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わたしは黄泉の光に魅せられる  作者: 雪鳴月彦
動画越しの執念
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動画越しの執念 68

 言い訳の余地は完全に断たれたなと、そう思った。


 未だに抵抗しスマホを返せと喚く風音を右手で押し返したまま、あたしは更に一件の通知を知らせてきたスマホをタップし、通知の詳細を表示させる。


 スマホは、こちらの予想を裏切ることなく、ブイフェイに利用している動画サイトへ接続された。


 映し出されたのは、あたしが投稿した最新の動画ページ。


 画面をスクロールさせコメント欄を見れば、このスマホから書き込まれた誹謗中傷の文字をすぐに見つけることができた。


 その一つ、一番最後に書き込まれたコメントに、異様な数の返信がついている。


 無言のまま、その返信一覧を表示させると――。


“この人が犯人です!”


“静寂堂の瓜時と申します! 悪い書き込みはやめましょう!”


“メリルさんが迷惑してますよ!”


 同一のアカウントから、何件ものコメントがリアルタイムに打ち込まれていた。


「……どういうこと、これ。もう言い逃れとかできないよね?」


 低い声で呻き、あたしは眼球をスライドさせ風音を睨みつける。


「全部、あんただったんだ? 人が頑張ってることに対して、散々否定的なコメント投げかけて、そんなに楽しかった?」


 鋭い視線を放ったまま、あたしが圧をかけるようにそう訊ねると、射すくめられた獲物みたいに、抵抗していた風音の力が弱まったのがわかった。


 威嚇し歪めていた顔からはその気勢が抜け落ち、逃げるように視線を逸らす風音に焦れて、あたしは掴んでいた手に更に力を込める。


「いたっ……ちょっと、やめてよ……」


 身を捩る風音は、もう逃げられないと観念したのか、身体を引くことをやめて一気にしおらしい態度へ変わる。


『風音さん。貴女がアカリさんへ誹謗中傷を繰り返していた理由は、嫉妬とそれによって生まれた憎悪があったから、ですね? アカリさんに対して、恨みと劣等感を抱えていたのではありませんか?』


 あたしたち姉妹のいざこざに隙ができたのを見逃さず、水沢さんは平坦な口調で話を続けてきた。


『どうにも貴女からは、アカリさんに対しての敵意が強く感じ取れる。それも、一時的な感情によって膨らんだものではなく、長い時間をかけて蓄積した、ドロドロとした敵意です。貴女は何故、アカリさんをそこまで憎んでいるのでしょうか?』

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