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わたしは黄泉の光に魅せられる  作者: 雪鳴月彦
動画越しの執念
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動画越しの執念 71

『そこ、なんですよ』


 戸惑いながら、どうにか返答を口にするあたしの声を遮って、水沢さんは水面に一滴の雫を落とすような静かな口調で言葉を挟んできた。


『アカリさんの言いたいことはもっともです。頑張っている人間の足を悪意で引っ張るような行為は、決して良い行いではない。ですが、今アカリさんはそれじゃあどうして自分の妹はこんな悪意を向けてくるようになったのか、ということを真摯に考えようとしましたか? 自分にデメリットとなる行為をしていたという事実だけで、短絡的に相手を責める状態に陥っているのではないでしょうか』


「それは……」


 自分の意志とは裏腹に、胸の奥がギシリと萎縮するような感覚に襲われる。


 指摘されたことを客観的になって振り返ってみれば、確かにそう受け取られてもおかしくない態度を風音へ向けていたかもしれない。


『そして、そういった風音さんへの接し方は、最近になって……つまりはアカリさんがブイフェイの活動をするようになってから始まったことでもない。もっと昔、それこそ小学生くらいの頃から、日常的に続いていたのではないでしょうか』


「……」


 まるで精神攻撃でも受けてしまったかのように、言葉が出なくなる。


 ずっと握っていた手の平から力が抜け、掴んでいた風音の腕がボトリと落ちるように離れた。


 一瞬、逃げだそうとするかと思いかけたが、風音はあたしから解放されても、その場に縫い付けられたかのように留まり、呆然としたように黄色いカーペットが敷かれた床を凝視していた。


『……全てを要約するとですね、アカリさんの動画に入り込んでいた謎の声、その正体は風音さんの生霊による霊障です。そして、動画のコメント欄に書き込まれていた誹謗中傷の数々、これも風音さんの手による嫌がらせになります。まぁ、厳密に言うのなら、風音さんのコメントに便乗した赤の他人によるコメントも、少しは紛れているようではありますが、言ってしまえばそれも風音さんの行為によって生み出されたものとは言えるでしょう』


 そこまで告げて、水沢さんは一度呼吸を整えるように話を止める。


『しかし――』


 そして、誰もが言葉を発しない時間が三秒ほど流れてから、再び語りだした水沢さんは、あたしにとって――いや、あたしたち姉妹がこれまでに積み上げてきた関係性のバランスを崩壊させる一言を、淡々とした口調で告げてきた。

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