。

「このちっこいの、強いな~」

「でしょ」

一対一ならここの狼のほうがレベルが高いがあっさりと倒していく。


 「マホちゃん運がいいわね」

「マルスさんですよ」

狼王が岩の上で辺りを睥睨していた。

「もちろんやるだろ」

「はい」

「もちろん」


 「でわっ」

マルスさんが雄たけびを上げて飛び出していく。

「今度も欲しいレジェンド!」

なんかそれ気が抜けます。

狼王の突進をマルスさんが受け止めきれずにダメージを受けて、俺がヒールしたところで流れが変わった。

狼王はまっすぐ俺を狙ってきた。俺の鼻数ミリのところを前足の爪が横切る。

こいつヒーラー殺しか。

前衛の挑発に全く乗らず、ひたすら直接攻撃に弱いヒーラーを優先的に襲ってくるボスがいる。

「ヒーラー殺しみたいです。抑えますから攻撃頼みます」

「わかった」

「了解」

実はこの三人だとこれが一番攻撃力が高まる。

挑発スキルは攻撃力そのものが落ちるから使わないで全力攻撃したほうがいい。

この手のモンスターは攻撃力よりもヒールに反応するので、ダイアナさんも火力調整しないで全力ブッパできる」

狼王と踊るようにステップを踏む俺の横をエフェクトを撒き散らして矢が通り過ぎていく。

戦闘時間はゴブリンよりはるかに短かった。

狼王がエフェクトとともに消える。

「出たな」

「出ましたね」

「おめでとう、マホ君」

出たんだ、ミシック装備が。

神話のペット装備の箱、開けてみるとシンプルな漆黒の首輪がひとつ。

「魔法完全防御って書いてます」

「お~。確かのそんなボスがいるって聞くね」

「いいわね~」

早速チビ狼につけた。

もちろん二人ともしっかりレジェンド防具の箱を出していて、それぞれショルダーガードとレザージャケットを新しくしてニコニコしている。

「次ぎ猿行きますか」














出番なかったですよね。

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