シンデレラ
『え!?佐原!?』
「うん!マジあれは天使の歌声だよ!」
『千花‥あんた佐原の事知ってるでしょ?佐原なんか誘って‥』
「ちょっと絡みずらいかもしんないけど,話してみりゃ-普通の人だよ?歌もめっちゃ凄いし!」
『あたし‥千花には普通に生きて欲しいよ‥』
「大丈夫だし!あたし,絶対佐原くんとバンド組んで成功させてみせるから!」
『‥千花の事,応援しないわけじゃないけど‥本当に叶うと思ってんの?夢は叶うなんてシンデレラだよ?』
確かに,あたしのお父さんはマラソン選手を夢見ていたらしいけど今現在は朝ラッシュでもみくちゃにされるただのサラリーマン。
俳優を夢見るお兄ちゃんだって仕事に追われて,夢見てたことさえ忘れてる。
あたしが希望に満ちている今だって10年後には
「そんな時もあったねえ」って若かったあの頃として終わっちゃうのかもしんない。
「‥分かってるよ。でも,あたしやりたいんだ。下手だけど,それをフォローしてくれるのがきっと佐原くんなんだ。約束するよ,莉子に夢叶えるって約束する」
『‥そっか‥まあ,今だけだからね!』
「ありがとう!!」
莉子は昔からあたしを認めてくれる。
お母さんよりもあたしを知りつくしているかもしれない。
あたしも,莉子のパティシェになりたいって夢,応援しようと思ってる。
佐原くんと上手くバンドを結成できたら‥
佐原くんは皆に歌を届けて,あたしは隣で皆に音色を届ける。
あたしの未来予想図はどんどん膨れていった。