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act19 久しぶりに見た笑顔



  あくる日、午後からの講義だった俺を待ち受けていたのは奇妙な笑みを見せたメンバーだった。その笑みの意味を理解できない俺はただ何だ? としか言えなかったけれど、次の彼らの行動でそれは打ち消された。


  「俺、紘佳さんの事好きになっちゃった」

  「私も好きです、尚弥さんの事!」


  ――――!!


  一ノ瀬と東條のやり取りに思わず顔面蒼白になった俺に、彼らは再び怪しげな笑みを見せていた。何故、どうして彼らが知っているんだ? 紘佳が言う訳ないし。

  「オホホホッ! 尚弥クン、愛の告白をする時は周りをよく確認してからするものよ!」

  東條は得意気にそう言うと、倉田にねぇっと言っていた。倉田も笑顔を見せながら頷くところを見ると、どうやらあの場面をこの二人に見られていたらしい。それを東條が昨夜のうちに一ノ瀬達に言いまわった訳だな、きっと。

  「はい、忘れ物よ。これを届けようと思ったのに、いい雰囲気だからそのまま帰っちゃったわよ」

  そう言って東條は俺に携帯を差し出してきた。いろいろあって気分が浮かれていた俺は、昨日から今朝にかけて携帯が無い事に気付きもしなかった。

  「仕方がないわよねぇ、浮かれポンチになっていたんだから」

  そう言ってにやけ顔を見せる東條に何も言えずにいた俺は、その後講義なんかお構いなしとメンバーからいろいろ尋問を受けたのは言うまでも無い。そして、改めてここに宇佐美がいなくて本当に本当によかったと痛感した。



  〜♪

  それから数時間後、やっとメンバーから解放して貰った俺は携帯の着信音に気付いてディスプレイを確認するとそこには“紘佳さん”の文字が出ていた。

  “昨日は本当に楽しかったです。そして、尚弥さんからの嬉しい言葉は思い出すだけで嬉しくてまだドキドキしています。今度は二人で出かけましょうね”

  そう送られたメールだったが、まだ何か続きがあるみたいでそのままスクロールさせていくと

  “梓ちゃんから、携帯を忘れたと聞いていたので今日メールをしました”

  く、倉田〜っ。他に何か余計な事言ってないだろうな、そう心配になってきた。こんな尋問を受けるのは俺一人で十分ですよ。そして、へこみながらも俺は彼女に返事のメールを打ち始めた。


  そして、俺は家に帰ると部屋にあるノートパソコンを開きレポートを作成しようとした時、“メール一件受信”の文字が見えたのでとりあえず先にその内容を確認したが、そこに書かれていた送信者の名前は

  「宇佐美……」

  俺はひと月ほど前に彼にメールを送った。彼女は一切の連絡を宇佐美から禁止されていたが、俺は何も言われていなかったのでただ日常的な内容を送っただけなのだがその時は彼から返事は送られなかった。それが今になってこうして返事がくるなんて……。まさか、東條か一ノ瀬が紘佳の事を言ったのではないだろうなと寒気がしてきた。そして恐る恐る内容を開いた。


  “尚弥、元気?


  メールくれたのに、返事出来なくてごめんね。あの時はやっぱりまだ色々あって何も出来ませんでしたが、今はこっちで両親と友人に支えてもらいながら何とか頑張っている毎日です。

  法学部への編入おめでと〜! やっぱり君は努力家なんだと感心しました。夢である弁護士になれるようこれからも頑張って!

  俺も早く何かを見つけて、それに向かって頑張るように努めます! だって、留学ってみんなに嘘ついちゃったからね〜、何かを学ばないとそっちに帰れないよ。

  とりあえず、今の状況を一枚だけ画像添付します! もちろんこれは夏海には見せないでね。

  それじゃあ、またメールしま〜す!!


       琉依”


  そして、添付されていた画像を開くと、そこには蒼い目をした金髪の男性と一緒に写っている久しぶりに見た彼の笑顔があった。そんな彼の様子を見て、何となくホッと安心できた。って、別に俺は彼の保護者というわけでは無いのに。でも、まぁメールの内容とこの画像を見ると元気そうだし、あと紘佳の事はまだ伝わっていないみたいだし良かった良かった。


  これで心配していた事は何も無くなった。後は自分の事だけ、弁護士になる事が俺がするべき事。そして、俺が弁護士に無事なることが出来たら、今度は俺が彼を驚かせてやろう。


  “待ってろよ! 宇佐美”


  そう心の中で呟きながら、レポートの作成を始めた……



 ここまで読んで下さり本当にありがとうございます! 次で尚弥編完結になります! この最終回では、シリーズ一作目で琉依の送別会の時に尚弥が琉依に耳打ちした内容が明かされます。どんな内容か楽しみにして頂けると嬉しいです!

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