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狂人転生記  作者: aki
対決準備編
31/55

ロープレ的展開には嫌気がさすね! まぁ物語の展開上従うしかないんだけどね!

 人とは弱い生き物である。元の世界であろうと人一人が個としてできることはほんの僅かなことだけだろう。ならばこの世界ではどうだ? 魔法という超常の存在もある。武器での攻撃も元の世界とは比べ物にならないレベルのものだろう。でもそれでも個の力なんてたかが知れている。そう、今回のような問題には個人ではどうしようもないのだ。相手が群である以上、こちらも群で対応しなければならない。戦争の基本とは数であり、最近のどんな媒体でもなんか数が少ない方が奇策で勝つような作品ばかりだろうが、そんなものはこういう世界ではありえない。こういった名言がある戦いは数だよ兄貴! と。だからもう絶望的だね。よし、元の世界に戻ろう。うん、無理だね。


「……というわけなんです」


 ギルドの一室ギルド長のお部屋には《悪夢》のメンバーが全員揃っていた。


「何がというわけなのかよく分からんが?」


 あれ? 普通こういうのって説明終わってるものじゃないの? なんなの? こういう小説特有の諸法でなんとかなるんじゃないの?


「ああもう、あんたは黙ってて。かくかくしかじかこういう事なんですよ」

「なるほど」


 なるほどって何!? かくかくしかじかで話伝わるの? 何この世界人格面だけでなく、演出面でも俺に不遇なの? はぁー、もうやめるわ。ボイコットするわ。待遇の改善を要求する。そうしないとストライキを行う。あれ? なんか物語的に俺が居ない方が平和に普通に進行しそうだぞ? その場合はどうなんだ? このストライキは正解なのか? なんかそれは嫌だ。正解な行動を俺が行うというのは癪に障る。という事でストライキを辞めてこのまましっちゃかめっちゃかします。

 というわけで、最近シリアスなことが多かったので、この作品のコンセプトを思い出してみよう。なんかシリアスが多すぎて、俺本来の持ち味が生かせていない。俺の本来の持ち味とはなんだろう? ブレブレのキャラだろうか? それとも一行で喋れる内容を三行ぐらいまで膨らませられることだろうか? うん、特徴ないね。


「で、どっち?」

「うん、そうだと思う」


 ん? なんか言われたか? どうもなんか無意識に答えたようだ。どうも俺には無意識時には適当に返事をする妖精さんが居るようで、うんそうだと思う、その方向で、風の噂で聞いたがコーラって……、この三つがランダムで出るようだ。


「分かった。じゃあ、そう伝えるね。アンリはどうする?」

「風の噂で聞いたが、コーラって……」


 ここで超レアな選択肢を引いてしまった。これの出現率は二百五十一分の一だというのに。


「は?」

「は?」


 ギルドの館長室に変な空気が流れる。当然のごとく話を聞いてなかった。


「で、何?」

「話を聞いてなかったの?」

「うん、聞いてなかった。てへ」

「お前の耳は飾り物か!!」


 エリナさんの怒号が響く。


「とりあえず今からお前たちには中央の王国へ行ってもらう。もう、儂たちだけでは解決できん。《王国》《戦団》《悪夢》の軍団でどうするかを決めるしかなかろう。それにプラスして有名な冒険者も収集しなくてはならん。場合によっては北の《英雄》にも知恵をもらわなくては」

「はぇー」


 なんか大ごとになってるみたいっすね。というか他の軍団ちゃんといたんだ。設定だけの存在かと思ってました。


「で、どうしてそんな大ごとに?」

「あんたの記憶力が怖くなるんだけど」

「え?」


 何か忘れてただろうか? ふーむ、そういえばさっきなんであんなに怒っていたんだっけ? というか俺の完全記憶能力者って設定どこいったんだっけ?


「すまんがお前のふざけに付き合っている時間はないんじゃ。お前たちには至急中央へ向かってもらう。人類存続の危機じゃからのう」


 なんか冒険者ってこんな物だっけ? なんか俺が思ってたのと違う。色々動いて、適当に生きて行けるのかと思ってたんだけど? 自由を愛するのが冒険者じゃないんですか?


「不満か? でもしょうがないじゃろ。お前たちは人間側の最強戦力じゃ、そんな人間を遊ばしている訳にはいかんのじゃよ」

「そんなに危ない状況なんすかね?」


 なんかそんなに危ないようには思わないんだけどね。どうせ、魔王なんて勇者にやられる存在なんでしょ? まぁ勇者が今は居ないんだけどね。


「まぁ、魔王じゃからな。種の存続の危機と思ってもらっても構わん。しかも、今回は英雄も居ないからのう」


 なんか魔王には会ったことないからヤバさが分からない。栽培マンぐらいはヤバいのだろうか? まぁ、魔王だったらそれぐらいは強くないと、世界は征服できないだろう。あれ? でもピッコロレベルでもできるんだからそんなに強さは必要ないのか?


「まぁ、中央国に行くことは確定で、準備をしといてくれ」


 何だろう、ロープレのNPCみたいな感じだ。すごく俺を働かせようという見えない意思を感じる。だけど俺は負けない!! そんなことには負けない! 人間が滅びようと、俺は関係ないんだ、自由に生きることこそ俺のすべて!


「あーれー」


 今度は見える手であるエリナさんに連れて行かれてしまう。ああ、もう本当に俺は弱いね。




          ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 

  

「さて、第五次悪夢会議始めるよー」


 ホームに戻ってきた俺たちはとりあえず形だけでも話し合いを進めるのであった。


「めんどい以上!!」


 流石アオさん、俺の気持ちを代弁してくれるぜ。


「さて、意見がひとつしか出ないので私たちは……」

「おいおいおい、そりゃあヤバいだろ!」

「カイエ、シャラップ。オマエだってめんどいと思ってるだろ?」

「まぁそうだけど、そういう問題じゃないだろ?」

「そういう問題なのです! めんどい事はしたくない! 魔王なんてしーらない」

「そうだそうだ。魔王なんて屁の河童よ! どうせやられる存在なのよ。ダーリンが何とかしてくれるわ」


 何とも人任せ。まぁそうだと思ったけどね。


「私は、まぁ、アルトに任せるよ」

「私もアルト様に任せるわ。でも中央国にはあんまり行きたくないわ。いろいろとあったから」


 この二人も人任せ。まぁフェリスが行きたくない理由も分からないでもないが。


「俺は行くぞ? てめぇらが行かなくてもな」


 珍しくクラウスが働く気である。何ともおかしな光景である。そりゃあニートがいきなり働きたいとか言いだされたら驚くだろ。まぁ、俺は働かな過ぎて追い出されたんだけどね! そのままこの世からおさらばしたね! 生涯ニートを貫き通した先輩として敬ってほしいものだね。


「あら珍しい。あなたが働こうなんて、労働という言葉が一番似合わない男だと思っていたけど」

「うるせー、こっちにも事情があるんだよ」

「痴情?」

「鰌?」

「おう、二人、殺されたいらしいな」

「きゃー怖いわ、働きもしない人間の逆切れって怖いわー」


 さてどうしたものか。実際のところほんとうにめんどくさい。というより、あの魔族の王様連中とはあまり戦いたくないんだよね。だって強いもん。強いというのはそれだけですごいのだ。強者というのはそれだけで免罪符なのだ。俺の場合強さとか守るべきものとか特にないので、なぁなぁで過ごしていきたいんだけど。

 それにこの軍団には、魔王を倒さなくちゃいけないという正義的な思いを持っている人間など一人もいない。俺が集めた仲間だ、そんなまっとうな人間が居るわけがない。

「私は殺す、絶対に」

 あ、ごめん一人いたわ。正義の獣耳少女、アトランテちゃんが。

 彼女はどうやら復讐の鬼になったようで、その為にこの《悪夢》へと仲間入りを果たしたのでした。何とも早まった決断をしたものだ。こんな変な連中と居ても得なことなど一つもないというのに。


「まぁ良いんじゃない? 魔王の一人ぐらい倒しても?」


 そう言ったのはアオだった。


「珍しいな、お前がこういうのに乗り気なのは」

「まぁ、私も嫌だけどねー、でもまぁ、ここいらで魔王の一人ぐらい倒しても良いんじゃない?」


 どうするんだろ? 魔王倒した後に超魔王とかラ○ォスとか出てきたら。魔王ぐらいなら倒せるかもよ? でも超魔王もラ○ォスも無理だろ。またはラディッツとかも無理。


「ダーリンなら倒せるわよ」


 何か今日はおかしい。何か変なものでも食べたのではないだろうか? 青い髪の少女は本来そういう真面目なことを言う人間ではない。

 その青い髪、青い瞳、整った顔がこちらを射抜く。全く違う、外見は全く違うのに、心が似通いすぎて、見ているだけで吐き気がする。だけど、長く一緒に居たのにこんな真面目な彼女は初めて見る。


「まぁ、しょうがないか。そこまで言われればな」


 普段真面目じゃない奴が真面目にするとどうしてこんなに説得力があるのだろう? 雨の中でヤンキーがペットと見つめあっているかのような現象だ。うん、そんなに素晴らしいものじゃないね。そんなことで日頃の行いがチャラになるわけないじゃない。俺がそんなことしたら後ろから命を狙われるね。隙ありって。


「ちょっくら魔王を倒しますか」

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