プロローグ
俺は今絶望の淵に居る。淵に居るだけマシと言われればそこまでなのかもしれないが、まぁ俺の人生最大のピンチと言っても過言ではないだろう。え? そのピンチはなんなのかだって? ああ、そんなに聞きたいのかい? そうかじゃあ教えてあげよう。トラックに轢かれたのだ。
おいおい、そんなにあわてるなって。まだ慌てるような時間じゃない。まだ死んだとは限らないじゃないか。まぁ俺が最後に聞いたのは、俺の頭蓋骨が砕け、脳みそがアスファルトに叩きつけられる様な音だったが。まだいけるような気がする。うん、やっぱ無理か。
さてこんなことを言っているのが誰だか気になるだろう。いきなりトラックに轢かれたなんて言われも、誰も感情移入ができないだろう。要するにここからは回想だ。まぁ回想は負けフラグとか言われるが、死んでいるので何も問題はないな。いや問題だらけか。
俺は今年で三十になる男だ。人と少し違うと言えば、無職であることと、頭のねじが二、三本外れてしまっているという事か。別にそれ以外は普通の人間だ。まぁ頭のネジが外れている人間が普通かと言われればそれはおかしいと言わざる負えないが、俺は普通の人間だと思っているので、普通なのだ。自分の意見を持つことは大事だと先生にも言われたので、正しいんだと思うよ。
というわけでそんな普通の人間の俺が、なぜトラックに轢かれなくちゃいけないのかというと、それは小さなころにまで戻らなくちゃいけなくなる。
俺は子供のころから少しおかしかった。言動に一貫性はないし、行動は不可解。俺自身そんなおかしなことをやっていた覚えはないので、多分周りの見る目がなかったのだろう。まぁそんなこんなで、俺は幼少期を過ごすことになる。
別に俺が育ったのは普通の家庭だ。ごく普通の中流階級のお家なのだ。だから別に俺が小さいころ虐待を受けていたとか、何かものすごい理由があるとかそんな理由ではない。まぁそんな理由でもあったら俺はもう少しまともで居られたのかもしれないが。
要するに、俺は小さいころから少し異質だったのだ。まぁ厨二病乙と言われてしまえばそれまでなのかもしれないけどな。しかし、多分俺も異質だと感じていたし、周りはもっと感じていただろう。故に俺の周りに友達などという物体は存在しなかった。
別に俺もそんなものを欲しいとは思ってなかったし、周りも俺なんかと友達になろうという人間は居なかった。というより、俺自身会話が普通の人間と成立するとも思ってなかったし。最近ではそんなことはないが、昔の俺は人に合わせるということが何よりも苦手だった。
そのうち自然に学校に行くことが無くなって行った。最後に行ったのは高校生だったかな。まぁそんなことはどうでもいいのだが。今重要なのは、俺がただの引きこもりだったという事だ。
ここまで語ったが、まぁ読み返してみても内容がないな。人間の人生なんてそんなものさ、と言われてしまえばその通りなのかもしれないが、俺の場合はこんな数十行も行かない、どうでもいい人生だった。良かった俺が自伝を書けなんて言われなくて。
そんな引きこもりのプロみたいな人間がなぜトラックにひかれることになったのかというと、要するに家から追い出されてしまったのだ。先述したとおり家は中流階級、三十にもなれば親ももう年だ。俺を養うのもつらくなったのだろう。俺は家を追い出され、途方に暮れていたところにトラックと運命的な出会いを果たすというわけだ。クソッ美少女ならどんだけよかったことか。それが俺を養えるほどに金持ちならなおよしだ。
あー、何がいけなかったんだ? アニメやパソコンにはまったことか? それとも俺が人間モドキみたいな奴だったからか? 後者だった場合俺は生まれない方が良かったということになるな。前者だった場合、俺はただの屑となる。あれ? どっちも駄目じゃね?
まぁ生きていた頃のことを考えても無駄か、死んでしまったのだし。今思えばかなりもったいない生き方だと思う。楽ではあったが、何もない人生だった。仏教の観念で言えば輪廻転生をするのだ。俺が次に生まれ変わったら、もう少しましな生き方をしようと思う。まぁ俺は仏教徒ではないので、関係ないんだけどな。
しかし、死んだあとはどうなるのだろう? 天国とか地獄に行くのだろうか? あるいは無になるという見解もあるな。多分俺は地獄だろうな、俺の人生を一言でいえば恥の多い生涯を送って来ましただからな。あれ? これだけ聞くとなんか素晴らしいエピソードでもある感じがする。まぁ俺のはなんの物語性もない人生だけどな。
輪廻転生できたら頑張って生きる。地獄に行ったらどうしようか。とりあえず閻魔大王に挨拶する際の文句でも考えておこうか。いきなりあって緊張でもしたら大変だしな。やはり受けを狙った方がいいのか? それとも真面目か? いきなり滑って鬼たちの印象を悪くしたらどうしよう? だったら真面目な方がいいか? でも真面目に言ってつまらないやつと思われるのもなんか癪だな。しっかし、人間は嫌な生き物だな。生きているときは楽になるための事ばかり考えて、死んで自由になったとたんに死んだあとの事を考える。人間とは悩み続ける生き物なのかもしれないな。うん、なんか哲学者になった気分だ。ちっ、職業哲学者って書いておけばよかったか。まぁ死んじまったら見得なんてもんはなんの意味もないんだけどな。
さて、そろそろそろそろ駄文をただ流し続ける無駄な作業はやめよう。素直に死んだ方がいいかもしれない。閻魔大王様も俺のことを待っているのかもしれないしな。あ、忘れてた。俺が死んだときのダイジェストを流して俺の人生の幕を閉じるとしよう。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「あー遅刻、遅刻」
俺は道を走っていた。俺が三十歳という事と、無職だということを除けば、よくある風景である。というかなんで俺は遅刻、遅刻だなんて言ってるのだろうか。遅刻する場所なんてないのにね。自分で言ってて悲しくなるぜ。
俺は曲がり角を全力曲がった。パンを加えた美少女とぶつかり、めぐりめく愛の物語が三十歳から始まるはずだった。
しかしそこに居たのは、美少女でも、食パンでもなく、トラックだった。
「うわー、めぐるめく愛のす」
俺はその瞬間トラックに轢かれましたとさ。全身の骨が砕けるような感覚に陥り、トラックのタイヤに頭を踏まれ、アスファルトとタイヤにサンドイッチされてしまった。俺の頭からは脳みそが零れ落ち、道路に脳みそをぶちまける。その後、後輪で食パンにバターを塗りつけるように、俺の脳みそがアスファルトに塗りつけられる。こうして俺の人生は終了した。
とりあえず一週間に一回ほどの更新を予定しています。




