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わたしは黄泉の光に魅せられる  作者: 雪鳴月彦
動画越しの執念
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動画越しの執念 65

『――承知しました』


 短いけれど、はっきりとした水沢さんの返答が、廊下に響いた。


 同時に、空気が変わったような気配が、鳥肌が立つような感覚と共に伝わってくる。


 何がどうとはうまく言葉で言い表せないが、家の中に充満していた空気の質が、瞬時に変化したような、そんな気がしたのだ。


『では、美山風音さん。改めてお話をさせてもらいますが、単刀直入に言わせていただきます。風音さん、貴女はお姉さんであるアカリさんに対し、日常的に嫌がらせを、具体的にはアカリさんが制作している動画作品やライブ配信に、誹謗中傷に当たるコメントを書き込んでいらっしゃいますね?』


「なっ――! は、はぁ? 意味わかんない。何でわたしが、いちいちお姉ちゃんの動画にそんなことしなきゃいけないのよ? 悪いけど、お姉ちゃんの動画なんて、一回くらいしか観たことないから。つまんなかったし、観る価値ないって思ったくらいでさ」


 スマホから流れる水沢さんの、核心を突く台詞を聞いて、風音は傍目にもわかるほどに狼狽えた様子を見せ始めた。


 表情はこれ以上ないくらいに強張り、眼球の動きも落ち着かなく揺れている。


 強がる口調で吐き出される声も、明らかに動揺を滲ませ上擦りかけていた。


「て言うか、マジ? お姉ちゃん、誹謗中傷なんてされてたんだ? 配信よりウケるんだけど」


「……」


 精一杯の皮肉をぶつけてくる風音の、その悪意が露出した気配に内心戸惑いそうになりつつ、それでもあたしは怯むことをせずに妹の敵意を受け止める。


『身に覚えがない、と言い張るのでしたら、それはそれで構いませんが、こちら側としてはいつでも法的措置へ出ることも可能なのですよ? これまでに書き込まれたコメントを全て保存させてもらい、書き込んだユーザーの個人情報も、開示を求める手続きができます。そうなれば、貴女には言い逃れの余地はなくなりますし、場合によってはここで白状するよりももっと酷い展開になってしまうかもしれません』


「そんなこと、いちいちわたしに言われても……」


『言われても、何です? 関係がないと? それでしたら、こちらで正式な手順を踏んだ上でコメントをしていた人物を特定しても、何ら問題はないですよね?』

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