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わたしは黄泉の光に魅せられる  作者: 雪鳴月彦
動画越しの執念
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動画越しの執念 73

 苦しむような声と共に落とされた妹の呻きの中から、あたしは予想もしていなかった呟きを拾い上げた。


「……一年くらい前にね。あんたの動画を観て、有名になってるのは知ってたから、これでわたしの方がもっと有名になれたら、あんたのことを越えられるんじゃないかって思って」


 独白のようにそう言ってから、風音は自虐的に鼻を鳴らして笑ってみせる。


「それなのに、いざやってみればファン登録者数は一桁。再生数だって、せいぜい十数回で酷いのはゼロ回だよ。気力なんてすぐに失くしたよ、マジで。結局、ブイフェイの活動もあんたには勝てない。足元にすら及べない……自分なりに頑張ったのに」


 ぐにゃりと風音の顔が歪み、不意に溢れた涙が頬を伝って床へと落ちる。


「…………」


 何も言えなかった。


 何か言葉をかける場面なのだろうと気持ちはざわめくが、それが慰めなのか謝罪なのか、どんな言葉をかけるべきかがわからず、あたしはただ身じろぎもできずに、涙を流す妹の姿を凝視し続けることしかできなかった。


『……ここから先は、お二人の問題だと思いますので、私からこれ以上の発言は控えさせていただきます。ただ、その上であえて一つ言わせていただくのなら、お二人の問題を解決するために一番重要な要素は、アカリさん、まずは貴女自身がこれまでの言動を振り返り、反省して改善することではないでしょうか』


「…………」


 空っぽになってしまったかのように思えてくる頭の中に、水沢さんの諭すような声が浸透していく。


 その声に何一つリアクションを返すことができずにいるうちに、


『それでは、これでひとまず依頼の件は完了ということにさせていただきます。当初にご説明しました料金に関しましては、明日から一週間程度を目処に指定の口座へ振り込んでいただけますと幸いです。では、失礼致します』


 そう一方的に話をまとめ、スマホから流れてきていた水沢さんの声の気配は、プツリと途切れてしまった。


 完全な沈黙が、室内を蹂躙し浸食していく。


 こんな状態で放置され、どんな言葉をかければ良いのか。


 あたしと同じく、空間に固定されたみたいになっている風音を、ばつの悪い思いで眺めること数十秒。


“まずは貴女自身が、これまでの言動を振り返り反省し改善することが――”


 最後に告げられた水沢さんからの指摘が、頭の中に蘇る。


 風音があたしを恨み、呪うほどまでに憎ませてしまった原因は、自分にある。


 ただただ当たり前と思っていた何気ない行動、その一つ一つが間違いだった。


「……風音」


 喉が潰れかけてでもいるかのように、声が掠れる。


 それでも、歩み寄るのはあたしの方から。


 自業自得で生み出してしまった姉妹の溝は、あたしに埋める責任がある。


 今はまだどうすればそれが成せるのか、答えは見出せる余地がないけれど。


 まずは、これほどまでに追い詰めてしまった妹へ、誠意をもって謝らなくては。


 緊張でも畏怖でもない、これまでの人生で味わったことがない重圧を胸の奥で受け止めながら、


「あたし――」


 簡単には許されるはずのない罪を背負い償うべく、あたしは詰まりそうになる喉へ力を込め、憔悴した様子で立ち尽くす風音へ謝罪の言葉を口に出した。

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