ああ、なんかそんな感じな日々ですよ
あれから僕たちは成長できたのだろうか? 何もない日常、ありきたりな毎日、そんな世界で、僕たちは生きている証を残せたのだろうか? それは僕には分からない。でもこれだけは言える、修行なんて碌なもんじゃない。
なんかどっかにありがちな始め方をしてみたが、要するに絶賛修行中というだけだ。俺は五歳の誕生日を迎え、お子様の仲間入りを果たした。四歳と五歳の間には大きな壁がある。まぁ、それが何かと聞かれれば、なんだかは分からないんだが。昨日とは違う自分、かっこいいって感じだな。
あー、なんの変化もない毎日ですよ。こうやって、俺の経過報告することぐらいが、俺の毎日の楽しみだ。まぁそりゃあ、魔法は楽しいし、剣術もやってみれば意外に楽しい。しかし、それは何というか、学校のようなもので、行かないとなんか寂しいものだが、通っている間は、楽しくないものだ。そろそろ新しい刺激がほしい感じだ。毎日同じゲームをしていたら、飽きてしまう。たまにはRPGだけではなく恋愛シュミレーショもやりたくなるんだよ。
はぁー、マジでネットやりてー、ゲームしてぇー、引きこもりてぇー。でもまぁ、健康的な毎日を送れているってのは感謝するべきことなのかもしれないな。
あ、あともう一つ報告があったか、どうやら、わが母、リオナが妊娠したらしい。俺たち子供と、大人の部屋を分けた甲斐があったってもんだ。まぁ俺にとってはどうでもいいんだけどね、妹とか言われてもあんまりわかんないし。というか、どうやって接していいか分からない、俺は元の世界でも、一人子だったしな。
「というわけで、僕は毎日幸せです」
「どういう事ですか?」
「いえ、なんでもありませんよ」
そういえば俺は今、教養の時間であった、忘れていたよ。考えていることを偶に口に出してしまう癖を少し改めた方がいいかもしれないな。
「では今日は、アルト君には、歴史。エリナちゃんは、算術の続きをしましょう」
「「はーい」」
俺と、エリナでは基礎的な知識が違う。俺は一応高校までは行っているので、この世界でいう算術など、余裕のよっちゃんだ。よっちゃんよりも余裕かもしれない、というかよっちゃんって誰だよ! 話を戻して、なので俺の場合、この世界についてのことだけを集中的に学んでいる。
「この世界は魔法で造られたねー?」
なんという聖書的な感じだな。まぁビックバンとか言われるよりかは納得できるのかもしれないけどな。というかこの世界が俺の元居た世界と同じようになっているかどうかは分からないんだがな。世界の端まで行けば、海の水が落ちて、でっかい滝になっているかもしれないしな。まぁそんな世界どうやって存在してるんだと、俺は突っ込んでやりたいが。
「そうです。この世界の始まりは、たった一つの魔法から始まりました。これが創世級の魔法です。だから創世の魔法は禁忌とされてるんです」
「創世級魔法ですか」
だから、魔法使いの最上の称号は、創世級なのか。というかじゃあ、誰が最初の魔法を使ったんだ、という疑問に行き着くのだが、それは聞いたらいけないんだよな。聖書だって突っ込みどころ満載だし。
「信じてませんね。その時の資料がある訳ではないんで、あくまでも伝説というか、そう信じられてるだけです。まぁそれ以外に説明ができないってだけなんですけどね」
「はぁ、まぁわかりますよ。ほら、エリナ、指を使っちゃダメ」
「えー、難しいよー」
「指以上の数字が出てきたらどうするの?」
「指を増やす?」
ふぅ、ぶっ飛んでるぜエリナさん。増やし過ぎたら、小さい数を数える時に大変になるじゃないか。それに大きな数字になった時に、何回も同じ指を数えてしまうかもしれない。まぁそういう問題じゃないか。
「そうですよ。しっかりと頭で考えるようにしましょう」
「はーい」
今日も僕の日常は平和です。
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「違う、そこで引いちゃダメなんだ。魔物に弱いところを見せたら、そこで負けだ。魔物ならまだ大丈夫だ。でもな魔族に出会ったとき、そんな対応をしたら、一瞬でやられるぞ」
この世界では、剣術は魔物に対するもので、対人はあまり考えられていないようだ。なので、どちらかというと、人に対するセオリーはあまり考えられていないようだ。
「はい」
俺は必死に、教えられたことを実践していく。剣術もそこそこの成績を残している。剣術を初めて一年ほど経ったが、最初のころのように、何もせずにやられるという事はなくなってきた。しかし、何かが分かったとしても、よけようがないので、どうしようもない。
「でも、筋はよくなってきているぜ。アルバぐらいなら倒せるかかもな」
今日はケントとの修行だ。やはり、ケントとの剣術修行は楽しい。攻めのケント、守りのアルバと言った感じか。
「おい、ケント、それはどういう事だ? 俺はお前の数倍強いぜ?」
屋敷から出てきたのは、件のアルバさんだ。最近はそこまで忙しくないようで、午前中には屋敷に戻っていることが多い。
「おいおい、この間の勝負は俺の勝ちだったろ?」
「通算では、俺の百三十四勝百三十三敗六十引き分けで、俺の勝ち越しだろう」
どうやら、昔から二人は競いあっていて、何回も勝負を繰り返しているらしい。無駄なことだと思うんだけどなー。幾ら勝って、どっちが強いかなんて、どうでもいいと思うんだがな。
「なら、今から同点にでもしてやろうか?」
「ああ、望むところだ」
二人ともが臨戦体制に入る。これは真剣なようだ、二人の間に底冷えするような、嫌な気配が漂う。
「二人とも」
「遊ばないでください」
屋敷の縁側では、俺たちのやり取りを見ていたリオナとリスト。そしてその後ろにはちょこんと座っているエリナがいた。リオナの方は、最近は仕事の方も休み、俺の稽古を見たり、エリナと遊んだりすることが多くなってきた。
「「はーい」」
これが俺の新しい世界での日常。元の世界では勝ち得られなかった、当たり前の日常。
まぁ、前の世界では酷かったもんだ。今でも俺を追い出した日の両親の目は忘れられない。さすがに俺が普通の人間よりも強いとはいえ、あの目は堪えた。あの、何か訳の分からないものをみた目。人はその気になれば、血のつながった人間を、あんな風にみられるんだな。俺が一番恐れなくちゃいけないのは、自分ではなく、人間の存在自体なのかもしれない。でもまぁ、別に俺は元の両親を怨んでいる訳ではない。俺が悪かっただけだ、ただ俺が悪かっただけ。
「じゃあ、さっさと修行するか、今日は二人がかりでやるぞ」
「おう、まぁアルトには強くなってもらわなくちゃいけないからな」
はぁ、今日は大変そうだ。
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「じゃあ、今日の魔法のコーナー。今日は、えっと、何をするか」
「おい、それを毎日のようにきくんじゃねー」
「あーじゃあ、実戦形式で魔法を打ち合うか」
「何がじゃあだよ、決まってるなら最初から言えよ」
アレンの前では結構素を出している。というのも、俺が丁寧な言葉を使うと気持ち悪いらしいので、やめてくれと言われたのだ。
「決まっていても、様式美というものがあるだろう。定型的なものは大事にした方がいいんだよ」
「お約束というやつですな」
「そうだ、下らないと思っていても、やらなくちゃいけないんだよ」
くだらないと思っているならやめろよ、というのは無粋なのだろうか。
「下らないのにやらなくちゃいけないなんて、人間とは罪深い人間ですね」
「そうだよ、人間の一生なんてくだらないことばかりさ」
「そうですねー先生の人生も下らなさそうですもんね」
「おいおい、僕の人生は苦堕楽なくないぞ」
「うわー、なんか字面からして碌でもない人生ですね」
「ふ、それほどでもないさ」
「褒めてないですよ。さて、じゃあ、今日はどんな魔法大戦争をするんですか?」
最近は実戦形式で、魔法をすることが多くなってきた。どうやらアレンは、あまり魔法を研究等に使うのには賛成ではないらしく、使えてこその魔法という考えの持ち主だ。
世の中には二種類の魔法使いがいて、冒険者として、ダンジョンや、魔族退治をするため、強くなるための手段として、魔法を使うものと。研究、魔法そのものについて理解を深めて行こうというタイプの魔法使いの二つに分かれる。階級が上がるごとに、その傾向は強くなるらしく、街級レベルの魔法使いとなると、大体は研究に没頭する人がほとんどらしい。
まぁそんな魔法使いどもに嫌気がさして、アレンは旅に出たようだが。
「そうだな、自由だ。何でもいい、俺に魔法を一回でも当てたら勝ちだ」
「マジですか」
俺はそういいながら、雷の槍を、アレンの顔にぶち込む。
「そうだ、当てればいい」
しかしその魔法は、アレンの眼前で儚く消えて行った。どうやら、魔力で無理矢理消されてしまったらしい。まぁ、そんなに魔力自体込めていないので、当たり前の結果か。
「チッ、当たるかと思ったのに」
「お前そういうところの制限ないよな」
「ええ、やれる時にやる。それが僕のもっとーです」
俺は、グへへ、強くなるまで待ってやるなんてことはしない。だから、俺が漫画の適役になったら、三話ぐらいで、主人公を殺しに行くだろう。
「まぁ、その考えはいいと思うけどな」
「そうですか」
そういいながらまた、俺は水の槍を、今度は的のでかい、腹辺りにぶち込む。
「会話中に攻撃するのはあんまり感心しないけどな」
しかし、簡単に避けられてしまう。今度は結構自身があったのだが残念だ。
「じゃあ、そろそろ僕も本気をだそうかな」
魔力の流れが胎動する。これはかなりヤバいな、魔力量からして、上級程度の魔法だ。
「ふむ、どうしようか」
「おいおい、普通の人間は、上級の魔法なんて撃たれそうになったら、慌てふためくもんだぜ?」
「まぁ、たいへんだー」
お約束が大事だと言われたので、なんとなく驚いてみる。
「まぁ、お前の場合そうなるわな。じゃあ防げよ。『灼熱の大槍』」
ものすごい炎の槍が飛んでくる。これは当たったら蒸発しそうだ。というか近づいただけで、死ぬな。
「そんな危ないの投げないでください」
俺は水の壁を張る。まぁ、多分蒸発するだろうけど。
轟音を立てながら、蒸発する俺の水の壁。瞬く間に、蒸気が当たりに広がる。
俺はその蒸気に紛れ、逃げる。こんだけ蒸気が充満すれば、アレンも見失うだろう。
「甘い」
俺の避けた場所を見透かしたように、攻撃を放ってくる。今度は氷の礫か、これ自体は脅威じゃないんだが、数がヤバいな。数千ぐらいの氷の礫が空中に浮いている。あーなんかロマンチック……なわけないか。
「あちゃーヤバいな」
まぁ、そこまでヤバいとは思っていないが、お約束(ry というわけで俺はこの危機を回避するため、さっき発生させた蒸気を操り、奴の氷を溶かす。蒸気とは意外に熱くなるので、何とかなると思ったが、思ったよりも効果をあげそうだ。行き当たりばったりだが、うまくいけばいいのだ。終わりよければすべてよしというやつだ。
「意外にえぐいことするな」
「エゴイストですから」
「お前それ、エグイことする人間の事じゃないからな」
マジかよ、似た字面から、そうだと思っていたのに。というかこの世界にも、エゴイストとかそういう言葉があるんだな。やだ、なんか親近感覚えちゃう。
「まぁお前の場合、合ってるっちゃあ、合ってるがな」
まぁ、俺に合ってる意味という事は、きっといい意味なんだろう。多分いい意味だ、うんいい意味なんだよ。文句あんのか!?
と、俺が脳内でふざけているうち、何やら蒸気を圧縮し、空気の玉にし、対処したようだ。俺は螺○丸より空○拳派だ。
「と、現実逃避している場合じゃないかもな」
その玉をこちらに放る。その玉は超高速で、こちらに飛翔してくる。あっちが空○拳なら、こっちは螺旋○裏剣とでも行こうかな。
俺は空気を圧縮し、玉状にする。そして、形をとどめるイメージを行い、蒸気の玉へとぶつける。
「クッ」
「うお」
物凄い衝撃が辺りを支配する。
「これで、詰みだ」
俺の後ろには、雷の槍を構えたアレンがいた。やはり、経験の差が出てしまったか。
「はいはい、僕の負けですよ」
「お前……いや、なんでもない。これだけやれれば、もう街級も近いだろう。僕が教えられることはもうない」
「ほほーう、免許皆伝というやつですか」
「ああ、多分、もう少し頑張ればお前ももう、街級の魔法使いだ。晴れて世界の敵となる」
なんか嫌な物言いだな。まぁ、あんまり強すぎるのも、いけないということか。
「これで、僕から教えることは何もない」
「えーまだ、風呂の覗き方を教えてもらってないですよ!」
「お前、本当に五歳児か?」
「何を失礼な、ぴちぴちの五歳児です」
「まぁいい、しかしそれはお前自身が見つけることだ。俺だって、ばれないようにレイスの風呂を覗くのにはかなりの時間がかかった。少しは苦労してみるというのもいいもんだぞ」
チッ、俺はそんな苦労はしたくないのだが、さっさと見れた方が、うれしいというものだ。
「もう、こんな時間か、今日はもう帰るぞ」
「うーい」
「あ、そうだ。これはプレゼントだ」
俺は、一つの紋章の入った宝石みたいなものを渡される。それは赤い、血のように真っ赤な宝石に白い、ライオンみたいな獣のしるしが入ったものだ。
「これは?」
「これは魔機に使われる宝石だ、それに僕の紋章が入っている。まぁ、お前の場合魔機を使う事はないだろうが、色々と持っていたら便利だからな。それに、僕の紋章を見せれば、僕の弟子だという照明になる。僕の弟子と分かれば、色々と捗る場面も出てくるだろう」
「ほう、ありがたくいただきやす」
もらえるものはもらう、それが俺のもっとーだ。
「じゃあ、帰るか」
俺たちは屋敷へと帰ることにする。
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その日の夜のことだ。俺はなんとかレイスの風呂を覗けないかと模索していた。
「ふむ、どうすればいいんだ?」
俺は今使える魔法を思い浮かべてみる。炎や水などと言った基本元素系の魔法は使える。あとは治癒の魔法も、呪文さえ使えば中級までなら何とかなる。しかし、そんな魔法が使えたって、風呂を覗くためには何の役にも足たない。
「クソっ、どうしたらいいんだ!?」
『考えるのじゃない、感じるのだ』
「覗き神様!」
『感じるままにすればいいのです』
「はい!」
ふぅ、一人芝居は疲れるぜ。というか、覗き神ってなんだよ。バカじゃねーの?
どうすればいい? 何のために魔法を覚えたんだ? 自分の欲しいものを手に入れるためだろう? 今こそつかむべきだろう、その栄光を。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
この僕こと、アレン・グラスは今、風呂場に居る。この屋敷はこの世界では珍しく、風呂場なんてものがある。まぁ、風呂になんて入れるのは、一週間に一回ぐらいだが。まぁ、領主の一端であるからには、そこそこの家ということか。
「ふふふーん」
弟子は現在、湯船へとつかっている。ふむ、いい成長ぶりだ、こいつを拾ったときには、まだまだ小さなガキだったというのに、けしからん。
僕は、必死に魔力をフルで運用する。僕が現在使っているのは、光魔法だ。基本元素には含まれない、幻素魔法。この魔法が使えるのは、世界で僕だけだろう。街級の魔法使いは伊達ではないという事だ。この光魔法『透明の体』は、光の屈折率を変え、人の目には移らないようになる魔法だ。この魔法を使えるようになるには構想三年、実験二年、合計五年の歳月をかけたのだ。この魔法に穴はない。この魔法が僕と、あの餓鬼との違いだろう。
あいつは覗く術を持っていない、僕は持っている。それが僕の街級魔法使い足らしめる所以なのだ。
おいおい、そんなとこまで見えちまうのか。そろそろ、僕たちはこの家を出ると教えてある。なので、しっかりと風呂に使うに決まっている。もちろん体も洗うだろう。その分僕の楽しみの時間が増えるという事だ。
白い肌、綺麗な四肢。まだ男を知らないその体は全部が、絹のような綺麗さを誇っていた。いいおっぱいだ。最高だ、その濡れた、栗色の長い髪も俺の情欲をそそる。
これは僕だけのものだ、これは僕だけの……。
「誰です!?」
バレたか? いや、この魔法は完璧だ、バレるはずなどない。もしかしたら、レイスの気のせいである可能性もある。ここは隠密に徹するのが正解だ。
「出てこないのであれば、こちらから行きますよ」
魔力を手の先に集中させる。これは当たれば痛いだろう。もう、無理か、ここまでか。僕のスペシャル覗きタイムも終了なのか……。
「すまな……」
「ごめんなさい」
なんだ? 僕ではなかったのか、安心だ。しかし、僕のこの素晴らしい時間を邪魔する奴は誰だ? あとで制裁を加えてやらねばならんな。
「って、アルト君じゃありませんか。どうしたんですか?」
あの餓鬼だと? どういう事だ? こんな時間に? もう日が暮れてずいぶん経った。良い子はもう寝る時間のはずだ。どうしてこんな時間に風呂場になんて来たんだ?
壁越しに、奴の子供らしい声が響く。
「すいません。昼に少し頑張ったので、汗っぽくて。風呂に入りたいと思ったのですが、レイスさんが居るのなら、我慢します」
どういう事だ? そりゃあ、今日の魔法は少し頑張った。だが、奴にはそこまで苦ではなかったはずだ。ま、まさか!?
「そうですか、では一緒に入りますか? 私も今入ったばかりですし」
こいつぅ! 策士だ、策士が居るぞ。そうだ、奴の発言のせいで実感が沸かないが、奴はまだ五歳になったばかりのガキだ。成人が十五歳とはいえ、まだまだ子供の部類だ。そりゃあ、子供と一緒に入るのに、何の抵抗もないだろう。それに僕たちは半分は冒険者のようなものだ、一般の女よりも羞恥心というものに疎い! この一年、あいつはそれを確認し、この一回のチャンスにかけたというのか。
いや、そんな偶然を願うほど、奴はギャンブラーじゃない。断られる可能性の方が高かったはずだ。五歳ともなればもう少年と言っても過言ではないしな。
「そんな恥ずかしいですよ。今日は寝るんで大丈夫です」
「遠慮しないでください。ここはあなたの家です。そこを私たちが借りているだけなんですから」
「そうですか、じゃあ失礼します」
奴が扉を開けて、入ってくる。細い四肢、長く、少し銀にも似た金髪の髪。人形のような精巧な顔立ち。外見だけなら、素晴らしい部類に入る。下についているのものさえ見なければ、完全に女の子に見える。というか、全然女の子だ。クソ、その外見がかなりむかつく。
「あんまり見ないでくださいね」
あんなにもじもじしやがって、どちらかというとあいつは見てもらいたい感じの性癖のはずだ。
「でも、本当にかわいいですね。男の子には見えないですよ」
「気にしてるんですから、あんまり言わないでください」
「ふふ、すいません」
あれ? なんかいい感じじゃないか? どういう事だ? あれ? 奴がこっちを見ている?
「ふふ」
なんだあの笑みは!? まさか、完全に奴の策だというのか!? ここまで奴の想定内だというのか!? どうしてだ? 五歳児だぞ? もう立派な少年じゃないか? ま、まさか、さっきのレイスの発言『本当にかわいいですね。男の子には見えないですよ』、そういうことかぁーっ! こいつ、最初から分かってやがった。自分の容姿すら作戦に入れてやがるのか、天才か? 奴が本当の天才というやつなのか!? この作戦、かなり前から考案してあったはずだ。じゃないと、奴の元の性格のせいで、危険な奴としか認識されないだろう。だからレイスのまでは、常にかわいい男の子としてのキャラを作っていたに違いない。
こいつ、完全にレイスと会った時から、こういう状況を想定してやがった! ふっ、負けたよ。僕の発想の負けだ。さすが天才という事か。
「あれ? なんか不穏な魔力を感じます」
こいつ、何をする気だ? ま、まさかやめろ。それだけはやめてくれ!
奴が、手の平に大きな炎の玉を出現させる。風呂場の光量が変わり、僕の設定した屈折率が狂う。これはかなり繊細な魔法だ。故に、こんな一気に大きな明かりができてしまうと。
「な・ん・で、師・匠・が・こ・こ・に・居・る・ん・で・す・か・?」
ゴゴゴゴゴゴゴゴという効果音が良く似合いそうな感じだ。これは、どうしようもないな。僕だって誇りはある。変態には変態の流儀というものがあるのだ。
「覗くために!」
「死んでくださいいいいいいいいいいいいいいいいいいい」
俺はその日、お星さまとなった。さらば僕の人生よ。さらば僕のおっぱいよ。
プロットを大幅に変えるかもなので、タイトルやあらすじを変えるかもしれません。ご了承ください。でもそこまで話の内容自体は変わらないと思うので、あまり内容が変わるということはないと思います。