佐原くんの了解サイン
『‥‥ボーカルやるけど?』
「‥っそ!マジ!?」
梅雨も本番の日。
佐原くんはボーカルを引き受けてくれた。
あたしの未来予想図はもう止まることを知らない。
もう感情でしか考える事ができない。
ふいに朝,担任が言った9月の文化祭の出し物の話を思い出した。
クラスか学年で何かやる他にも全校生徒が主役と考えてこの学校には昔から体育館を使った個人の出し物がある。
そこでは漫才をやる人もいればダンスを披露する人もいるし,部活で出る人たちもいる。吹奏楽部だとかチア部だとか。
―これじゃん。
「文化祭まで3ヶ月ちょい!最初のデビューはこっから始めよ-よ!」
『‥‥はい?』
あたしの勝手な提案の勝手な決定によりあたしと佐原くんは文化祭で歌を歌う事にした。
湿気は憂鬱な気分にさせるけど今年の6月は違う。湿気なんかに構ってられない夏がくる。
あたしの夢が一歩前進した。
―プアァ-ッ「‥‥」
金色に輝くサックスやトランペット,テンポよくリズムを刻む小太鼓や大太鼓。
ピアノ‥フルート‥ドラム‥鉄琴‥
吹奏楽部の軍団だった。軍団のトランペットの一人があたしに気づいて近づいてくる。
茶色い巻き髪の可愛らしい女の子。
楽器の音が煩くて普通にしゃべっても聞こえないからその子は大声で『何かようですかあ?』と言った。
「‥あの,音楽室空いてる日にち教え‥」
『えぇ?聞こえません!』
「‥あの!音楽室空いてる日にち教えてくれませんかあッ!!」
『‥文化祭終わるまで使えないと思いますけどッ!?』
音楽室は吹奏楽部に占領されていた。
『‥教室でいいんじゃねえ?屋上の鍵直されちゃったし‥』
『ねえ!あたしも一緒に居ていい!?』
放課後,教室で練習する事を莉子に伝えると莉子は楽しそうに言った。もちろんあたしはOKした。
「ところでさあ,何歌おうかあ?」
『‥別に何でも』
「う-ん‥‥やっぱポルノ?」
佐原くんの目が
あたりまえじゃん。
と言った。
てことで文化祭は佐原くんの好きなポルノを歌う事に。