終点
電車の中だった。
気づいたときには、私は列に並んでいた。
前にも、後ろにも、人。
誰一人として顔を上げない。
声もない。
ただ、進む。
一歩。
また一歩。
一定の間隔で、機械のように。
次の車両に入ったときだった。
音が聞こえた。
ぐちゃ、ぐちゃ、と。
何かを潰すような、生々しい音。
それに混じるように、声がした。
「つぶして、こねて、やいて、できあがり」
歌だった。
子どもの遊び歌のような、軽い調子。
内容とはあまりにも釣り合わない。
列は止まらない。
誰も、何も言わない。
おかしい。
そう思った。
思ったはずなのに、
私の体も、止まらない。
足が勝手に前へ出る。
腕も、指も、私のものじゃないみたいだった。
次の車両。
匂いがした。
鉄と、脂と、焦げた何か。
鼻の奥にまとわりつくような、嫌な匂い。
吐き気が込み上げる。
でも、吐くこともできない。
ただ、進む。
前の人の背中だけを見て。
次の車両に入った瞬間。
それが見えた。
巨大な鉄の塊。
いくつも並んだ機械。
人が、押し込まれていく。
一人。
また一人。
服を脱がされ、
生まれたままの姿で。
そして、
ぐちゃ、と音がして、消える。
「つぎはミンチ、つぎはプレス」
歌が近い。
黒い。
形のわからない何か。
あれが、歌っている。
全身が警告していた。
ここにいてはいけない。
これは、夢だ。
夢だ夢だ夢だ。
目を覚ませ。
必死にそう念じる。
だが、目は閉じられない。
体も動かない。
逃げられない。
見続けるしかない。
前の人が消えた。
次は、その前の人。
そして、また一人。
列は確実に、減っていく。
気づけば、私の手が動いていた。
服に触れる。
やめろ。
やめろ。
やめろ。
そう思っているのに、
指は止まらない。
ボタンを外す。
布を剥がす。
肌が空気に触れる。
寒い。
怖い。
それでも、体は前へ進む。
あと三人。
あと二人。
あと一人。
前の人が、消えた。
足が、動く。
次は、
私。
――
そこで、目が覚めた。
息が荒かった。
汗が、首筋を伝っていた。
夢だ。
ただの夢だ。
そう思ったときだった。
ふと、違和感に気づく。
布団の中。
私は、
服を脱いでいた。
いやぁ、猿夢だよねこれ、マジで怖かったです!
それから特に夢に進展はなかったので、なかなか貴重な体験が出来たかなと思います!
よければ評価頂けると幸いです!
よろしくお願い致します!




