動画越しの執念 4
「わかりません! 素人なもので!」
諭すように告げてくる水沢さんへ、わたしはブンブンと大きく首を横へと振って即答を返す。
視えるだけでは勤まらないのなら、まずは勤まるよう努力をするべきだろうし、たぶん仕事というのは誰だって最初はそういうものなのではないだろうか。
働いた経験がないからイメージでしかないけれど、やらなければ覚えられない勉強と同じ理屈だろう。
アルバイト経験すらないわたしが偉そうなことを言える立場じゃないのは重々承知ではあるが、何を言われようとここで引き下がる意思はない。
「……はぁ。そもそもさ、どうしてそこまでしてうちで働きたいって思うわけ? 幽霊に興味があるタイプでもないよね?」
盛大なため息をつきながら額に手を当てた水沢さんは、沙彩さんがわたしの分と一緒に用意してくれたコーヒーを口元へ運びながら、参ったなと言いたげにそう問いを口にしてきた。
「それは……。何と言いますか、その、水沢さんへの恩返し的な気持ちがありますから。先週、よしふみの件では色々とお世話になりましたし、わたしもよしふみも助けられたことは事実なわけでして。それに、一昨日ここへ来た際にも説明しましたけど、よしふみの件をきっかけにして、わたしの霊感が覚醒しちゃったわけですよね? であれば、これも一つの縁みたいなものなんじゃないかなって思うわけですよ。どうでしょう?」
「いや、どうでしょうと言われても……。まぁ、きみの場合は幽霊が視えるようになっても、特に驚いたり取り乱したりはしないタイプみたいだから、そういう部分での耐性と言うのか、適応力があったのは幸いだったね。だけど、この間の件で俺に感謝する必要なんて一切ないよ。あれは偶然、俺が巻き込まれたかたちになってしまって、それで対処しなくちゃいけない流れになったというだけの話だし。ただの成り行きだよ」
「それでも! わたしとよしふみが救われたことには変わりがありません! そんな成り行きだから気にしないでみたいなことを言われて、あ、そうだったんですね。わかりましたー、なんてなりませんよ! わたしの気持ちが納得しませんから!」
「……何でキレ気味なの?」
つい力の込もってしまったわたしの言葉に対し、困惑した表情を浮かべる水沢さんに、ついつい乗り出してしまっていた身体を引っ込め、わたしは心を落ち着かせるためにコーヒーを啜った。
「とにかくですね、わたしは本気で水沢さんのお役に立ちたいんです。できることなら、何だってやります。ですから、わたしをここで雇ってください」