救うべき想い 6
「……え?」
見慣れた制服を着た、見慣れた少女。
その想定外の姿に、わたしは呆然としながら間の抜けた声を漏らしてしまう。
「瓜時くんが友人の話をし始めてから割とすぐに、来所してたよ。瓜時くんの話をジッと聞いてたから、ピンときたんだよ。彼女が、今教えてくれた友人の蟻塚裕子さん、で良いのかな?」
水沢さんの問いかけに声を出すこともできず、わたしはこくこくと首を縦に振って応じる。
入口に立ち、何かを言いたそうな顔でジッとわたしを見つめているのは、親友である蟻塚裕子、本人だった。
だけど、一目見た瞬間に、彼女が普通ではないことにも気づいてしまい、そのことが余計にわたしを呆然とさせてしまっていた。
裕子が立っている場所は、静寂堂の入口。
閉められたドアの、すぐ前に立っているのだが、そのドアが――裕子の身体に隠れて全体が見えないはずの入口のドアが、裕子の透けた身体越しにはっきりと見えてしまっている。
例えるなら、裕子の立体映像でも見せられているような、そんな不思議な光景だった。
「どうなっているんですか、これ……」
水沢さんの仕掛けた、質の悪い悪戯。そうであったら嬉しいのにと、現実逃避をしようとしている脳が告げるが、そんなことを水沢さんがするはずはない。
であれば、ここに視えている裕子は――。
「瓜時くんが、彼女の話をした……正確には、彼女のことを想ったことがきっかけとなって、ここに現れたんだろうね」
わたしの疑問に答えてくれる水沢さんの声が、近くにいるのに何故か遠い場所から聞こえるような、不思議な錯覚を味わう。
本能が、少しずつ状況の理解を始めている。
理性が、それを抑え込もうと、否定しようと抗っている。
「ね、ねぇ。二人とも何の話をしているの? ひょっとして、部屋の中に幽霊がいたりしてる?」
何も視えていないらしい沙彩さんは、どうリアクションをすれば良いのか困ったような、ぎこちない笑みを浮かべてわたしと水沢さんを交互に見つめてくる。
そんな沙彩さんの告げた幽霊という単語に、わたしは心臓がギュッと縮まるような感覚に襲われる。
そんなことはあり得ないでほしいと思う感情が、今にも溢れそうになる。




