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わたしは黄泉の光に魅せられる  作者: 雪鳴月彦
動画越しの執念
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動画越しの執念 78

 雫森エリム。


 ――それって、確か……。


 アカリさんの動画をチェック中に、偶然見つけた――と言うかよくわからない誤作動みたいな現象で表示された、あの新人ブイフェイの名前だったはず。


 動画の投稿数、その再生数とファン登録者数、全てがまだまだこれからという状態で、更新が止まっていたアカウント。


「雫森、エリム……? それが、風音さん?」


「ええ、そうですよ。ひょっとして、ご存知なんですか?」


 戸惑いながら呟いたわたしの声に、意外そうな表情でアカリさんは反応を示してくる。


「知ってると言いますか、アカリさんの動画を調べていたときに、偶然そのアカウントを見つけたんです。見つけたって言うか、気づいたらパソコン画面が雫森さんの動画ページに移動していただけなんですけど――あ、そうだ! 動画に映り込んでた、あの生霊になった風音さんの顔を見つける直前に、雫森さんの動画が表示されてたんだ! うわぁ、すごい偶然」


 動画をチェックしていたあの夜、わたしは風音さんの存在をネットとリアル――生霊ではあるけれど――両方を知らずに認識していたということになる。


「あの……どういうことですか?」


 事情がわからないアカリさんが、首を傾げながら説明を求める視線を向けてきたため、わたしはあのときの経緯をなるべく詳しく言葉へと変換する。


 仕事の役割として、アカリさんの動画を調べていたこと。夜間、足元に違和感を覚えてパソコンから顔を逸らした数秒の間に、何故か触れていないはずのパソコン画面が雫森エリムというブイフェイの動画に変わっていたこと。そして、再びアカリさんの動画へ画面を戻すと、停止した動画に風音さんの顔が――水沢さんからアカリさんがメールで送ってくれた写真を見せてもらったから、わたしでも間違いなく風音さんだと断言できる――アップで映し出されていたこと。


 これらを伝えると、アカリさんは信じられないというように目を大きくし、それからほぅっと静かに吐息を漏らした。


「……そんなことがあったんですね。さすが、心霊関係を取り扱う専門業者さん、不思議な力をお持ちなんでしょうね」


「え? いえいえ、わたしはそんな、大それたものじゃないですよ。本当に、ただの偶然だっただけでして」


 敬意を払うような面持ちでわたしを見つめてくるアカリさんへ、慌てて両手を振りながら言葉を返す。

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