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救うべき想い 9

「そんな……」


 自分自身が余命宣告を受けたような絶望が、身体中の毛穴から噴き出したような気がした。


“やっぱり、私は死んじゃったんですね。ええと……ごめんなさい”


「ああ、これは失礼を。水沢と申します。この静寂堂を経営しています」


 水沢さんの言葉に相槌を打つも、初対面であるため誰何(すいか)を躊躇う裕子へ、水沢さんは丁寧なお辞儀をしながら簡単な自己紹介をする。


“水沢さん、ですか。はじめまして、ヒナの友達の蟻塚裕子です……って、あのぉ、ひょっとしてヒナのバイト先って、ここですか?”


「ええ、そうですよ。うちで仕事のサポートをしてもらっています。優秀で真面目で、大助かりです」


“へぇ……もっとこじゃれた場所で働いてるのかと思ったら、何だかすごい真面目な所ですね。前にドラマで観た法律事務所みたい”


「ははは、そんなたいそれた職業でもありませんけどね」


 こんな状況で和むような会話をする二人を交互に見つめ、わたしは


「いやあの、ちょっと待ってください!」


 不安定になりそうな情緒をどうにか抑え込みながら、二人の間に自らの声を割り込ませた。


「そんな、世間話に花咲かせてる場合じゃないと思いますけど!? 裕子はもっと危機感持とうよ! 水沢さんも、どうしてそんな余裕なんですか!」


“いや、だって死んじゃったのは仕方ないしさぁ。生き返れるものなら生き返りたいけど、無理だよ。言葉じゃうまく表現できないけど、直感みたいなので悟っちゃうって言うのかな。あ、もう自分は駄目なんだ、終わっちゃったんだってわかるんだよね。ヒナもいずれ、寿命がきたときに体験する感覚だと思うよ。これは実際に死んじゃった人にしかわからないね、うん”


「軽いよ‼ ノリが‼ 死んじゃったってどういうことかわかってる!? もう生きれないんだよ? 学校にも行けないし、普通に人と話をすることもできない、好きな物も触れない、食べ物も飲み物も口にできない。全部、終わっちゃったってことなんだよ⁉」


 楽しいことも、思い描いていたであろう将来の夢や目標も、全てが無になる。

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