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わたしは黄泉の光に魅せられる  作者: 雪鳴月彦
動画越しの執念
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動画越しの執念 67

「――良いわけないでしょ! 人のスマホ勝手に見ようとしないでよ! 気持ち悪いなぁ!」


 犯人特定を裏付ける、決定的な証拠。


 その真偽を確かめようとするあたしの声へ噛みつくようにして反論し、風音は踵を返すと逃げるように部屋の奥へと向かい、机の上に置いていたスマホを取ると、画面を睨みつけるようにしながら何やら操作をし始めた。


「――っ! ちょっと、履歴消そうとしてるでしょ!?」


 証拠隠滅を図っていると察し、あたしも追うようにして室内へと駆けこんでいく。


「入ってこないでよ! 友達から連絡きてたから、返信してるだけじゃん!」


「だったら、それを見せてみなさいよ!」


 真っ直ぐに風音の元へと詰め寄り、両手で隠すようにしながら守るスマホを取り上げようと試みるが、なかなかうまくいかない。


「やめてよ! お母さんたち帰ってきたら、言いつけるからね!」


「別に良いよ。スマホを確認したぐらいで、怒られるとも思えないし」


 あたしたちがスマホの取り合いをしている最中に、またしても通知を告げる音が風音の手の中で鳴りだした。


 それも一度ではなく、何度も連続して鳴り続ける。


「はぁ? ちょっと、何よこれ」


『うちの従業員が、誹謗中傷されている方のコメントへ返信を連投してくれています。どうですか? そちらの方で――』


「風音‼」


 水沢さんの言葉を途中まで聞いて、あたしは突発的に叫び声を上げた。


 もはや、可能性とかいう話ではない。


 容疑者として完全にクロとなった妹を本気で睨みつけ、あたしは持ったままでいた自分のスマホを一度風音の机の上へ置くと、今度は全力で風音が手にしているスマホを奪いにかかった。


「いや……! ちょっと――あ!」


 自身のみぞおち辺りに両手を押し付けるようなかたちで、必死に抵抗していた風音から、強引にスマホを奪うことに成功すると同時に、また通知を知らせる場違いなくらい軽い音が室内に響く。


 スマホを取り返そうと腕を伸ばす風音を力尽くで押し返しながら、通知が届いたばかりの画面を覗くと、そこにはあたしにとっては見慣れたタイプのメッセージが表示されていた。


 ブイフェイ活動に利用しているサイトからの、コメントがついたことを知らせる通知。


 あたしのスマホやパソコンにも毎日入ってくるその通知が、風音のスマホ画面にも表示されている。


 それも、一件だけではなく数十件。


 ピコンという音が鳴り、さらに通知が一件追加された。


『今また一件、コメントを追加したみたいです』


 通知に追従するように告げられる、水沢さんの声。

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