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わたしは黄泉の光に魅せられる  作者: 雪鳴月彦
動画越しの執念
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動画越しの執念 74

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「さて、これで美山アカリさんからの依頼は完了だな。スピード解決。静寂堂を継いで以来の快挙だ」


 アカリさんと繋いでいた電話を切った水沢さんは、ぐっと伸びをするとそのまま自分のデスクへ移動し椅子へ腰を下ろした。


「あの……完了って、アカリさんと妹さんの問題はどうにかしてあげないんですか? 電話の感じからして、かなり重い雰囲気になってた気がするんですが」


 アカリさんへ誹謗中傷と動画の音声について真相を話すと告げられた後、通話の最中になるべくたくさん誹謗中傷コメントへ返信をしてくれと頼まれ、ひたすらコメントを連投していたのだが、それと同時にハンズフリーで会話をしていた水沢さんとアカリさんにも、わたしは終始耳を傾けていた。


 だからこそ、最後がどうしても納得いかず、わたしはつい非難を含んだ口調で水沢さんへ意見をしてしまった。


「そうだね。きっと今頃、お互いに気まずい空気を吸っているんじゃないかな」


 アカリさん姉妹を心配するわたしを上目遣いに見て、水沢さんは軽い調子でひょいと肩を竦める動作をしてくる。


「それなら、ちゃんと最後まで助けてあげなくちゃ……」


 ちゃんとお金を払って依頼をしてきた相手に対し、あまりに投げやりと言うか不親切すぎる対応ではないのかとモヤモヤしてしまうわたしへ、スッと右手を伸ばし〝待て〟のポーズをしてから、水沢さんは「それは違うよ」と言い首を横に振った。


「瓜時くんの気持ちはわかるけどね、それは俺たちでどうこうする部分ではないよ。静寂堂の仕事内容は、霊障が絡む事案への対処であって、家庭内の人間関係にまで干渉することではない。シビアに思われてしまうかもしれないけど、ここら辺はきっちり線引きしておかないと、なぁなぁになってしまうからね。そもそもの話――」


 そこまで言って、水沢さんは一度コキコキと首を鳴らし、大きく息を吐き出した。


「姉妹喧嘩の仲裁なんて、俺には専門外だし。下手に深入りなんてしちゃったら、余計に状況が悪化しかねない」


「そうね。私たちに協力できるところまでは終わったから、ここから先は美山さん自身が向き合わなきゃいけない問題ってことね。辛いとは思うけど、こればかりは仕方がないわ」


 水沢さんの言葉を補足するように、沙彩さんが言った。


「そんな……」


 二人の言っている意味は、理解できる。


 アカリさんとわたしたちの関係は、あくまで仕事上のものでしかないと言いたいのだろう。


 だけど、謎を解明してそれによって浮上してきた問題は知りません、というのも冷たくはないだろうか。


 特にわたしの場合は、ブイフェイであるアカリさんを最初から知っていたせいで、余計に情が湧いてしまっているのかもしれないけれど。

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