救うべき想い 1
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六月二十日、火曜日。
この日、わたしは珍しく、目覚ましより十五分も早く目を覚ました。
眠気が尾を引く瞼を擦りながらのそりと上体を起こし、カーテンが閉められた窓の方へ顔を向ける。
カーテンの隙間から差し込む日差しが鈍い。
昨夜寝る前にチェックした天気予報の通り、どうやら外は曇りの様だ。
雨や曇りより、晴れの方が気分良く目覚められる身としては、少しばかり憂鬱になりつつベッドから下り、欠伸を噛み殺してカーテンを開いた。
一面曇天。見慣れた景色を数秒だけ眺め、わたしは無言で着替えを済ませて部屋を出た。
いつもより早く起きてきたわたしに意外そうな顔をするお母さんへ適当な返事をしながら、買ってきてあった菓子パンを朝食として食べた。
「……? 何か、今朝はやけにカラス鳴いてない?」
お母さんが用意してくれたホットミルクを一口啜って、わたしは怪訝に眉を顰めつつ窓の外を見上げる。
すぐ近くではないけれど、そう遠くもないどこかでカァカァとカラスの鳴く声が聞こえている。
それも、一羽や二羽ではなく、集団で。
まるで仲間が危険な目に遭って慌てているか、でなければ――。
――食べ物に群がって興奮しているみたい。
去年だったか、ホラー漫画で人の死体にカラスが群がって、ついばんでいるシーンを見たのを思い出し、わたしは咄嗟にそのときの記憶を振り払う。
こんな朝からホラー漫画みたいなことが起きているなんて、現実ではそうあり得ないし、仮にあり得ていたのなら、カラスよりも人間の方が大騒ぎしているはずだろう。
とは言え、あまり縁起の良い朝とは言い難い。
せっかくアカリさんの依頼を解決して一息つける気分になれたのに、水を差されたような思いを味わいながら、わたしは朝食を済ませて歯磨きへ向かう。
虫の知らせ。
後からこの朝の出来事を振り返れば、縁起の悪いカラスの鳴き声は正にそういうことだったのではないかと考えさせられることになるのだけれど、この時点のわたしにそんな発想が浮かぶわけがなく、普段通りに支度を整えたわたしは「行ってきます」と気怠い声で挨拶をして、いつもと変わらない通学路を歩きだした。




