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狂人転生記  作者: aki
俺、爆誕編
6/55

修行編開始

「魔法をねー? そのガキに?」


 ガキとは失礼な、お前の倍ぐらいは生きているぞ。だから敬えとは言わないがな。俺は心が尊大なので、小さなことは気にしないのだ。


「ええ、この子の教育には少し私たちも難儀していまして、ちょっと特殊なんですよ」


「というか、こいつ魔法を使えるのか?」


「ええ、それも特別な魔法です」


 特別ねぇ、俺自身そんな特別なことをしている実感はないんだけどねぇ。は、天才とはそういうものなのか? 自分では特別だとは気づかないものなのか。ああ、また一つ世界の真実に近づいてしまったようだ。


「おい小僧、魔法を出してみろよ」


「はい分かりました」


 俺は指先に、水の玉を出現させる。なんの変哲もないただの水玉だ。なんか水玉って書くとエロく感じるな。水玉ーああ、いい響きだ。


「おいおい、こいつぁ」


「そうでしょう。しかも魔機なしですよ」


 魔機? なんだそれ? 無詠唱で魔法を使う際に必要な特別な道具ってやつか? 魔機ねぇ、戦術歩行戦闘機、略して戦術機みたいな感じか? 魔ーがれっとアルティメットラッ機ー、略して魔機かなぁ? ないな。


「魔機ってのはなんですか?」


 聞かぬは一生の恥と言うしな。いや、魔ーがれっとアルティメットラッ機ーの可能性がないわけではないかも知れない。


「魔法補助演算機、略して魔機だ。まぁ、魔法を補助する装置だと思っておけばいい。僕のこの指輪がそうだ」


 そういって手を見せてくると、その両手には一対の指輪がはめられていた。透明な、なにか宝石ようなものがついている指輪で、そこまで大きくはないが、なにか不思議な力を感じる。


「しかし、魔機なしで魔法ね。そんなことができるなんてこいつ本当に人間か?」


 失礼だな。外見はしっかりとした人間だろうが、心も綺麗な子供だぞ。なんていう失礼な人間だ、これはもう打ち首の刑だな。


「分かった、引き受けよう。こいつについては僕も興味がある。別に急ぎの用じゃなかったしね」


「いいんですか師匠?」


「ああ、いいさ。それにこいつ、俺たちが探している宝以上のものかもしれないぞ」


 東京の至宝と呼ばれた俺としては、まぁ当たり前の評価かな。自分で呼んでいただけだけどね。


「では、色々他のことをも教えてあげてください。この子もついでにお願いします」


 エリスさんもですか、まぁそろそろ教育的なことを考えたりもしなくちゃいけないしな。俺もまだ読み書きもできないしなぁ。

 色々本を隠れて読んだりしているんだけど、全く分からない。文法が違い過ぎて、全く見当がつかない。というか左から右に読むのかも怪しい。なので、全く文字が読めていない状況だ。しかし、この体はかなり優秀なスペックらしく、大体は一度見たことは覚えてしまう。なので、大体の文字は覚えている。この能力生前に欲しかったな。


「では私はアルバとリオナを呼んできます。色々あると思いますから」


 そういって、部屋からそそくさと出ていくリストさん。部屋には俺とエリナ、変態師弟の四人になった。


「あー、なんかめんどくさそうだな」


 めんどくさいのこっちなのだが。まぁ教育を受けられるのだから文句は言わないが、こんな人間に教わらなくちゃいけないのか、なんだかなぁ。


「おい、小僧。お前は何者だ?」


 何者か? そう聞かれるのが一番困るんだよな。俺自身、自分を理解したことなど一度もないし、理解しようともしていない。だから、俺がこういう風に質問された場合、何を答えていいのかが分からない。だから今回は無難な答えにでもしておこう。


「すいません、僕も自己紹介がまだでしたね。僕の名前は、アルト・リングスです。三歳です」


 かわいさアピールをしっかりしておく、キャラ設定は大事だよね。キャラがブレブレなんてそれは一番いけないことだと思うよ。まぁ俺は俺自身を見失いそうになってるけどね。


「そういうことじゃねーよ」


「ああ、こっちの娘ですか、こっちの娘は」


「ああ、めんどくさいなお前、お前のことだ。魔法というのは不条理に見えて、条理的だ。魔力を代償に世界への改変をする。魔法の発動方法は、その後始末を言霊でするか、魔機に背負わせるのか違いだ。世界の改変自体はかなりやばい代物だ。それを自分で処理しようっていうのは正気の沙汰じゃねーぞ?」


 俺自身はそんな大層なことをしている覚えはないんだがなー。というか魔法自体、何が何だか分からないんだよねー。パソコンみたいなものだ、どんな風に動いているかは分からないが、使えている。まぁ人間は使えるもは使うような存在だからねー、それが自分の身を滅ぼすものだとしても、身が亡ぶまでは使い続ける。それが人間の性ってものよ。


「さぁ? 僕にはわかりかねます」


「おいおい、知らないふりしてんじゃねーよ。分からないのに使うのか? 知らずに使って、怖いとは思わないのか?」


「それが人間でしょう?」


「ははは、そーか、そういう事か。お前、頭のねじが足りない口か、僕も人のこと言えた口じゃねーが、お前も相当だな。ちなみにお前の世界改変の代償はなんだ?」


「少しの頭痛と、気絶のおまけつきですよ」


 少し強がってみた。実際は頭を何回もハンマーで潰されたような痛みと、気絶だが。


「何回だ?」


「百まで数えましたが、それ以上は忘れました」


 何百、何千回と頭を潰されたような痛みを味わったことか。でもどうしてそんな痛みを味わうのに、何度もやったのだろう? 別に魔法なんてものなくても暮らしていけるのにな。俺はどMの部類だが、流石にあそこまでの痛みを、快感と言えるほどではないしな。ではなんでやったのだろう? ああそうか暇だったからか。


「ははは、これはいい。どうせ魔法を練習するのにも、大層な理由もないんだろう? いい、いいぞ、分かった魔法は俺がみっちり教えてやる。教養はバカ弟子に任せる、それでいいな?」


「はい? 私もですか? まぁ何を言っても無駄なんでしょうね。分かりましたよ、やりますよ」


 あらら、なんか気に入られてしまったようで、俺としては教育だなんてめんどいことは一回受ければ十分なんだけどね。まぁ、一般教養もない男にはなりたくないから頑張った方がいいか。


「はい、よろしくお願いしますね」


「そんなこと微塵にも思ってないだろう?」


 ありゃりゃ、バレてるか。嘘はうまい方だと思ってたんだけどな。


「お待たせしました。この屋敷の主人、アルバ・リングスと、リオナ・リングスです」


 ドアを開けてやってきたわれらリングス一家、母と父の登場です。遠目に見ていれば二人とも完璧なんだがなぁ、実際話したり、付き合っていくと、かなり残念な人物だと発覚する。


  母は、かなりの天然だ。もうなんか天然というか、偶にボケているんじゃないかと錯覚しているほどだ。この間だって、村に行くために準備をしていたら、準備をしているうちに忘れたらしく、一日のほほんとしていたぐらいだ。あれ? これ天然か?

  父の方は、よく言えば豪快、悪く言うとバカだ、いやアホか。夫婦とは似ると言うが、この父あって母ありって感じだ。まぁ村人にはそこそこの人気があるようだが。


「お初にお目にかかります。まぁ説明は受けていると思うので、省略します。この話、僕は受けます。あなた方が良いと言えば、すぐにでも魔法の教授をいたします」


「こちらとしては、街級の魔法使いに御教授いただけるのは願ってもないことなのですが、私たちには、教師代は払えませんよ?」


 こんな変態に金を払うのか? しかし、人類最強の一角に教えを乞うのであれば、それなりの金が必要なのか? でもなぁ、こんな人間になぁ、なんか納得がいかない。


「別に必要ないですよ。この子には少し興味を持ちましたから」


「はぁ、やはり特別な感じですか?」


 なんかアホみたいな質問だな。多分アルバは、現状をあまり理解してないようだ。まぁ俺自身もそんなに理解していないが。


「ええ、特別なんてものじゃないですよ。人間初の世界級魔法へ届きうる力を有しているかもしれません」


「そんなにですか!? 流石我が息子だな」


「ええ、こんな凄い子供だとは」


 両親二人もびっくりだ。そりゃあ、子供が人外の力を宿してるなんて言ったら、びっくりもするか。


「そこで、教えるうえで一つこっちからも一つ条件があるのですが」


「なんでしょうか?」


 条件? なんだ? この村の女を抱かせろとかか? こんな村に居るのなんて田舎娘ぐらいだ、そんなのが良いのだろうか?


「剣術を教える先生も欲しいですね。魔法のことは教えられますが、それだけで生きてい行けるほどこの世界甘くないですから」


「それなら、俺とケントができます。なのでそこは大丈夫です」


「ほほう、どこで剣術を?」


「一応元冒険者でして、剣術ならばそこそこできます」


「どれぐらいの腕前ですか?」


「S級ダンジョンをチームで潜ったりもしてましたよ」


 S級ダンジョン? なんだそれ、普通に考えればすごいダンジョンという事か。というかダンジョンなんてあるのかよ、なんか、ホントに異世界に来てしまったようだな。


「それぐらいできれば十分です。ではみっちりと鍛えることにしましょう」


 あー、俺熱血とか嫌いなんだよなぁ。修行編とか、いつの時代のジャ○プだよ。最近のジャ○プだって、修行編カットして何年後とか、合理的な処理が施されているというのに。あーあ、これだから発展の遅い異世界は嫌なんだよ。





          ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇





 そこから俺の修行編が始まった。大体は朝剣術をして、午後は魔法、夜が座学と言った感じか。


 いやー大変だね。まぁ暇を潰す事が増えたので、いいのだが、いかんせん教師陣全員が優秀過ぎた。

 午前の剣術なんて、男二人の剣術が我流なため、色々苦労していた。まずは、父であるアルバ。その動きは流麗で、俺の父親であるということを忘れてしまうほどだった。

 一つ一つの技術に無駄がなさすぎる。どんな隙も許さず、責められずに、責めるといったスタイルだ。相手の動きを見て、相手が何をしてくるか、そして何をしたいのかを完璧に見切り、その手をさせずに、自分のしたいことだけをして勝つような剣術だ。なので、アルバと剣の修行をしているとすごくイライラする。マジで、魔法で頭を吹っ飛ばしてやろうと何回思ったことか。

 逆にケントの方は、一撃必殺と言った感じだ。相手など関係ない、己の力で相手を吹っ飛ばす、そういった感じの剣術だ。すごく分かりやすいので、俺としてはこっちの方がありがたいな。

 まぁ、四歳にもなっていないので、まだお遊びと言った感じなのだが。


 魔法についてはかなり順調だ。というのも、別に呪文を覚える必要もないので、ただひたすらに魔法の練習をしたり、高度な魔法を見せてもらって、その魔法を俺がどうやって発動させればいいのかを考えたりするだけだ。今のところ、俺は村級魔法使いより少し下と言ったところらしい。まぁ村ぐらいなら滅ぼす自信はあるな。しかし三歳児にして、村を滅ぼすか、将来が不安でしょうがないぜ。

 魔法については先生である、アレンがかなりやばい。まぁ人類最強の一角である名は伊達ではないという事か。


  座学についてもかなり順調だ。前にも言った通り、俺はかなり頭がいい。大体一回習ったことなら、覚えてしまう。なので、ものすごいスピードで、勉強は進んでいく。世の中大事なのは速さだよな。速さが足りないのはいけないとだと思うよ、うん。

 そして一緒に受けているエリナについてはあまり捗ってないようだ。まぁ俺の早さが異常なだけで、多分エリナも優秀な方なのだろう。ふっ、自分が少し恐ろしいぜ。まぁ座学についてはレイスさんの教え方がうまいというのもあるのかもしれない。説明がとても分かりやすく、伸ばしていくスタイルの教え方なので、俺にはすごくあっている。

 さて俺の日常についてはこんなものか、最近はこの繰り返しなので、ほとんど説明することもないんですよねー。


「何をしているんだ?」


 俺はアレンに話しかけられ、思考していることを中止する。


「いえ、現状報告を少し」


「誰にだ?」


「さぁ?」


「訳分からん奴だな。まぁいい、魔法の練習を始めるぞ。今日は何をするか?」


「ええー、それを生徒に聞きます?」


「ああ、僕は生徒の自主性を重んじるからな」


 自主性、なんて便利な言葉だろう。こういっておけば、大体は自分のせいにはならない。


「別にないですよ。というより、魔法自体にそこまで興味ないんですし」


「お前は全魔法使いを敵に回したな。それに世の中には、魔法を使いたくても使えないやつがいっぱいいるんだぞ?」


「使えないから、使いたくなるんでしょう? だからその言葉は僕の説教には、おかしいと思いますよ」


「ほほう、まぁそれもそうか。使えないやつは一生使えない、世の中には才能っていうものがあるからな。世界はとても不平等なんだよ。世界の幸福は一定量しかなく、人間全員で分けるには、少なすぎる」


「だから僕たちは幸福を求め続けなければいけない」


「そうだ、ゆえにお前は全力で頑張れ」


「結局そこに行きつくんですな、まぁやりますけどね」


 無駄なやり取りだ。まぁ、こういう無駄が人生には一番大事なのかもしれないけれど。


「というわけで、今回は言霊についてだな」


「ああ、言葉には力が宿るとかいう感じですか?」


 古来から言葉には色々な力が宿るという、まぁ言葉っていうのは残酷なものだしな。人間一番の武器は言葉なのかもしれない。


「そうだな、一般の魔法使いは、この言霊を使って魔法を行使する。改変の処理を、言葉の力で行うという事だ。だから高位の魔法を使いたければ、言葉を増やさなければならない。終わり」


「へぇーそうなんだー。って終わり!?」


 産業でお願いしたわけではないのに、あっさりと終わってしまった。これは授業と言えるのだろうか?


「ああ、だってお前呪文使わねーじゃん」


 ごもっともで。


「じゃあ、なんで授業をするっていったんですかー?」


「知ってるのと、知らないのでは全然違う。一応知識には入れておけってことだ」


 わぁー、無駄な時間がいいと言ったけど、そこまでよくはないや。無駄は省いていきたいね。


「はーい」


「返事だけはいいな。じゃあ次はどうすっかな、ああ、じゃあ禁忌の魔法について話しておくか」


 禁忌? そんな魔法があるのか? 突然服を破いたりする魔法か? 恐ろしいな、そりゃあ禁止するわ。キャストオフ! って感じか。まぁ破れるのは俺の服だが。


「なんか変なことを考えてるな、多分不正解だぞ?」


「なんですと!? 僕の服がキャストオフしないの!?」


「時々お前の頭の中が怖くなるよ、じゃあ説明するぞ。禁忌と呼ばれる魔法は五つ、時間操作、蘇生、人間改造、召喚、創生の五つだ。このどれもは発動させること自体禁止だ。というか研究すること自体も禁止だ」


「まぁ、大体理由は分かりますよ」


 人間としての尊厳や、世界自体の危険、禁忌の魔法どれか一つを発動させるだけで、脅かしてしまう。まぁ、人間もそこまでバカではないという事か。


「そうだ、これらについて触れること自体禁止だ。一応危険性についても話しておく。時間操作はまぁわかるな、蘇生もわかるよな。人間改造は、一応倫理的な問題だな。ここまではどうでもいい、使うなって覚えておけばな」


 どうでもいいのか、結構重要な魔法な気がしないでもないが。まぁ使えないのであれば一緒なのか。


「次からが大事だ。他の二つに関しては考えるのもやめておけ、お前が世界中の魔法使いを敵に回したくなければな。他の二つについてはこれだけだ」


 それほど危険ってことか。まぁそんなに忠告されてやるほど俺もアホじゃないんでね。


「もしそのいずれかを、発動させようとしたら?」


「百パー死ぬ。多分お前の脳みそが解けて、鼻から出てくる」


 脳みそがねぇ、まぁ昔、ゲームをやり過ぎたら鼻から脳みそ出てくると聞いたことがあるし、その程度という事か。


「分かりました。では僕は、危険なことはしないように生きて行きますよ」


「それがいい、でも多分お前は危険に巻き込まれるよ。力がある人間は、平穏には生きられないんだよ」


「それは忠告ですか?」


「いいや、年長者のアドバイスだ」


 うーん、三十も越えた俺がこんな子供に説教されるとは、まぁ俺自身人生経験は全くと言ってないからな、胸に刻んでおくとしよう。


「うーし、じゃあ今日も、魔法の練習するぞー」


「うーい、了解でーす」

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