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わたしは黄泉の光に魅せられる  作者: 雪鳴月彦
動画越しの執念
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動画越しの執念 46

 コメント欄の誹謗中傷も同時進行で確認していくが、一番最初に書き込みをされた動画から先は、一つも漏れることなく全ての動画に何かしらの暴言が書き込まれ続けている。


 ユーザー名も複数あり、グループなのか単独犯なのか、素人では判別ができない。


 ただ、ほぼ全ての誹謗中傷をするユーザーに共通しているのは、まともに使われていないのが素人目に見てもわかるアカウントだということ。


 つまり、新規で登録されたサブアカウントや、コメントが制限されるブロックや強制退会の対象となってもダメージがない使い捨てのアカウントが、ほとんどの誹謗中傷の書き込みをしているということ。


 それこそ、蒼雷メリルへ嫌がらせをするためだけにサイトへ登録しましたといいうような、そんな雰囲気が眺めるアカウントの群れから感じ取れる。


 簡単に調べてみれば、アカリさんの利用しているこの動画サイトは、一人でいくつでもサブアカウントを作成できるようになっているらしく、個人が複数のアカウントを生み出し、あたかも大勢で書き込みをしているように見せかけることも容易にできてしまうことが明確にできた。


 動画の中身に関しては、アカリさんとは別の人物とはっきりわかる声が紛れ込んでいるものが、三本に一つは確認できている。


 顔を発見できたのは、今回の動画のみで現時点では他に該当しそうなものはない。


 ただ、ほんの一瞬しか映っていなかったことを踏まえると、コマ送りでひたすら探し続けたりすれば、他にも映り込んでいる可能性は無きにしも非ずと言ったところか。


「聞こえる声は、どれも同じ人っぽいよね」


 男ではなく、完璧に女性の声。老齢ではなく、若い世代だ。


 恐らくは、わたしとそれほど変わらない年代ではないだろうか。


「生霊……か」


 これが本当に生きた人間の魂によるものだと言うのなら、先ほど見た顔がそのまま犯人ということになるのか。


「女の人の生霊。つまり犯人は女性で、尚且つアカリさんと面識があるか何かしらの恨みを抱いてる他人ってこと……」


 探偵でも警察でもないわたしには、現状でできる推理なんて何もない。


 サブアカウントを使っている可能性もあり得る現段階では、犯人が単独なのか複数犯なのかの明確な区別すら難しい。


 万が一複数犯であった場合は、主犯格が顔の女性と考えるべきなのだろうか。


「もうちょっと、確信に迫れるような手掛かりがあればなぁ」


 未確認の動画は、まだまだある。


 焦らずにじっくり調べていけば、犯人が何かしらのボロを出してくれていることも充分あり得るが、なかなかスムーズに作業を進められない自分がもどかしい。


「一週間で結果報告するとか、水沢さん言ってたっけ。間に合わなかったら、期限が伸びちゃうのかな」


 調査にかかる時間が長引けば長引くほど、アカリさんの精神的不安と水沢さんへ払う負担額は増加していくはず。


「わたしが足を引っ張るわけにはいかないよね……」


 誰だって、苦しむ時間や負担は少なければ少ない方が良いに決まっている。


 わたしの経験や実力不足で、周りに嫌な思いをさせるわけにはいかない。


 チラリと時間を確認すれば、もう就寝時間が迫っている。


 その事実を無視するように、わたしは気合を入れ直す意味で一度立ち上がり、コーヒーを用意するため台所へと下りていった。

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