初めてのお使い、初めて///
さぁさぁ皆さん、やっと俺の出番ですよ。前回はなんですかね? あのつまんない回は。俺の魅力が全然伝わってないんだが? というよりあの回要ります? あ、要るんですか。じゃあいいです、はい。
さて、時の流れというのは悲しいもので、少年は男になり、少女は婆になる。それが世の中の常というものなのだ。修行編が終われば大人編に入り、内容も劣化していくそれが世の常なのだ。あれから十年、そりゃあ色々ありますわ。もう、ここでは語り尽くせない程の色々があるのです。
「そう、色々あったわね。流石に金網デスマッチで相手がハロゲンヒーターで地球投げして来た時は心が折れるかと思ったわ」
「あのー過去を捏造するのはやめてもらえません? あらすじだからって何をやってもいいわけではないんですが? というかどんな状況だよ」
というか、ナチュラルに最初の語りに絡まないで欲しい。最近アオさんは本当に人間離れしてきている気がする。
「あら、そうだっけ? 年かな」
「まだピチピチの十代でしょうが。というよりアオの頭は飾りなんだから劣化するわけ無いでしょう」
「あら酷い、女は飾りに命をかけるのよ?」
「その飾りはこの世で最もいらないものなんですが……」
「二人共うるさい」
ドアからはみんなのスーパーアイドルエリナさんが顔をのぞかせていた。
「あらエリナさん、今日はお出かけでは?」
「もう終わった。爺さんからギルドに来いって」
「えー、俺爺さん苦手なんだけど」
「うるさい、早く行け」
「酷いわーエリナさん、のド・エ・ス」
とまぁ、あの爺さんに呼ばれたのであれば、俺は行かなくていけないんのだ。なんというかあの人には敵う気がしない。まぁぶっちゃけ話の都合上行かななきゃいけない気がするんだよねぇ。俺は敏感系主人公なので、話の展開にも敏感なのだ。
「さて、カイエー行こうよー」
「また俺かよ!? アオとかと行ってくればいいじゃないか」
「バカ野郎! アオと俺がお出かけ? そんな気持ちわるいことできるか!」
「あら、酷い、私はいつでもあなたとのお出かけはバッチこいよ」
気持ち悪そうな顔をしながら何を言っているんだか。
「他の奴らと行ってこいよー」
「バカ野郎! お前はこの俺の人物紹介回を無駄にしようというのか!?」
「人物紹介? 誰にだ? というか二回も馬鹿いうんじゃねー!!」
「お客さんに決まってるだろ! さっさと行くぞ」
とりあえずうるさくなりそうなので、カイエを瞬間冷凍して運ぶことにする。きっとカイエは強い子だからなんとか大丈夫だろう。
「エリナさんや一緒に行く?」
「私はいいわ。一日に二度もあの爺さんの顔を見たくない」
「ですよねー」
かくいう俺もあの爺さんにはできる限り会わない方が良い。ここにある冒険者ギルドの館長がなぜあんな食えない奴なのか、本当に俺は運が悪いようだ。
「あとは、爺さん行くか?」
後ろの方で優雅にお茶を飲んでいる爺さんを誘う。このままではきっとボケ一直線なので、彼は外に連れて行ったほうが良いだろう。
「ははは」
「またそれか!?」
「さすがカイエ、良いツッコミだ」
「もういいよ、行こうぜ。ほら爺さんも行くぞ」
「ははは」
そんなふうに笑みえお浮かべる爺さんを無理やり連れ出す。まぁ爺さんの場合、笑みは浮かぶんではなく張り付くなのだが。
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冒険者ギルドの会館、ここは冒険者のための建物であり、寄り合い所でもある。今やこの街にも冒険者のギルドもやってくるほどになったのだ。比較的新しい建物は人々の活気で満ち溢れていた。
「やぁやぁ、おねーさんお早う!!」
「きゃー、今日も来たんですか!? 何度来ようとも私たちはあなたのような人に屈しません!」
さすがギルドの一角を担う職員だ高い意識を持っている。公務員というのはこうでなくては、まぁこの世界に統一された国などないので公務員というのは可笑しいのだが。まぁそんなことは置いといて、こういう頑な態度を取られるとやはりいじりがいがあるというものだ。
「今日はこの透明な……」
「がはは、何をやっておるんだ?」
ギルドの二階、階段上から豪快な笑い声が聞こえる。それはもう豪快で、ギャグマンガならばこの建物全体が揺れるほどの豪快な声だった。実際に建物が揺れたのでこの小説はギャグということになる。ギャグなら何をやっても許されるよね! ということで今から裸踊りでも踊ろうか、どうせ場面転換したら何事もなかったように話が進むだろうし、まぁ裸踊りは趣味なのだが。
と、俺がズボンに手を掛けようとしたとき、大木のような腕に抱えられてしまう。
いつの間にやら二階にいた声の主は俺の背後へと移動していた。というかどんな動きしてんだよ。
「まだ軽いな、わしが持てなくなるぐらい大きくならんと、強くなれんぞ?」
この爺さんこの間家を持って物理的に引越しをしてたんですが、それは俺が家より重くなれということですか? 確かに俺の恋愛は重いほうだが家ほどは重くないだろう。
「俺の心には羽が生えてるんで軽いんですよ?」
「そうかそうか! じゃあもっと大きくならんとな! その程度の羽じゃあだれも背負えんぞ」
そのまま俺は抱えられたまま二階の奥の部屋へと連れてかれてしまう。ゆっくりと後をついてくるカイエと爺さん。この人の扱い方はもう体で覚えているので、だれももう騒いだりしない。
「いてッ」
乱暴に落とされる。どうやらここは二階の応接室みたいだ。個室で、中心には取ってつけたように机と椅子が少し置いてあるだけだった。窓から入る光が少なく、昼だと言うのに薄暗かった。
「さぁてお前ら問題集団を読んだのは理由がある」
そりゃあ、あるだろう。ないのにこんな場所に呼ばれたらガチ切れだ。切れやすい十代なんて言葉があるんだが、それは俺なのかもしれない。もうどこからでも切れます状態だ。マジックカットだよ。魔法使いだけにね!
「で何なんだよ? この忙しいときに」
今日は卑猥な形をした棒を持って行ってギルドの受付のお姉ちゃんを困らせようとしていたのに。
「忙しいのか、それはすまんかった。まぁ、お前たちにお願いしたいのはこの冒険者ギルドからの公式なクエストじゃ」
「公式なクエスト?」
「お前たちがこの街を作ってはや五年、流石にここまで発展するとは思わんかったわ。老体のわしを連れ出して、ここにギルドを作ると聞いたときにはお上は頭が可笑しいのかと思ったが、ここまでの発展を見るとあながち間違いではなかったのう」
南の辺境にあるこの街を作って五年、つくるまでに色々あったし、作ったあとも色々あった。ではこのテロップをどうぞ! 説明するのがめんどいので。まぁテロップなんて用意してないんですけどね! そんなシロップみたいに甘いことがあるわけ無いでしょ! こんなの小出しにして読者を煽るのです。あ、今週はうまいこと言おう週間です。無理やりにでもうまいことを言っていきます。無理やりに言ったらうまいことでもなんでもないんだけどね!
「四大軍団と呼ばれるようにまでなったお前たちに冒険者ギルド全体からの依頼がある。これはほぼ強制と思ってもらっても構わん」
俺は自由をこよなく愛する人間なので、強制されるとどうもやりたくなくなってしまう。やりたいやりたくないのだ。人から言われるのが嫌なのだ。宿題は言われるとやりたくなくなるので、言われる前にやるし、オカズだって残すと言われるので言われる前に食べるのだ! あれ? 俺、なんか良い子じゃない? とまぁこうやって記憶の捏造が随所に行われるので、俺は俺自身が信じられないのです。
「強制? 嫌だね! 俺はノーと言える人間を目指してるんでね! イエスマンには絶対なりません。む
しろ俺はノーマンだね! もうノーとしか言わないぐらいのノーマンですよ。行き過ぎて半分スノーマンにすらなりつつあるね」
もう何を言っているかはわからない。まぁ要するに雪だるま作ろうということだ。意味わからん。
「わけわからんが、いいのか? 今回の話お前にとっても悪い話じゃないと思うぞ?」
悪い話じゃないというのは、往々にしてなんとも言えない話しかないのだ。世の中両方得する話などないのだ。誰かが損して、誰かが得する。誰かが騙して、誰かが騙される。世の中の幸福の総量は一定なのだ。
「で、どういう話なんだ?」
でも気になっちゃうお年頃なのです。
「この大陸、ユーエー大陸は知ってるな?」
大大陸ユーエー、色々な国が乱立する大陸。古い歴史と、伝説がのこる土地。流石にここまで生きていて知らない人間はいないだろう。
「今回キサマらが南にこの街を作ったことによって、南の探索が可能になった。つまりこの大陸以外の大陸を探索して欲しい」
この大陸以外の探索? めんどくさそうなので断りたいすごく断りたい。というか断ろう。悪い話じゃないという話はなんだったのだろうか? 悪すぎないですか? 俺にリスクしかないんだけど。
「ことわ……」
「亜人の報告が出ている」
「行きます!!」
「おい、アルト! 勝手に決めんな」
「うるせぇ! 亜人だぞ? エルフとか獣人とかいるんだぞ! 行くに決まってんだろ」
「なんでだよ!? お前の性癖に俺らが付き合わなくちゃいけんだよ!」
「バカ野郎、みんなの性癖は俺のもの、俺の性癖はみんなのものなんだよ!」
ジャイアニズムという言葉の権化である。性癖はみんなで共有するべきものなのだ。
「というわけで決定だ。行くぞ! 南の海へ」
「準備はこっちでしておくぞ。お前らは何名かメンバーを決めておいてくれ」
「カイエと爺さんは戻って誰がいるのか確認しておいてくれ、頼んだ」
「もうこうなったお前に何かを言うのは無駄か、分かったよ」
「頼んだよー」
「ははは」
「行くぞ爺さん」
ゆっくりと部屋を出て行く二人、それを俺は満面の笑みで見送った。
「さて、真面目な話をしようか。どうして今頃? それになぜ亜人? 五人のギルド長の一人、ガリアさんよ」
「言うなよ。わしだってその役職はいやなんじゃ。年取ってたらいつの間にかそうなってただけじゃよ」
「で、本当の目的は? 南の探索なんて今じゃなくても良いだろう。これまで別に切羽詰ってたわけじゃないんだし」
「復活が近いそうじゃ、北の英雄どもがそう言っている。だから亜人の知識や力が欲しい」
「復活? いきなりだな」
「ワシにも分からん。前回のは一人の英雄の犠牲でなんとかなったが、今回はそういう人物はいない。故
に上も焦ってるんじゃろう」
「それで俺たちに白羽の矢が立ったわけだ。でも亜人って本当に居るのか?」
「さぁな、居るか分からん。だが居てもらわんと困る」
「俺たちは犠牲ね」
「分からん、そうなるかならないかはお前ら次第だ」
「あっそ、じゃあな」
そう言って、俺は部屋を後にする。多分これが理由の全てではないだろう。そうせあのオヤジのことだ、本当に大事なことは隠しいるはずだ。まぁそんなのを気にしても仕方がない、どうせ何がこようとあまり障害にはならないだろう。
「さっさと帰りますかね」
俺は家への帰路を急ぐのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「で、出ていけるのは?」
レギオンの寄り合い所兼自宅の建物へと付きしだい戦力の確認をする。
「お前と俺、爺さんとエリナとアオ、あとは明日フェリスが帰ってくる」
「じゃあ、それでいいか。留守番したい人いる?」
誰も手をあげない。みんな自主性がないことで。
「じゃあそのメンバーで、他は?」
「みんな仕事か、行方不明」
このレギオンは本当に主体性の塊ですね。みんながみんな個人主義なため困っちゃうよ。自由なのは俺一人で十分だというのに。このレギオンは俺が適当に誘った人間ばかりなので、みんながみんな自由だ。なので基本的にこの建物に全員がほぼほぼない。実際誰もいない事の方が多いのだ。
「んじゃ明日ここに集合で、長期のクエストになりそうなので、置き手紙でもしていくか。じゃあ《悪夢》のお仕事に行きますかねぇ」
もう少しだけ短い間隔で投稿はします。でももう書き溜めが……。




