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act4 障害1:宇佐美琉依

散々俺を振り回した彼女は、翌朝すっかり記憶をなくしており(あれだけ飲んでいたから仕方ないか)、自分だけさっさと逃げてしまった。一人残された俺は、彼女が置いていった忘れ物を手に……



 



 俺が思いついた二つの意地悪のうち一つは、今朝の事で多分落ち込んでいるであろう彼女の目の前に現れ、忘れ物(=パンスト)を届ける事。こうする事で、今度は俺の事を忘れる事が出来ないだろうから。

 追い討ちを掛けるような残酷な事だと思うけれど、これは強引で身勝手な彼女へのちょっとした仕返し。あとホテルの宿泊代も含めて……(どうして俺が支払わないといけないのか)

 案の定、彼女は再び現れた俺の顔を見るなり、みるみる表情を変えていった。少し満足気にその場を去って行った俺はその時、その日の夜に再び彼女と酒を交わした挙句振り回される事なんて思いもしなかった。


 しかし、その日は前日と違って彼女を迎えに“あの男”がやって来た。

 宇佐美琉依、ナオトさんの弟で昼間大学で彼女と一緒にいた男でもある。昨夜は気分が悪いと、店に現れなかった彼が血相を変えてやって来て酔いつぶれた彼女の頭に優しく触れた途端、

 「琉依ぃ……」

 彼女は安心した顔を見せ、彼に抱きつくとそのまま眠りについてしまった。彼はそんな彼女を優しく抱き締めていた。

 「悪かったな、兄貴。それと、こちらは?」

 「あぁ、常連の浅井尚弥君。お前らと同じ大学だぞ。ちなみに、昨夜も酔いつぶれたなっちゃんの被害にあいました」

 ナオトさんがそう答えると、俺は彼に軽く頭を下げる。

 「宇佐美琉依です。夏海とは幼馴染みで、保護者代わりです。度々ご迷惑をお掛けして本当に申し訳ございません」

 彼もまた軽く頭を下げ、しっかりとした口調で詫びてきた。しかし、そんな言葉とは裏腹にその時の彼の表情は俺に対して敵意を感じさせるものだった。

 何故そのような表情をされるのかと思っていた時、彼はナオトさんから彼女の荷物を受け取ると軽々と彼女を抱き上げてそのまま店を後にした。

 「昨日といい、今夜といい本当にごめんね。今夜はどんどん飲んじゃって。俺のおごりだから」

 ナオトさんはそう言うと、俺に酒を差し出した。俺はそれを一気に飲み干すと、訳のわからない彼の敵意に苛立ちを覚え始めていた。

 昼間に大学で二人が一緒にいたり、更にこうして迎えに来たと思えば先程の敵意を露わにした顔……ただの保護者代わりとは思えない。もしかして、彼は彼女の事……。


 だが、俺もまた強引で身勝手な彼女に少しずつ興味を抱き始めていた。ただ引っ張り回すだけしかなかった彼女の行動に、少しだが羨ましいと思っていた。素直に感情をぶつけられる彼女と、何も興味がないつまらない自分を比べてしまう。彼女を見ていると、自分も何か変われたらと思うようになった。


 恋心では無かったけれど彼女に興味を抱いた俺は、やはり気になっていた存在=宇佐美琉依に彼女との関係を聞いたりもした。ところが、彼の口からは何一つ自分が知りたかった答えは返ってこなかった。むしろ俺の方が、彼に弱みを握られた感じがした。

 しかし何も答えない彼を見て、俺はやはり彼は彼女の事が好きなのだと確信する事が出来た。


 「初めて興味を持った相手の後ろには宇佐美琉依がいるなんて……手強いなぁ」

 思わず弱気になってしまう。しかし、俺を阻む障害はそれだけではなかった。



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