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わたしは黄泉の光に魅せられる  作者: 雪鳴月彦
動画越しの執念
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動画越しの執念 76

         13


 アカリさんに対するわたしの心配が杞憂に終わることとなったのは、依頼が完了してから三日後のことだった。


 六月十九日、月曜日。


 学校が終わって静寂堂へやってきたわたしを出迎えたのは、水沢さんと沙彩さん、そしてアカリさんの三人だった。


 まさかの展開に入口で戸惑ってしまったわたしに、アカリさんは初めて会ったときと同じように元気な笑みを見せ、依頼解決のお礼を口にしてきた。


「おかげさまで、新しく編集した動画に風音の声は入らなくなりました。コメントにも、誹謗中傷はほとんどなくなりました」


 簡単な挨拶を交わし、水沢さんに促されるがまま来客用のソファに座るアカリさんと向き合うように――水沢さんと並ぶかたちで――座ったわたしへ、アカリさんは快活な口調で事の顛末を語りだした。


 風音さんからの嫌がらせはあの日を境になくなり、これまでに投稿していた動画内に入り込んでいた生霊の声も、綺麗さっぱり消失してしまったらしく、今はそのことに気がついたファンがやっぱり心霊現象じゃないのかと騒いでいる最中らしい。


 コメント欄も今は落ち着いた状態で、風音さんに便乗していたと思われる誹謗中傷が、ポツポツと書き込まれる程度にまで収まった。


 もっとも、この程度のアンチは前からいなかったわけではないそうで、そのことを踏まえれば悩みのなかった頃の状況まで改善されたと断言して良いだろうと、アカリさんは安堵を滲ませた声と笑みで教えてくれた。


「それと、お金の方はここへ来る前に振り込みを済ませましたので、確認していただければ」


 話の締めにそう言い添えて、アカリさんは目の前に置かれていたコーヒーへそっと口をつけた。


 これで、依頼に関しては本当に全て解決。


 水沢さんは無事に仕事を果たしたということになるのだろうけど、それでもやはり、わたしは大団円になったとはまだ受け取れなかった。


 どうしても、あの電話でのやり取りを終えた後の成り行きが気になってしまい、だけどそれを訊ねるのは配慮に欠ける気がして、わたしは何度もアカリさんの顔を盗み見るようにしながら、口を開けることすらできずにまごついてしまっていた。


「……これから、妹さんとはうまくやっていけそうですか?」


 そんな優柔不断なわたしの胸中を代弁してくれるかのようなタイミングで、水沢さんはさり気ない口調で問いかけを口に出した。

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