世界は終わるらしい
目が覚めてベッドから降り、トイレで用を足し
洗面所で顔を洗って歯を磨いて、茶の間へ。
最初に見たのは呆然とした顔の母だった。
母はテレビのニュースに釘付けになっていた。
「今年の冬」「遅ければ来年の春辺り」
「世界は終わるとの情報が」「原因はブラックホールの原因不明の接近で」「今も地球に近付き」「助からない」「―――――――……」
母を適当に慰め朝食を食べる。
あんな世界終了のお知らせなんかどうだっていい。
僕には世界なんて、家の中でしかない。
母が苦しむ理由だってわからない。
いつも勤めに行くのが辛いとか言ってるのに、
世界が終われば辛い思いしなくていいのに。
母「葵……外には出ないの?」
葵「出るわけないだろ。」
母の表情が沈む。
母「でも…」
葵「母さんやめてくれ。…僕はもう傷付くのは嫌なんだ」
母「葵…」
ごちそうさまでした。
食器を流し台に置き、さっさと茶の間を出る。
母さんには悪いけど、僕は世界が終わったって
家の外に出る気はない。
外は、僕の敵しかいないんだ。
敵と傍観者と…赤の他人。
赤…といえば、あの子は今どうしてるんだろう。
僕が好きになったあの子。
優しくて、かわいくて……僕みたいな奴とは
似合わない。そんな子。
…嫌な事を思い出す。
ネットで動画を見よう。それはそれは面白い動画を。
殺風景な部屋にパソコンの光りが灯った。
田畑 葵 男
18歳の無職。小学校、中学校時代に受けた
いじめが原因で不登校に。
以来家の外へ出ようとしない。
何事にも無関心で、ネットの世界に閉じ籠る。
イメージは黒髪の少し小柄な男性くらいで。
このお話はシリーズ物で書こうと思います。
世界が終わると知り、残された時間をどう生きるか。
それを様々なキャラクターで描ければ、と
思います。今回の主人公は葵でした。
次回にご期待頂けると幸いです。
それでは。