初ボスモンスター 略してはもん
「すすめども。すすめども同じ風景、これはどういうことなの?」
「逆に考えるんだ、同じ場所しか通ってないと」
「それって、同じ風景より悪いじゃない」
「そういうことですな」
「はぁ、終点はないの?」
「さぁ? ここら辺がどこだか分からないし」
というか、元居た場所すら分からない。なので分からない場所から、分からない場所に行ったので、分からなさの二乗だ。なので、どうしようもないだろう。
「それに、さっきからこのモンスターの量、どうにかならんのか?」
俺の目の前のには、また気味の悪いモンスターが居た。大きなナメクジのような魔物で、目や、耳などの器官は見当たらず、触手のようなものが、体中から延びていた。
「まぁ燃やすんですが」
俺は、またさっきまでと同じように、跡形もなく燃やすことにした。
「さっきまで平和だったのに、壁の中の世界は違うのかよ」
「さぁ、隠しダンジョンってことじゃないの?」
「隠しダンジョンねぇ、難易度が上がるのは僕としては嫌なんですけど」
「貴方は生きることが最高難易度ですものね」
「そうだねぇ、イージーモードで人生生きて行けたらいいのにねぇ」
「苦労してこその人生じゃない」
「苦労せずに生きても人生だよ」
「それもそうね、人が生きていればそれは人生ね」
そうだ、人が生きていれば人生、俺の生はなんと呼べばいいのだろう? それに生きているように見せているような生はどうなるのだろう? 俺は、なんなのだろう?
「まぁ、そんな難しいことを考えても無駄さ。人の生なんて、ほとんど意味がないんだから」
「あら、嫌な考えね」
「そんなものだよ、人生なんて」
現に俺の元の人生は意味がなかった。無意味に生き、無意味に死んだ。それは変えようのない事実だ。人間とは元来、無生産な生き物なんだよ。
「しかし、どこまで進めばいいのやら」
飲料水などは、俺の水魔法でどうにかなるが、食糧などはどうしようもない。俺も多少は持ってはいるが、そんな長期間入れるほどではない、精々一食が限度だろう。もう四、五時間ぐらい歩いた、しかしなんの終わりの兆しも見えない。
中ボスとか出てきてくれれば、話は別なんだけどな。そうすれば半分ぐらいまで来たと分かるのに、なんて不親切なダンジョンだ。
というか、普通の人間なら魔物の強さとかで、ダンジョンの深さとか分かるのかもしれないが、俺の場合、全部がワンパンで終わってしまう。故に強さとか全く分からん。あーあ、ダンジョンから一瞬で出る魔法があればいいのに、リ○ミトとか。
「ねぇねぇ、アオさん」
「なんだい、アルトさんや?」
「少しは戦おうと思わないのかい?」
さっきから戦うのは俺だけで、いつもアオは、あくびをするか、眠そうにするかのどちらかだ。というか、もう半分寝ているようなものだ。
「あなたは、騎士が戦っているのを、主が邪魔ををしていいと思うの?」
ふーむ、そりゃあ騎士にもプライドがある。守るべき主に戦われては、騎士としても立つ瀬が立たないだろう。まぁ、今回とはなんの関係もないんですけどね。
「そういうことよ」
「楽したいだけですね」
「ええ、そうよ」
すがすがしいほどの答えが返ってきた。というか、お前の場合魔機を使っての魔法なんだから、そんなに負担はないだろう。精々イメージして、魔力を流すだけだ。それがめんどくさいなど、そんなの生きてること自体めんどくさいだろう。
「まぁ、私もその気になればできるのよ? まだその時じゃないだけ」
「そうだねぇ、明日から本気を出します的な?」
「明日はまだ無理ね」
「じゃあいつなんだよ?」
「来世?」
「前世からやり直しなさい」
俺は、そんな会話をしながらも、魔物を燃やしていく。戦闘描写をしないだけで、ちゃんと戦っているのですよ? まぁ、描写しても燃やすの一言で終わりそうだけど。
しかし、そろそろめんどくさくなってくるよ? もう土魔法で、このダンジョンごとぶっ壊してやろうかな? 後の事なんてどうでもいいよね、今が良ければよいのです。
「あなた、何か厄介なこと考えてない?」
「いいえ、このダンジョンごとぶっ壊そうかなぁっと」
そうすれば、アオも亡き者にできるし、このめんどくさい状況も打破できる。一石二鳥じゃないか。
「街級の魔法使いはぶっ飛んでるわね」
「ぶっ飛んでるやつが街級になるんだよ」
「まぁそうね、でもやめた方がいいかもしれないわよ? あなたのお父さんもまだダンジョンに居るかもしれないし」
うーん、俺がいきなり消えて、あっちの方は大混乱かもしれない。さすがに見捨てたりはしないと思うけど、どうなんだろう? そのまま探していたりしてくれてるのだろうか?
「まぁ、死んだら死んだで」
「あなたって本当に人間の屑ね」
「おいおい、俺はそんなこと言われてもめげないんだぜ?」
「ダメな方に前向きなのね」
まぁ、それは冗談だとして、何かいい方法を考えなくてはなぁ。穴でもあけるか? でもそんなことしたらダンジョン自体が崩落しそうだしなぁ。
こんな最初の方のダンジョンなど、俺TUEEE状態で攻略したいんだけどなぁ。
「今悩んでも仕方ないか、さっさと前に進もう」
「そうね、こんな空間に長くいるのは、勘弁願いたいものね」
まぁ文句を言ってても仕方ない。さっさと前に進むとしよう。
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「ここは明らかにそういう部屋だよなぁ」
通路だけだったこのダンジョンに、突然大きな扉が現れる。その扉は、おかしな魔力を放っており、そこには謎の術式が描かれていた。
「ええ、明らかに主の部屋でしょうね」
「だよねぇ、セーブポイントとかねぇの?」
「何を言ってるか分からないけど、ないんじゃない?」
おいおい、このボスが初見殺しだったらどうするんだよ? 初めからとか昔のゲームかよ。パスワードか? パスワードなのか?
「どうするの?」
「どうするって、帰るに決まってるじゃない」
そんな危ないのはごめんだよ。なんで俺がわざわざ危険な目にあわなくちゃいけないんだよ。おかしいだろう。世の中の全員が不幸でも、俺さえ幸せであればいいものを、なんでこんな俺ばかりが貧乏くじを引かなければならないのだ? そんなのごめんだね。
「倒したら帰れるかもよ?」
「倒しても帰れないかもよ?」
「質問を質問で返してほしくないわね」
「そりゃあ申し訳ないね。でも、どうしようもなくね? ここで戦って死んだら意味ないし」
「それもそうね、じゃあどうするの?」
「遠距離で殺す? この部屋潰せば、中身も死ぬんじゃね?」
安置から攻撃したいお年頃なのです。というか、危険はあんまり冒したくないのです。
「それは、どうなの?」
「いや、ここは現実ですよ? 勝てる手段を用いないで、何が戦だ!」
「それもそうなのだけど、あなたはそういう事をするから、いつまでも主人公になれないのよ?」
「主人公になる必要なんてないしな、僕は安全に生きていたいだけさ」
「貴方は、いい死に方しないわよ」
「まぁ、そんな期待はしてないさ」
「いいわ、さっさとやりましょう」
「そうですな、じゃあちょっとだけドア開けて、その中に最大火力の魔法でもぶち込むか」
「それが一番かもしれないわね」
「そうしましょう、そうしましょう!」
「じゃあ、開けるわよ?」
「おk」
アオは、少しだけ扉を開ける。不穏な魔力が一気に溢れ出してくる。この魔力、なんて禍々しいんだ。こんなの、こんなのどうやって勝てばいいんだ? 人間に太刀打ちできない存在、それが迷宮の主、魔族なのか。
「はい、ドーン」
俺は、少し開けたドアの隙間から、日の魔法をぶち込む。これは、俺が持てる最強の魔法だ。火の威力をさらに昇華させ、太陽ぐらい(当社比)の火力を待たせた魔法だ。魔族? 迷宮の主? そんなのモーマンタイ、チートは、予想のななめ上の存在だからチートなのだ、こんなのインチキや! と言われるぐらいじゃないと、ダメなのさ。
「本当にえげつない性格してるわね」
「やるときにやる、それが僕ですから」
やるときはやる男なのです。やらない時は全くやらないがな。
ものすごい熱気が、扉から少し漏れてきている。これは勝ったわ、完全に勝ったわ。
「さすがにやったか」
「なんかそのセリフダメな気がするのだけど」
「あ、やったかはダメな台詞か」
その瞬間、扉がものすごい勢いでぶっ壊れ、何かがものすごい勢いで、飛び出してきた。
「これは不味いね」
「ええ、不味いわね」
「とりあえず部屋に入ろう、こんな狭い通路で戦うのはナンセンスだ」
「そうね、ここよりかはましだと思うわよ」
どうして、俺は間違った選択しかできないのだろうか。俺の人生間違いだらけだ、間違いすぎて逆に正しい気がしてきた。いや、逆に考えるんだ、戦っちゃってもいいんだ……と。無理だなぁ、無理があるな。
俺たちは、ぶっ壊れた扉をまたぎ、中へと入る。扉の中には、広大な空間が広がっており、壁には無数の巨大な穴が開いていた。
「これは、穴の中にいるような生物は確定として、なんだと思う?」
「私は、なんか虫みたいなものだと思うわ」
ふむ、それはあるかもな、壁に吸い込まれてから出てきた魔物は、虫のようなものが多かったからなぁ。主がその虫であることもあり得ない話ではない。
「貴方は?」
「うーん、僕は」
その時、俺たちが入ってきた扉跡から、変なものが顔を出す。
それは、なんの突起や器官もついていなく、つるっとした、触手のようなものだった。しかし、そのでかさは半端ではなく、その先の方だけでも、大の大人の倍以上はあるかのようなでかさだった。
「ミミズだなぁ」
「あら、後出しはずるくない?」
「僕が言おうとしたタイミングで出てきたあいつが悪い」
「まぁ、ルールを定めなかったし、しょうがないわね」
扉がついていた壁を破壊しながら部屋の中へと侵入してくる。物凄い轟音と共に、その魔族の全貌が露わになる。全長は何十メートルもあろうかというほどの大きさだ。全体が、うろこのような固い何かにおおわれていて、つるっとしていたのは、頭だけだったようだ。うねうねと動いており、さっきの俺の魔法のせいで、ところどころ煤けていた。
「あちゃー、ノーダメージ?」
「逆に怒ってるわね」
「謝ったら許してもらえるかな?」
「言葉通じるの?」
「まぁ、無理か」
そうして。俺たちは、その巨大な迷宮の主と対峙することになったのだった。
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「おい、アルトはどうしたんだ?」
暗くジメジメした洞窟の中、迷宮を探検しに来た、パーティに不穏な空気が流れる。
「いや、俺は見てないぞ」
「おい、誰か俺の息子を見なかったか?」
村人たちに問いかける。魔物の気配はない、ということは勝手にどっかに行ったという事か?
「分からねぇ、さっきまであのお嬢ちゃんと一緒にそこで話してたんだが」
探してみるとアオの姿もない。どういう事だ? いくらなんでも、どこかに行ったのであれば、俺が気づかないはずはない。という事は、あいつが自分の意思で、気配を消してどこかに行ったか、罠にでもかかったという事か?
「しかし、こんな危険度の低いダンジョンに、転移系の罠? そんなのあり得ない」
転移系は、ダンジョンに入った際、最も警戒しなければいけない罠だ。その罠に触れると、触れたものをランダムに、迷宮内のどこかに吹っ飛ばす。これはB級以上のダンジョンに見られる罠で、B級ともなると、一人になった瞬間、そのものには死以外あり得ない。
「ああ、ここはどう見積もってもダンジョンの危険性はG級、最低と言っても過言じゃない」
出てくる魔物は、最低レベルのものだ。スライムや、ただの生物に魔力が流れ込んで、魔物化したようなもんだらけだ。
「この異常による弊害か?」
「少し調べてみようアルバ、何かおかしなことでも起こってるのかもしれないし」
「ああ、こんなに同時期に、おかしなことが起こるとは、世界でなにか起きているのか?」
ああ、あの息子はどうしてこんなにめんどくさいことばかりに巻き込まれるのだろう? そういう運命にでもいるとでもいうのだろうか?
「クソッ、無事でいてくれよ」




