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狂人転生記  作者: aki
むくむく成長編
8/55

運命の出会いpart2

 俺たちと先生の別れはあっさりとしたものだった。本当に何でもないような別れだった。先生と弟子の別れ、それだけ聞けば、何か感動の物語でも出来上がりそうなものだが、何分俺の話なので、そういう湿っぽいことはありえないのだ。まぁ多分一か月ぐらいは覚えていると思うが、それ以上は保証できないな、どうでもいいことに使う記憶容量はないのだ。

 だから、別にこれと言って特別なことは何もなかった。レイスと別れるのは少しさみしかったかな、おっぱい的な意味で。他の連中、まぁ、主にエリナはかなり悲しそうにしていたがな。

  そういえば、別れ際にアレンのやつ、変なことを言っていたな。俺たちはどうせまた会うとか、そんな変な話をしていたな。あれ? 俺たちは又ずり合うだったか? なんかあやふやだ。良いことを言っていたような気がしていたのだが、忘れてしまった。まぁどうでもいいか。


 そうやって、俺の生活を変えた、ひと夏の思い出はこうやって、過ぎて行ったのだったFIN。めでたし、めでたしだな。いやーまぁ一言で表すなら、色々あっただな。そういうことだ、そういう事なのだ。

  という訳で、俺の日常はちょっとの剣術と、少しの魔法、少しのお遊びでできているのです。


「おい、集中しろよー」


「はい! 分かってますよ」


  俺は、アルバの攻撃を受け流しながら、返答する。最初のころは、どうやら、攻撃に慣れさせるために、結構な速さで、攻撃してきていたが、最近は、どうやら次の段階に移ったらしく、受けられる程度に手加減してくれているようだ。


「そうだ、相手の威力を殺せ、受けるのではなく流せ」


「はい!」


 どうやら、最近は、親同士で協定が結ばれたのか、守りはアルバ、攻めはケント、完全分業システムで修行が行われるようになったようだ。合理的なことはいいことだ、しかし、俺がいじめられるのはよくない。非常によろしくない。俺はドMだ、そこは譲れない。俺のプライドが地に堕ちようが、俺がドMだというのは譲れないのだ。

  しかし、俺は男にいじめられる趣味はない。女の子になら、いくらでもいじめられよう、しかし男、しかもおっさん二人にいじめられる趣味はない。


「お前の体格では真正面から受けるのは不可能だと思え、というより俺でも魔物や、魔族を真正面から受けるのは無理だ。だから、今から受け流せるように訓練しとけ」


 どうやら、この世界の人間は魔物や魔族に、自分の肉体のみで立ち向かうらしい。なんという無謀さ。だって、俺聞いたぜ? この世界ドラゴンとかいるんだろ? そんなのに剣だけで立ち向かうのなんて不可能だろう。俺だったらブルっちゃうね。


「違う、シュッと受け流せ、どんって感じじゃないんだ」


 しかもこれだ。なんだよどんとシュの間にどれだけの違いがあるというのだ? シュとどんでは何か違うのか? どんが何をしたというのだ、シュはどれだけ偉いというのだ? 俺はどんでもいい、優秀な奴がシュというなら、俺は一生どんでもいいと思う。だって、どんだって生きているのだから。


「グハ」


「だから言ったじゃないか、どんじゃだめだ、シュっと受け流せ」


 ダメだった。やはりどんではダメだ。シュの凄さを改めて感じたぜ。


「今の一撃、実践だったら死んでるぞ? ダンジョンでは怪我をしないことが一番大事だ。治癒魔法や、回復薬は無限ではない。ダンジョンは長期の戦いになる、だから消費をしないことが、一番優先すべきことなのだ」


「はい」


 半分以上聞いていなかった。まぁ要するに、消費するだけの日々はいけないという事か、あれ違う?


「じゃあ今日の修行は終わり、自由時間でいいぞ」


「わーいやったー」


「嬉しそうだな」


「いいえ、うれしいです」


「おいおい、まぁ修行なんてそんなものだよな」


「そんなものなんですか?」


「ああ、昔なんて時代が酷かったからな」


 ああ、なんか言ってたな。魔王がどうたらこうたらとか、興味ないので聞き流していたが。えーと、なんか何年周期かで、魔王が蘇るんだっけ? それを毎回その時代の勇者が倒すだか何だか。マジロマン、どこのドラ○エですかって感じだ。魔王ってなんだよ、超魔王ぐらいぶっ飛んだのが出てきたら、脅威を感じるが、魔王ぐらいなら平気だろ。だってあいつ仲間になった瞬間弱くなるしな。


「まぁ、今は平和な時代だ。そんな昔の嫌な時代、知らなくていいのさ」


「そうですか、まぁ平和なのはいいことですね」


「ああ、平和いいものだ」


 そういう顔をしたアルバはとっても遠い目をしていた。その顔は戦争の話をするおじいちゃんみたいな顔だった。


「ほら、エリナが待ってるよ。遊びに行っておいで」


「はーい」


 まぁ、平和というのはこういう事なのだろう。何があったか忘れるぐらいが幸せなんだろう。ああ素晴らしき日々だ。





          ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇






 深い森、四方は木に囲まれ、世界は緑に染まっていた。

 ああ、いい、俺がここに来たのは運命という事だ、別に迷ったわけではない。決して迷ってない。迷ってないったら、迷ってない。


「迷った」


 思考と言ってることが一致しないのは俺の得意技なので、別に気にしない。しかしどうしよう、俺は平気だが、エリナが心配だな。一応、ここは村の中に位置してるとはいえ、魔物も出ることもなくはないらしい。まぁ、いっか、何とかなるでしょう。

 でも少し心配だな、一応探しておくか。俺は少しだけ魔力を操作した。


「じゃあ、俺があとしなくちゃいけないのは……寝るか」


 どうせやることもないしなー、魔法の修行はしなくちゃいけないが、こんな森の中でやることでもないし。だったらこの森という素晴らしいシチュエーションだ、寝るしかないだろう。


「じゃあ、さて寝るか」


「いやあああああああああああ」


 なんだ? この声は? エリナか? いや、エリナとは違う声だった。じゃあいっか。

 別に俺の知らない人物なら、何が起こってもいいか。まぁ俺が悲鳴を聞いたのが、運のつきだったという事だ。


「お休み」


「助けてっ!」


 あらら、何とも言えないことになってしまった。

 前を通る一人の少女が目に入った。そりゃあ、知らないところで死ぬなら、別にいいが、俺の目の前で死なれるのはなんか嫌だな。でもなぁ、めんどくさいなー。まぁいっか、偶には気まぐれでも起こしてみるのは。


「光魔法! かっ○いいポーズ!」


 俺は目の前の犬型の魔物の動きを無理矢理止めた。

 一度やってみたかったのだ。相手は俺のかっこよさで、動けなくなる! まぁ実際は、微量の電気で、相手の体をマヒ状態にしているだけなのだが、勢いって大事だと思うよね。


「あ、ああ」


 少女は、へなへなと崩れ落ちる。あら、意外にかわいい。長く、青っぽい髪に、少し無機質な顔。


「はぁ、めんどくさいけど、俺の目の前に来たことを後悔してよ」


 俺は楽な水魔法で、奴を倒そうとする。しかし、どうだろ? 俺の水魔法で倒したら、木端微塵になるしな、この少女には悪影響か?


「まぁいっか」


 俺は深く考えない主義なのだ。俺は少し大きめの水の玉を出現させ、相手にぶつける。そうすると水の玉をぶつけられた犬型の魔物は、水の勢いに負け、四肢を散らし、無残な姿で吹っ飛んだ。


「あちゃー、意外にグロかった。こりゃあトラウマかなぁ? まぁ俺の事じゃないからいっか」


 どうせ、俺のトラウマじゃないし、いいや。さて、肝心の少女はっと。


「ありゃりゃ、気絶しちゃってるや。まぁ、幸せか、変な光景を見なくて」


 さて、どうしようか? 俺はいたいけな少女を虐めるような趣味はないしなぁ。多分俺の一個上か、同じぐらいだろう。そんな人間に変なことをするほど、俺は腐っちゃいない。まぁストライクゾーンにはかかっているけど。俺のストライクゾーンはゆりかごから墓場までだ。


「おーい、起きろ。起きないと風邪ひくよー」


 流石にこんな少女をここに放置するわけにはいかない。運ぶのもめんどいし、だったら自分の足で歩いてもらった方が楽だ。


「おーい、おきてー」


 ま、まさか死んでる? さっきまであんなに元気だったのに! まぁ冗談は置いておいて、速く起きてくれないかなぁ。そろそろめんどいから、普通に置いて行きたくなってきたぞ。


「おーい」


「ん、んん」


「あ、起きた?」


 起きた瞬間抱きしめられる俺、いやまぁうれしいけど、こんな少女に抱きしめられてもなぁ、どうしようもないよな。


「怖かったよ」


「そうかそうか、よーしよし。じゃあな!」


 なんかこの子めんどくさそうだ。俺の思考がそういっている。だって、明らかに危ないにおいがする。危ない人間の俺が言うんだから間違いない。この子からはなんか同じ系統の匂いを感じる。


「待って」


 ガシッと掴まれる俺の腕、ものすごい力で掴まれている。多分痣になるぐらいに掴まれている。


「なんですかお嬢ちゃん」


「私を一人にしないで、私、あなたと居たい」


「いえ、無理です」


「いや、私あなたと一緒じゃなきゃいや」


 なんですか? これはなんか災害の一種ですか? あってしまったら最後、どうしようもないんですか?


「無、理、」


「いや」


「無理」


「いや、私はあなたのために生きるって決めたの」


 なにこれ? 俺はどうしたらいいの?


「これから人生長いんですから、今決めるのは早計というものですよ」


「決めたことを後悔はしない」


 こいつ、狂ってやがる! どうなったらこんな人間に育つのか、親の顔が見てみたいぜ。まぁ、普通の親でもこんなになっちゃう人間もいるけどね。

 というか、さっきまであんなに死にそうだったのに、安全が確保されると、これだ。これだから人間は嫌だな。


「無理」


「無理じゃない」


 なんというのれんに腕押し、これだから変な人間を相手にするのは嫌なんだよ。


「はぁ、お家は?」


「ない」


「ほほう、家なし子という事か」


「そして、何も覚えてない」


「ほほう、記憶喪失ですか、それでは!」


「逃がさない」


「ふぼっ」


 服の襟をつかまれ、首が絞められる。


「では、僕にどうしろと?」


「私と一緒に居てほしい」


「へー、じゃあな」


「分かってくれてうれしい」


「おいおい、会話を成立させようぜ」


「私は会話をしてる」


「はぁ、もう知らん」


 これ以上話していても無駄か、なるようにしかならんしな。


「よかった、分かってもらえたようで。多分あなたと私は運命の出会い」


「嫌な運命ですな」


 運命と言えば、なんでも許されるなと思うなよ。まぁ、俺は流されて生きているような人間だから、何も文句は言えないのだけど。


「はぁ、僕は、どうやら不幸の星の元に生まれたようですね」


「幸運じゃなくて?」


「ふーむ、君の頭の中は幸せな世界が広がっているようだね」


「ええ、幸せなのはいいことよね」


「そうだね、頭の中だけじゃなければいいのに」


「あら、頭の中も幸せになれない人間が、現実でも幸せになれるわけないじゃない」


 ふむ、一理あるような気がする。たしかに思いの強さは凄いものがあるからな。このこの思いは重すぎるけど。


「まぁ、君の幸せに僕を巻き込んでほしくないけどね」


 幸せの押し付けは、やめてほしいものだ。壺なんかで幸せになれる人種じゃないんでね。


「あら、巻き込むから死合わせなんじゃない」


「君の死に僕を合わせないでほしいけどね。まぁ、しょうがない。君は記憶喪失で、家もないんだね」


「そうね、いたいけな少女よ」


「はぁ、また変なのを拾ってしまった」


 これが、空から落ちてきた少女とかなら、全然喜ぶんだが。あーマジラ○ュタ探しに行きて―。


「じゃあ、エリナを呼ぶか」


「あら、いきなり浮気なの?」


「何をおっしゃる、エリナさんの方が本妻です」


「あら、じゃあその子を殺さないといけないわね」


「わぁーデンジャラス。さて」


 俺は、さっき感知した方向へと、歩き出す。


「魔法?」


「そうですね。というか魔法は分かるんだな」


「そりゃあそうよ。呼吸の仕方を忘れる記憶喪失なんてありえないでしょう?」


 ふむ、納得。いや納得できるのか? まぁ、細かいことはどうでもいいか。今はエリナと合流することが先か。

 森の入口辺りの、エリナの姿を見つける。良かった、エリナは賢いこのようで、あまり無理はしないこのようだ。


「もう、アルト、どこに行ってたの? というより、森に入る前に迷子になるって、どういう事?」


「ごめんね、エリナという枷では僕の事は縛ることは出来ないようだよ」


「何を言ってるのか分からないよ」


「まぁ、冗談は置いておいて、エリナ、今日から家族が増えるよ」


「え?」


 驚いた表情を見せるエリナ。


「よろしくね、お母さん」


 そして俺の背後から、ノリノリの表情で出てくる少女。


「え?」


「はっはー、今日から僕がお父さんだぞー」


 そして俺もしっかりとその流れに乗っておく。


「え、え?」


 現状についていけなく、オーバーヒート気味になってしまうエリナさん。俺もノリで喋っているので、現状を理解している訳ではない。理解しようとするんじゃない、感じるのだ。


「まぁ、冗談は置いておいて、この子を拾ったので、どうしましょう」


「拾われました」


「はぁ、なんかアルトが二人いるみたいだよ」


「僕が二人いたら、僕が死にそうになるよ」


 主に自己嫌悪的な意味で。


「そうね、私が二人も居たら、発狂しそうになるもの」


「えーと、二人はさっき出会ったんだよね? なんでそんなに息が合ってるの?」


「さぁ? というかこの子なんなの?」


「失礼ね、運命の相手のことを忘れるなんて」


「運命の相手!?」


「忘れるぐらいの運命なんて、そんなの些細な運命ってことさ」


 今の現状をお笑いに例えると、ボケが二人に、翻弄されるのが一人、お笑いが成立していないな。


「ちょっと待って、少し整理させて!」


「いいだろう」


「いいわよ」


「なんでそんなに上から目線なの? まぁいいよ。で、二人はさっき森で出会ったんだよね?」


「そうだな」


「ええ、そうよ」


「で、あなたはえーと、名前はなんていうの?」


「分からないのよねー。だって記憶喪失だし」


「本当に分からないの?」


「ええ、まったく、さっぱり、あっさり忘れたわ」


 こんなことを言う五、六歳児が居るのか? まぁ、俺のような人間が存在している世界だから、あり得ないこともないのか。


「じゃあ、なんて呼べばいいの?」


「えーと、じゃあ私のことは、なんて呼びましょうか?」


「クソびっち」


「あら、なんか悪口な気がするので却下するわ」


 渾身の俺の名前が、あっさりと却下されてしまった。三日三晩考えたというのに、酷過ぎる。まぁ冗談だけど。


「じゃあ、あなたの髪は青っぽいし、アオは?」


「そうね、じゃあその名前をもっと強そうにして、アオウとでもしますか」


「呼びにくい、アオでいいよ」


「あら、私の名前よ? もっと考えてくれてもいいじゃない」


「クソびっち」


「じゃあ、アオでいいわ」


 今度はスルーされた。まぁ、俺も人のことをクソびっちだなんて呼ぶのは心が痛いので、気に入らなくてよかったよ。


「で、どうしよう? 僕はこの子をここに放置したい。なんかいい案ない?」


 こんなのと過ごすのは勘弁だ。俺は死んでも、こんなやつと一緒に居たくない。


「酷いわ、こんないたいけな少女をこんな場所に置いておくなんて」


「そうだよ、アルト! 可哀そうだよ」


 あれ? 俺悪者? だってこんなの癌みたいなものだと思うぞ、しかも悪性の酷いやつ。まぁ俺も人のことは言えないが。


「でも、ついこないだまで、なんか二人居たのに、新しいの飼う了解を得られるかなぁ?」


「大丈夫アルバ様とリオナ様優しいし、多分大丈夫だよ」


「大丈夫じゃない方がいいんだけど」


「私は何時でも大丈夫よ」


「アオには聞いてない」


「あら、亭主関白」


 ふーむ、本当にどうしようか。このまま家に帰った場合、確実に受け入れられてしまうだろう。それは俺としてはよろしくない。こんなの、羊の群れの中に、狼を放し飼いにするような所業だ。じわりじわりと、殺されるに違いない。


「じゃあ、聞きに行こうか。お家ないのはさみしいもんね」


「そうね、一人は嫌」


「まぁ、それについては同意するがなぁ」


「あら、じゃあ何も問題ないわね」


「いや、問題だらけでしょう」


「問題があるのはいいことよ。退屈は一番の毒だもの」


「それとこれとは違うと思うんだけどね」


 まぁ、何とかなるか、世の中はなるようにしか、ならないのだから。運命に流され続けるのもいいことかもなぁ。いや流石にこれはダメだろ。

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