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act1 操られている人形


 世間の流行など興味が無い。耳障りな音楽もテレビも興味など無い。面倒な事は嫌いだった……


 彼女に出会うまでは……





 昔から何も興味が無く、時間があればいつもテキストを読んでばかりいた。両親も成績さえ悪くなければと、そんな俺を放っていた。と言うよりも、関心が無かった。

 ある時、珍しく俺に声を掛けてきたと思えば、用件は大学受験に関しての事だった。


 「知り合いの議員がお前の志望大学を尋ねてきたので、聖南学院と答えておいた」

 「せ、聖南学院!?」

 聖南学院大学の名は、数日前にも聞いていた。高校の担任や進路指導の教師から受験を薦められたから……。

 この大学は、様々な学部が一つの敷地内にあり優秀な大学で有名だ。毎年この大学から多種多様な人材を様々な企業に送り出している。俺の周りでも聖南学院へ行きたいという人物はたくさんいるが、俺はこの大学に対しても全く興味が無かった。

 「担任から連絡があった。断ったそうだが、お前は聖南を受験するのだ。分かっているな?」

 「なっ、俺は聖南学院なんかに興味なんか……」


 バンッ!


 「尚弥、私の顔に泥を塗る様な真似は許さないからな」

 俺の言葉をテーブルを叩く事で遮った父は、そう吐き捨てるとそのまま自室へ戻って行った。

 「いつも俺に話し掛けるとしたら、勉強の事ばかり……いや、自分の事ばかりか」

 俺の父は検事をしていた。常に自分が正しいと思っている妙な正義感を持った父は、仕事場だけではなく家庭内でもその正義を押し付けていた。父は正しい……息子である俺はそれに従っていればいいのだと、母もまた俺にそれを押し付けていた。そんな父に対して俺は自分の意見を言う事は、年を重ねていくごとに少なくなっていった。


 父が自室に入った音を確認すると、テーブルに足を乱暴に置く。母はそんな俺の姿を見て見ぬフリをしていた。やっぱり……、いつもそうだ。自分たちの話を押し付けた後は、もう俺に関心を無くしている。どれだけマナーが悪くても、他人が見てなければそれもまた気にする事ではなくなるのだから……。


 様々な抵抗をした結果、俺は聖南学院を受験する事になった。医学部と理工学部を蹴って文学部を選んだ俺を父が許したのは、入試の成績がトップであったからだ。それだけの事で父がとても喜んだ理由を知ったのは、それから1年半後の事だった。

 だが、息子の事をそういう事でしか周りに自慢しない父に嫌気がさし、俺は学長や文学部・医学部・理工学部それぞれの部長に自分の成績の事は他言しないように懇願した。


 


 けれど、そんな嫌々入学した大学で俺は彼女と出会った。


 

 そして、操り人形の恋が咲こうとしていた……






 こんばんは、山口維音です。私の作品を読んで下さり本当にありがとうございます。前々作“これも恋の始まり?”で尚弥を支持して下さり、また尚弥のお話をリクエストして頂いたので、これまでの感謝の意も込めまして尚弥メインの話を順番を早めにして出させていただきました。夏海視点でのお話と照らし合わせて読んでいただけると嬉しいです。どうぞよろしくお願い致します。

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