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狂人転生記  作者: aki
俺、爆誕編
2/55

目覚めた朝

 目が覚めると、俺は見知らぬ天井を見上げていた。どうやら俺は生きているようだ。よかった朝起きて最初にやる作業が、脳みそを頭の中に戻す作業じゃなくて。


 でもまぁ、何もかもが分からないな。体は動くが、思ったように動かない。というより、俺は裸みたいだ。それになんか悲しいわ。なんだ? この世にまた戻ってきたことが悲しいのだろうか、死に際は生きたいと思ったが、すまんなあれは嘘だみたいな感じなのか? まぁ俺の頭の中は俺自身でも分からないことが多々あるから、考えるだけ無駄なんですけどね。


 ああ、なんかやべー、又この世で生きて行くことになるということを考えると泣きそうになるわ。あー、やべー、これ泣くわ、年甲斐にもなく男泣きしそうになるわ。あ、でもこの状況男泣きというのだろうか? なんか情けない理由でなくときも男が泣けば男泣きなのか? まぁどうでもいいか、別に俺が泣こうと世界に何の影響も与えないし。


「おぎゃあ、おぎゃあ」


 おぎゃあ? だ……と……? これは俺が無意識に何か赤ちゃんプレイでも所望しているという深層心理が如実に表れた現象だろうか? 泣くという無意識な現象と、赤ちゃんプレイがしたいという俺の無意識の感情がシンクロし、このような現象になりえたのだろうか?


「~~~~~~~」


 なんか綺麗な女性が覗いている気がする。気がするというのは、今の俺は満足に目も開けられない状況にあるという事だ。なんで目が開ないんだ? いやまぁ死んだ瞬間には顔なんて吹っ飛んでたし、目が開かないのも当然なのか? そしてなぜ女性と分かったのかというと、それは俺の天才的な感性ですとしか説明のしようがないな。


「~~~~~~~~」


 しかしこいつら何語を喋っているんだ? 英語ではないよな、ドイツ語? フランス語か? 全く分からない。マジで日本語でおk状態だ。何か喋ってみるか? 案外通じてみるかもしれない。


「おぎゃあ、おぎゃあ」


 わーお、俺の深層心理は相当重症ならしい。それとも何か? 俺の口に何か変換機でもついていて、何を喋ってもおぎゃあと発音されるようになってしまったのか? そんな苦行に俺は耐えられないぞ! まぁ喋る相手なんていないんですけどね。


 ああ、なんか唐突だけど眠くなってきた。俺は不眠不休で戦える永久機関ではないので、睡眠はとらなくてはいけない。ソフトウェアは人間じゃなくても、ハードウェアは人間なのだ。体は人間、心は何か! と言った状況か。うん、なんか文字で表すとすごい悲惨だね。

 でも、まぁ今の状況では何もできないし、寝てしまった方がいいのかもしれない。寝る子は育つって言うしな。育ってもどうしようもないやつにはこの言葉は無意味か。

 あーやべぇ、もう耐えられない。最初から瞼が開いてないから、何とかして耐えることもできないし、あ、これはべぇ! まじべぇわ! 段々と意識が遠のいて……。



          ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 俺、朝起きたら何かよく分からない状況になっていた事件から、二か月ほどが経っていた。二か月も経てば周りの状況は嫌でも分かるもので、分かったからこそ今の俺は絶望しているのだが。

 簡単に言うと、この世界は訳の分からない世界だという事だ。見た感じ、現代ではない。というか確実に現代じゃない。文明レベルが全然違うわ、マジで月とすっぽんぽんぐらい違うわ。ところどころ文明の色は見えるが、大体は中世とか、世界史で出てくるレベルだ。そしてここは西洋のような文明圏だ。日本や中国のアジア系の文明は余り見られない。


 そして俺はなんと赤ちゃんになっていたのだ。な、なんだってー! おい、あらすじで読んだから知ってるよとかいうなよ、しょうがないだろう言えって言われたんだから。おっと話がそれたな。


 他には何を言ってないかなー、というか最近になってやっと目が見えるようになったので、分かったことはあまりないのだが……ああ、俺のお母さんらしき人間はかわいかった。父さん(仮)も結構なイケメンだ。二人とも白に近い薄い色の金髪を有しており、顔立ちは西洋絵的な感じだ。すっとした鼻立ち、シュッとした輪郭、綺麗な青色の目、そのどれもが素晴らしいバランスで配置されており、一つ一つが良いパーツなのに、全体のバランスも絶妙だった。

  そして、どうやらここは少し裕福なようだ。窓から見える庭にはたまに庭師などが来ていたし、メイドの姿も見える。でもまぁ、俺の視力がまだ育っていないので、よくは分からないのだが。


 じゃあ、家のことについても話しておこう。分かったことは少ないが、とりあえず電機は通っていないようだ。たまーに光る石などを見たりするが、大体は燭台や、ランプなどで代用しているっぽい。服装も、現代のような裁縫の技術は内容で、大雑把というか、雑なものが多く、色も白がほとんどで、あっても単色なものばかりだ。この世界ではメイドと聞いてもあまり期待してはいけないのかもしれない。


  現状報告終わり! まぁ誰に報告しているのかという話しなんだけどね。あまりにも暇すぎて、頭の中に架空のお友達を作ってしまったのかもしれない。そうなっていないこと願うしかないな。


  はぁ、本当に暇なんだ。会話できればいいのかもしれないが、俺はまだ喋れない。何となくだが言葉は分かるようになってきた。しかし、俺の声帯がまだ未発達なのか、上手く発音ができない。こんな中で楽しみなことと言えば、脳内の妄想と食事と排泄ぐらいか。なまじこんな小さなころから自意識があると、死にたくなるな。子供はアホなぐらいが一番いいのかもしれない。


 さて、では次は俺の楽しみを説明しようか、まずは食事、当然母乳だ。最初は期待して、ドキドキしていたもんだが、実際直面してみると、なんだか創造していたようなものではなかった。単純に食事な感じになってしまっている。誰も白米を食べながら発情はしないだろう。

 次は排泄だ。最初のころは、布のおむつの不快感が半端なかったのだが、最近ではそれがもうくせになってきた。たまに、メイドの目の前でしたりするが、そのせいで何かおかしなものが目覚めてしまいそうだ。



          ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 俺、朝起きたら子どもになっていた記念日から半年ほど過ぎた。結構この世界のことも分かってきた。一番大きいのは言語を理解し始めてきたことだろう。半年も聞いていれば大体は分かってくる。まぁ文法的には日本語と変わらないっぽいのが救いだが、変に日本語を覚えているせいで、色々と新しい言語を覚える際に少し弊害はあったがな。

とりあえず俺の名前はアルト・リングスというらしい。両親やメイドはアルと呼んでいる。女友達にはアルトきゅんとでも呼ばせようか。


 しかし、動かないというのは逆につらいな。動けと言われると意地でも動きたくないのだが、動けないとなるとすごく動きたくなる。まぁ、要するに俺が天邪鬼なだけなのだが。体で動くのは手足と体全体を揺らしたりするだけだ。このままでは太ってしまうわ。ゆりかごみたいなものに入れられているせいで、外に出たりできないしな。

 でも少し頑張ってみるか、このままでは歩き方や、体の動かし方も忘れてしまいそうだ。


「ふおおおお」


 俺は気合を入れて外に出ようとする。しかし無理だ、ゆりかごの壁はでかい。俺は子供が生まれたらゆりかごに居れることはやめよう。自由な意思で育てることが大事なのだ。まぁ放任主義とも言うが。


「ん? どうしたのアル? 外に出たいの?」


 おお、救いの手だ。さすが母さんだ、俺の考えはお見通しってことか。俺は必至で両手をバタバタさせる。


「そういえば起きてるときに、外に連れてったことはなかったわね。じゃあ、一緒に散歩に行きましょうか」


 俺の小さな体を抱き上げられる。ふわっとした感じと共に、俺の視界が一気に広がる。どうやらここは俺専用の部屋らしい。中には俺が成長した時のように、ちょっとした玩具が色々置かれていた。

 俺は母の腕の中、家の中をゆっくりと歩いていく。


「奥様、お出かけですか?」


「ええ、アルを連れて外に行ってくるわ」


「お気をつけて行ってください」


 メイドさんがうやうやしく頭を下げる。メイドさんもかわゆいな。現代のメイド服のような感じではないのだが、こっちのもそれなりだ。まぁ、普通の服にエプロンをつけただけなのだが、それがすごく似合っているのだ。顔の方もかわいい、というよりきれい系だ。黒く艶のある髪を短く切っており、顔も、少し無表情めな印象を受けるが、パーツはいいものがそろっている。


「行ってくるわね」


 母さんは、挨拶を早々に切り上げ、俺を連れて外へと出る。


 外にはのどかな田舎の風景が広がっていた。遠くの方には田んぼなども見える。緑が豊かだ、風が緑の匂いを運んでくる。良い世界だ、日本に居たらこんな気分には一生なれなかっただろう。まぁ、家から出ない俺には関係ない話しなんだろうが。


「どう? ここが私たちの住んでいる村、リスターよ」


 どうやらこの村の名前はリスターというらしい。本当にいい村だな。俺この世界に生まれ変われてよかったのかもしれない。


「リングスさん! 危険です!」


 村人がこっちに向かって何か叫んでいる。


 その方向を見ると、何か黒い物体がこちらにすごいスピードで近づいてきている。

 あれはなんだ? 犬か? それにしては異様だ。牙は鋭いし、目の色が真っ赤だ。それに凄いでかい、ドーベルマンぐらいあるんじゃないか?


「あらあら、ハウンドドッグですか、風はダメねアルに悪影響だし、じゃあ水にしましょう」


 何を言ってるんだ? 風? 水? そんなのじゃ止めらんねぇだろ。散弾銃でも持ってこないと、あいつは殺せねぇーぞ。


「ウォーターボール」


 母さんは、手から水を放出し、その水を球状にしていく。そしてその水を前方の敵へと放つ。直線状に飛んでいく水の玉、それは凄い勢いで犬へとぶち当たり、吹っ飛ばす。


「はい、終了。怖いから家に帰りますか」


 この世界は良い世界と言ったな? あれは嘘だ、俺の勘違いのようだ。あーあ死にたくなってきたぜ。

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