通訳係 成海
キュウはあたしの腕の中だった。
『‥おい,大丈夫か?』
自分では気づいてなかったけど,あたしは必死にキュウを追いかけていた。
マラソン選手が走りながらドリンクを取るようにあたしは走りながらキュウを拾い上げてそのまま佐原くんへ激突したんだ。佐原くんは激突した勢いで自販機に激突する。
って事は,キュウは助かってあたしも助かったんだ!!
『‥‥キュウ,ありがとう言えよ』
分かれ道になって佐原くんはキュウに言った。
でも,キュウはあたしの腕の中ですでに夢の中。
「ただいまあ-‥」
『え!?帰ってきたの!?』
帰ってきた途端お母さんの声がリビングから聞こえてきた。
「‥え,駄目だった!?」
『駄目とまでは言わないけど‥帰るなら帰るで一言いいなさいよお-‥あんたの布団ないわよ?』
「え!?なんで!?朝まではあったよね!?捨てたの!?」
『そおだよ-‥まあ,とりあえず今日はホテルでも行くのね。明日帰ってきなさい。明日までには布団とか部屋も掃除しておくし』
「ホテルってドコの!?そんな金ないし!ちょ‥お母さんどうゆうこと!?」
『あ,千花おかえり!ちょっと着替えてきたらコロッケあげてくれない?』
お母さんは電話をしていた。相手は相川 成海(22)。あたしのお兄ちゃん。
「お兄ちゃん帰ってくんの?」
『もう帰ってきてんの。今成田だってさっき電話来てね』
お兄ちゃんは通訳の仕事をしている。だから外国へはよく行く。
最近は海外ロケのテレビ番組にも呼ばれるようになった。
おかげで,俳優やタレントや歌手などのサインが家の玄関をうめつくしている。