結成願い
「佐原くんって飴系好きなの?‥あ,これ!あたしも昔から好きなんだあ!いや-気が合うねえ!」
『触んな!帰れ!』
「‥もうちょっとフレンドリーに行こおよ-ッ。そんなツンツンしてたらレコーディング楽しくないよ!」
『意味わかんねえよ!ちょ‥キュウ返せよ!』
「い-じゃん!めっちゃなついてるよ!」
非常階段であたしは佐原くんをバンドに誘う作戦を決行していた。―まずは,仲良くなること!
佐原くんは孤立している人だったけど喋ってみれば普通の人だった。ただちょっとツンツンしてるけど。
佐原くんが大事にしているこの子犬はおそらくただの柴犬。佐原くんはこの子犬をキュウと名付けているらしい。
佐原くんは鞄いっぱいにいろんな飴を入れている。
キュウが佐原くんの鞄の中に顔を突っ込んだ。佐原くんはそれを見て赤い飴をキュウの口の中に入れた。
そうか,飴を食べるのは佐原くんじゃなくてキュウなんだ。
キュウは上手に飴を噛み砕いた。佐原くんはすかさずキュウの口に飴を入れる。消費が早いからこんなにいっぱい飴を用意してるんだあ。
いろんな事に気づくうちにあっという間に時間は経ってチャイムがなった。
佐原くんは最初は帰れとか死ねとか言ってたけど,チャイムがなる頃には黙って隣に居させてくれた。
あんな歌声してるんだもん。悪い人なわけないじゃん!
結局次の授業もあたしは黙ったまんま佐原くんとキュウといた。