動画越しの執念 57
そんな風音がよく遊んでいる友達が、目の前にいる久部紅美だった。
仲の良い友達がいるというのは大事なことだし、別に非行に走っている様子もないのであたしも両親も自由にさせているが、たまに夜の十一時過ぎくらいまで帰宅しないことがあり、そのときだけは心配になってしまうのが、妹に対する唯一の悩みではある。
「はい。出かけるって言うか、うちで話をしてることが多いですけど」
「そうなの? それじゃあ、たまに夜になってから帰ってくることがあるんだけど、そういうときも紅美ちゃんの家に?」
「はい、うちの両親も風音のこと気に入ってるみたいで、夕食を一緒に食べたりもしてます……って、ひょっとして迷惑をかけちゃってたりしましたか?」
「ううん、そんなことはないよ。ただ、風音はその辺のことをちゃんと親に報告してないみたいで、それで少し心配にはなってたかな」
困ったようにあたしを見つめてくる紅美ちゃんへ、安心させるように笑みを返しながら優しく告げる。
「そうだったんですか。ごめんなさい、うちの方から連絡をするべきでしたよね」
「気にしなくて良いよ。悪いことをしてるってわけじゃないんなら、問題ないし。風音とは、いつもどんなことを話したりしてるの?」
重く沈みそうな空気を察して、あたしはすぐに話題を切り替える。
最近は本当にほとんど会話をしていないため、妹がどんなことに興味を持っているのかが気になり訊ねた問いかけに、紅美ちゃんは二秒ほど空を見上げて考える仕草をしてから、
「えっとぉ……まぁ、恋バナとか、学校の話とか色々ですけど、最近よくするのは、ブイフェイの話ですかね」
そう言って、スルリと上に向けていた眼球をわたしの方へとスライドさせてきた。
「え?」
「先輩は、ブイフェイって知ってます?」
まさか、という不安が脳裏に湧き出る。
「うん……動画サイトで、人気だよね。結構やってる人も多いみたいだし」
家の外では完全に秘密にしているあたしの活動を、風音が漏らしてしまっているのか。
「はい。クラスでもブイフェイの動画観てる人は多いんですよ。それであたしも興味もったんですけど、風音とは一緒にブイフェイの動画観て談笑してることが最近は多いですかね。猫目メイラっていうブイフェイ知ってます? あたしの推しなんですけど、男の人で声がすごくカッコいいんですよ。先輩も興味があれば、一度観てみてください」
「う、うん」




