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わたしは黄泉の光に魅せられる  作者: 雪鳴月彦
動画越しの執念
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動画越しの執念 45

 全ての動画に当てはまるとは言い切れないけれど、ブイフェイがアップする動画や生配信は実写でないことが過半数だし、アカリさんも例外なくバーチャル専門の配信スタイルを徹底している。


 であれば、このような映像が収録されることなど、それこそ閲覧者へ向けてのドッキリとかでもなければあり得ないはず。


 アカリさんがこんな悪趣味な仕掛けを自身の動画や配信へ組み込むとは思えない――もしそれが真実なら、さすがにネタばらしをしているだろう――し、観ている側が仕掛けることは更に難しい。


「何だろう、これ。うまく言えないけど、すごく冷たいイメージが伝わってくる感じがする。それにこの顔、どこかで見たことがあるようなないような……」


 画面に大きく映る瞳は、ジッとこちら側を睨みつけている。


 まるでその視線だけで、目を合わせた者を射殺(いころ)してしまえるのではと思えてしまうくらい、殺意のこもった鋭い眼差しに感じられた。


「気は進まないけど、一応写真に撮っておいた方が良さげかなぁ」


 心霊写真や心霊動画と呼ばれるものの中には、所持しているだけで持ち主に災いを呼び込むものが存在すると、ずっと前にテレビで霊能者が注意喚起をしていた。


 ここに映り込んでいる不可解な顔に、そういった力がないことを祈りつつ、わたしはスマホを構えて慎重に写真を撮った。


「よし、これは明日、水沢さんに見てもらおう」


 きちんと撮れたことを確かめてからスマホを机に置き、わたしは動画の続きを再生する。


「ん? あれ……今の顔、一瞬しか映ってない」


 再生と同時に、映し出されていた顔はすぐに無くなり、その後には特に異常のないごく普通の動画が流れていくだけだった。


 念のためにと、シークバーを戻して顔が映っていた箇所を観直してみたが、例の顔は一秒にも満たないほんの一瞬しか映像に現れておらず、数十回トライをしてみたものの、もう一度顔が映っているタイミングに映像を停止させることはできなかった。


「すご……。めっちゃ奇跡的なタイミングで停止してたんじゃん。写真撮っておいて正解だったぁ」


 意図せず引き寄せた偶然にちょっとだけ嬉しい気持ちになりながら、わたしは顔の件については一旦終わりとして、動画の先を視聴していく。

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