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わたしは黄泉の光に魅せられる  作者: 雪鳴月彦
動画越しの執念
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動画越しの執念 58

 自分の名前が出てくるのではないか、実は既にこちらの正体を知っているのではないか。


 そんな疑心暗鬼に苛まれ、あたしは自分のリアクションがぎこちなくなっていることを自覚する。


「……ねぇ、紅美ちゃん。因みになんだけどさ、風音はブイフェイのことで、どんな話をしてるの?」


「風音がですか? んー、どんなって言われても、自分の好きなブイフェイとか、逆にこのブイフェイは苦手で無理とか、そんなことくらいですよ。あとは一緒に初見のブイフェイを探して、ライヴ配信をしてたら参加してみたり、ですね。おかげであたしも風音も、ブイフェイにはそこそこ詳しくなってきてるんです」


 得意気に口角を上げそう答えると、紅美ちゃんは丁字路の前で立ち止まった。


「それじゃあ、あたしはこっちなので。ここで失礼しますね」


「うん。いつも風音と仲良くしてくれてありがとう。気をつけて帰ってね」


 律儀に頭を下げる紅美ちゃんを直視したまま、あたしは努めて普通を装い別れの言葉を口にした。


 踵を返し去っていく後輩の姿を暫し眺めて、ようやくあたしも歩きだす。


 あの様子なら、風音はあたしのことを外部に漏らしてはいないと判断できそうだが、念のために一度注意をしておく必要はあるかもしれない。


 友人の姉がブイフェイをしているなんて学校内で拡散されでもすれば、どんなことになってしまうか。


 ほぼ確実に身バレのリスクは生まれるし、そうなれば両親にも迷惑がかかり、ブイフェイを続けられなくなる事態にだって陥りかねない。


「……もう誰かにばれてるとか、さすがにないよね?」


 不仲気味とは言え、妹を信じていないわけではないが、一度滲み出てきた不安はそう簡単には拭えない。


 風音にあたしがブイフェイをしていると話をしたときは


「ふぅん。最近部屋で話し声多いと思ってたら、そんなこと始めてたんだ。どうでも良いけど、うるさくはしないでね」


 と、本当にどうでも良さそうな顔で応じてきただけだったが。


 それともあのときの態度は、既に本人はブイフェイに興味を持っていてそれを悟られぬよう、無関心に振る舞っていただけだったのだろうか。


 ――帰ったら、本人に訊いてみよう。


 ただの杞憂であれば、風音には嫌な気分を味わわせてしまうことになるけれど、そのときはきちんと謝罪をすればいい。


 一度気になりだすと、どうしても気分が重苦しくなってしまう自分の性格が嫌になる。


 悪質な嫌がらせに怪現象。そこに加えて、妹への猜疑心。


 気が滅入ることばかり続くものだとため息をこぼしつつ、わたしは少しだけ歩みを速めて家へと向かった。

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