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わたしは黄泉の光に魅せられる  作者: 雪鳴月彦
動画越しの執念
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動画越しの執念 55

「会ったことはないのに、見覚えはある? どういうことよ、それ。まさか、前世で知り合いだった人だとか言いだすつもりじゃないでしょうね」


 わたしと同様、頭にはてなマークを浮かべた沙彩さんが、突拍子もない可能性を口に出し、水沢さんを苦笑させた。


「前世の縁か。まぁ、中にはそういうケースもあるな」


「今回の件は違うの?」


「うん。残念ながら、園部の仮説は的外れ。でもまぁ、ぶっちゃけ俺もまだ百パーセント確信を持てたわけじゃないんだよ、この生霊に関してはさ。もう一度、美山さんと連絡を取って事実確認をしなくちゃいけない。その結果次第では、犯人の正体をはっきりさせられるし、対処法も決めることができる」


 こいつは想定していたよりも早く展開が進むぞ。


 ニヒルな感じの笑みを浮かべて水沢さんは言うと、よくやってくれたとわたしを見つめて大きく頷き、自分のスマホを取り出した。


「その写真、俺のスマホに送ってもらえるかな?」


「はい、わかりました」


 水沢さんの連絡先は既に登録してあったため、わたしはすぐに顔の写真を添付したメールを送信する。


「……よし、じゃあ後は美山さんへ連絡をして、気になった点を確認させてもらうとするか。犯人がどう打って出るかはわからないが、スムーズに事が進めば、今週中に全て片をつけられるかもしれない」


 自分のスマホへ送られた生霊の写真を眺めながら、水沢さんは元いたデスクへと戻っていく。


「すごいね、陽奈乃ちゃん。こんな短時間で、依頼解決の糸口を見つけちゃうなんて」


「そんな、ただの偶然ですよ。ブイフェイは暇なときに観てましたから、依頼の内容がたまたまわたしの趣味のジャンルと重なっただけで。それに、あの顔だって、本当にラッキーでパソコンが誤作動してくれたから気づけたんです。顔が映った一瞬に合わせるようにして静止しちゃったから、それがなければ、ずっと気がつけずにいたと思います」


 褒めてくれる沙彩さんへ照れ臭くなりつつ答えながら、わたしは改めて自分のために用意されたデスクへ意識を向けた。


 まだ何もない真新しい空間を眺める心地で引き出しを開けてみると、そこにはデスクと同じくらい真新しい事務用品がいくつか入っていた。


「それも、会社からの支給品ってやつね。最低限の物はあった方が良いかなって思ったから」


「ありがとうございます」


 不思議そうな顔でもしてしまっていたのか、わたしを一瞥した沙彩さんが説明をしてくれたことにお礼を述べ、それから用意されたコーヒーに口をつけた。


 そんなことをしている間に、水沢さんはアカリさんへメールを送り終えたようで、


「後は返事を待ってからだな」


 と一人呟くと、自身で飲むためのコーヒーを淹れ始めた。


「あの……。アカリさんからの返事を待つのは良いんですけど、わたしは今日、何をすれば? まだ観てない動画も残っていますから、それも全部チェックしておきますか?」


 ひとまず役には立てて、仕事をする環境も整えてもらえた。


 ここからは更に仕事をこなし、お金を貰うに値する働きができるよう、もっと努力しなくては。


「そうだね。瓜時くんは引き続き動画の確認をしてくれると助かるかな。他にも何かしら重要な手掛かりが零れていることも、ないとは言い切れないから」


「わかりました」


 スティックシュガーを二本カップの中へ投入する水沢さんへ頷き、わたしはスマホを操作しブックマークしておいた蒼雷メリルのチャンネルページを表示させる。


 具体的にどういったものが水沢さんの期待に添える手掛かりになるのかは、まだうまく把握しきれていないけれど、気になる箇所はその都度報告していけばいいだろう。


「それじゃあ、調べものの続きを再開します」


「着いたばかりなんだし、少し休憩してからでも良いのよ?」


 気遣ってくれる沙彩さんへやんわりと断りの返答を告げ、わたしは最後に観た動画の続きを再生させた。

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