動画越しの執念 59
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「お、もう返信がきた。良いね、こうレスポンスの速い人が相手だと、仕事がしやすくて有難い」
来客用のソファへ座りコーヒーを飲み始めていた水沢さんが、唐突にそんな呟きを室内に放った。
どうしたのかとスマホへ落としていた視線を上げると、水沢さんは立ち上がりスマホとコーヒーを手にしながらわたしの方へと近づいてくる。
「さてさて、瓜時くん。昨日の今日でいきなりだけど、美山アカリさんの依頼に決着がつきそうだよ」
「はい?」
「クライマックス。美山さんを苦しめている、犯人の正体がわかった。どうして生霊を飛ばすほどの恨みを抱いているのかは、本人を問い詰めるか美山さんから心当たりを聞かせてもらうしかなさそうだけど、まぁひとまず……」
そこまで一息に告げると、水沢さんはポカンとしているわたしの肩をポンと優しく叩き、
「瓜時くんのおかげでスピード解決。本当にお手柄だったよ。優秀過ぎるくらい優秀だ」
「え? え?」
先ほど見せた顔の写真が、想像以上に活躍したということなのだろう。
あまりにも急転直下な展開に頭が追い付かないながらも、わたしはまたしても水沢さんに褒められているという事実には、単純なくらい嬉しいという感情を抱いてしまった。
「えっと、よくわかりませんけど、ありがとうございます!」
頬が緩んでしまうのを自覚しながらお礼を言うと、水沢さんは
「ありがとうは俺の台詞だよ」
と笑って告げ、霊の顔が表示された自分のスマホを、わたしのデスクへと置いた。
「ここに写っているのが、声を吹き込んでいた生霊本人ってこと?」
嫌なものを見るように目を細めて、沙彩さんがまた写真を覗き込む。
「そう。この人が全ての元凶だ。動画に入っている声から感じた波長と、この画像から伝わってくる波長は一致しているし、コメント欄に書き込まれている誹謗中傷の大半も、この人の仕業でほぼ確定だろう。美山さんの動画を観ながら恨みつらみを書き込んで、その念を動画の中にまで染み込ませてしまっているんだろうな。十中八九、本人にその自覚はないだろうけど」
「煌輝はもう、この人が誰なのかわかってるの?」
「まぁね。それに関しても、瓜時くんの会ったことがないのに見覚えがあるっていう言葉がヒントになったよ。で、今美山さんにメールで確認をしてみたら、ビンゴ。ただ、まだ百パーセント俺の推測が正しいとは決めつけはできないし、後は最終確認ってことで美山さんに事情を説明して、ご本人の写真か何かを見せてもらえればしっかりとした答え合わせができるかな」
「この犯人と直接会おうとかはしてないでしょうね?」
危険なことは避けろと言うように、沙彩さんは水沢さんを見つめる。
「美山さんと話してみて、必要とあらばね。まずは、中途半端になってる事務作業の残りを片付けて、その後にもう一度美山さんへ連絡をしてみるよ」
「あの、リスクはないんですか? 人を恨んでいるような相手ですよね? 下手に刺激をする行為は危険なんじゃ……」
まるで週末のちょっとした予定を立てるみたいなノリで話を進めていく水沢さんへ、わたしは心配な気持ちを膨らませる。
「大丈夫。まぁ、任せておいてくれ。ここから先は、俺の仕事だ」
だけど、そんなわたしの胸中を軽くあしらうように笑って、水沢さんは置いたばかりのスマホを回収し、自分のデスクへと引き返していってしまった。




