ROLL
『‥ちゅ-ことで,今日は全部活休み。全員,学活が終わったら即帰宅しいや‥相川,聞いとんのか?』
あたしは視線をそのままに片手をあげた。
『‥ホンマかいな』
先生はあたしを全く知らない。あたしはこう見えてちゃんと話とか聞いてんだっつ-の。
あたしの視線の先には佐原くんがいた。
たったいま校門を跨いで昇降口に向かって歩いてきてる。
「‥ちゃんと来たんだあ-」
昨日,別れ間際に
「明日も誘いに来るから!ちゃんと学校来てよ!信じてるんで!」
って言った。
ちゃんと来てくれた。
―『あ-ッ!終わったあ!千花,トイレ行こお!』
「うん‥あのさ,ちょっと付き合ってくんない?」
『うん?いいよ』
あたしは莉子を誘って屋上へ向かった。
『うわ,すごッ!コレ千花がやったの?』
「違うよ,最初ッから壊れてた」
あたしは莉子に向かって人差し指を口の前にあてたポーズをした。
静かにしてて。
の意味。そのままあたしは莉子を連れて屋上に上がって非常階段の手前まで行った。
『‥とりよがりの愛情は君に届かずにさまよったあ‥』
やっぱり佐原くんは非常階段にいた。今日も歌ってる。
莉子はその歌声を聞いてあたしの肩を叩き口パクで佐原?と聞いた。あたしはうなずく。
莉子は目を丸くして驚いた。
あたしは佐原くんに近づいて後ろから脅かそうとした。だけど脅かすより先にキュウに見つかって吠えられた。
佐原くんはあたしに気づいたけど振り向きはしなかった。
「ポルノ,好きなん?」隣に座りながら聞いてみた。
『‥‥だったら?』
「そっかあ-‥あたしはね,昔から槇原敬ゆきが好きなんだあ」
『‥‥』
「あとね,tomorrow's好き!あたし,ボーカルの木村明日香サンと知り合いなんだよ!」
『‥‥』
「‥まあ,人の自慢話はつまんないよね!」
いつの間にか莉子はいなくなっていて,あたしは次と次の授業をサボる事にした。