動画越しの執念 44
人の目が届きにくい所で、こうしてひっそりと活動をやめてしまう人たちも少なくはない、というのが現実か。
「もったいないなぁ。せっかくチャレンジしたのに、諦めちゃうなんて」
綺麗事な感情とわかりつつ、行動を起こしたというだけでも立派だと思ってしまうわたしにとって、それは素直な感想だった。
「でも、こうやって見るとやっぱりアカリさんって凄すぎるんだなぁ。こんな厳しい世界でちゃんと成果を出して、これだけ有名になれてるんだもんなぁ」
頭の良さ、なのか。それとも純粋な才能というものなのか。
わたしでは計り知れないくらい、雲の上の話だとため息をつきながら、そこでようやく画面をアカリさんの動画へと戻す。
少し寄り道をしてしまったという気持ちを立て直し、先ほどまで観ていた動画の続きのチェックを再開しようとしたが、そこに表示されている画面を見た瞬間、わたしは本能的に身体を硬直させてしまった。
動画はわたしが最後に観ていたシーンで止まっている。
このまま再生すれば、すぐにでも続きが観られるわけだけれど、わたしはそれをすぐにはできなかった。
「……これって、仕様ではないよね?」
独り言を呟くわたしの声が引き攣る。
パソコン画面に映された、蒼雷メリルとゲーム画面。
その上にまるで貼り付けられたかのように、半透明な何者かの顔がアップで映り込んでいた。
顔と言っても、全部ではない。
左半分。更に言えば、下唇から上、おでこの半分くらいまで。
それくらいしか収まらないほどに、その顔はカメラに近づいて映り込んでいるということだ。
まるでカメラへ目を密着させるくらいまで近づいて、蒼雷メリルを――もしくは閲覧者を――凝視しているようにも見えるその顔は、映像加工をしているわけでもない限り、確実に生身の人間ではないと断言できる。
もし生身の人間ならば、後ろに映るはずの蒼雷メリルやゲーム画面は完全に顔の後ろに隠れなくてはいけないはずだが、実際はその全てが見えているのだ。
至近距離からアップで映り込んだ、透けた顔。
それが、今わたしが見ているモノの正体だった。
「こんなの、おかしいよね。ブイフェイの動画は普通のカメラみたいに生身の身体を撮影することはあんまりないし、カメラの前に誰かが立ったとしても、人が映り込める仕様じゃないはず。仮に映り込めたとしても、アカリさんが気がつけないはずがないし……」




