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救うべき想い 8

 裕子の声は、いつもと変わらない快活な響きがあるが、ずっと一緒にいたわたしには、無理をして普通に振る舞おうとしていることが嫌でもわかってしまい、悲しさが込み上げそうになる。


「――昔から、亡き人のことを考えたり同情したり、または恐い話をしたりすると霊が寄ってくる……なんてよく言われているけれど、裕子さんもそれと同じ原理で引き寄せられたんだろうね」


「え?」


 裕子の語りに割り込むかたちで告げられた水沢さんの声に、わたしは反射的に振り返る。


「霊に対して恐い、可哀想、もう一度会いたい。そういった気持ちは、本当に死者を呼び寄せる効果がある。ましてや、それが特定の人物をピンポイントに想えば、そして波長が合ったり慣れ親しんだ相手であればあるほどにその効果は大きくなる。瓜時くんが長い付き合いであり親友でもある蟻塚さんを強く想えば、それに引き寄せられるのは当然と言えるかもしれない」


「わたしが裕子のことを考えたから? ……あの、水沢さん。裕子はこれからどうなるんでしょうか? その、死んじゃったって。まだ何か助かる可能性とか、本人の勘違いで実はまだギリギリ生きてますみたいな――ほら、幽体離脱ってあるじゃないですか。ああいう体験をしているだけってことは、あり得ないんですか?」


 目の前にいる裕子が、本当に霊体としてここにいることは受け入れる。


 だからひとまず、裕子と水沢さんの語ってくれた内容は理解できた。


 できたからこそ、わたしは受け入れたくない現実へ正面からぶつかる羽目になってしまった。


 ここにいる裕子は、幽霊。


 事故に遭ったという本人の身体は今も病院にあって、恐らくはまだ手術を受けているのかもしれない。


 このまま魂と肉体が一つに戻れなければ、それはすなわち裕子の死が百パーセント確定してしまうということ。


 だからもしもまだ裕子の肉体が完全にその機能を停止していないのであれば、命を繋げられる希望が残されているのではないのか。


「残念だけど、それはもう無理そうだ」


 一縷の望みに縋る気持ちで口にした問いかけは、あまりにもあっさりと否定されてしまった。


「一時的な幽体離脱とかは、確かに事例が多いけどね。彼女、蟻塚さんの場合はそういう次元の話じゃない。戻るべき肉体が、完全に壊れてしまっている状態であり、もう魂が収まる余地はなくなっている。つまり、今の蟻塚さんは風音さんのときみたいな生霊とは、全く別の存在である死霊だ。死霊になれば、それはもう生還は不可能になる」

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