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わたしは黄泉の光に魅せられる  作者: 雪鳴月彦
動画越しの執念
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動画越しの執念 41

「でも、毎日ではないけどこうして学校帰りにデートしたり、夜寝るまでの時間に電話とかアプリでやり取りするのって、想像してたよりも良いものだよぉ。ヒナっちも彼氏作った方が、人生が三十二倍くらいは楽しくなること間違いなしだぞ」


「あそう。わたしはまだそういうのはするつもりないけど、まぁ二人が幸せなら最高なことだよね」


 惚気(のろけ)丸出しな裕子の台詞を軽くいなしつつ、わたしは素直に二人を祝福するつもりで笑顔を向ける。


「もったいないなぁ。ヒナにも彼氏ができれば、ダブルデートとかも面白いかもって考えてたのに。でもま、ヒナにはヒナの人生や考えがあるからね。私は尊重するよ、その生き様を。んで、そっちは具体的にどんな仕事を始めたの? 探偵っぽい仕事って言っても、まさか本当に探偵してるわけじゃないんでしょ? ダメだよ、変な事件に巻き込まれるようなことしたら」


「ああ、うん。そういうのはないと思うから、大丈夫」


 今日から始めたばかりで、今後どうなるかはわからないけど。


 そんな余計な一言は吐き出す前に脳内で削除して、わたしは無難な返答だけに留めておいた。


「でも、高校生でもできる探偵っぽい仕事って何だろ。浮気調査とかするの? 働いてる場所教えてもらっても、お店じゃないなら冷やかしには行ってあげられないもんなぁ」


「浮気調査とかはないと思う。それはもう、普通の探偵がする仕事だと思うし。あと、迷いなく冷やかし前提で語ろうとするのやめて?」


「良いじゃん。もしコンビニとかで働いてるなら、ヒナのいるレジに並んで現金とポイントと商品券と電子マネー全部使って、面倒な会計お願いしてみようかとか考えた程度だよ」


「なかなかに最低じゃん」


 いつも通りの、くだらないやり取りをするわたしたちの横で、大石くんがくすりと笑った。


 それにつられて視線を向けると、眩しさに目を細めるようにしながら、


「二人って、本当に仲が良いんだね」


 と、どこか羨ましそうな響きを含んだ声で告げてきた。


「まぁ、毎日教室では馬鹿みたいなやり取りばっかしてるからね。気疲れがないんだよ、ヒナと話をしてると。面倒な社交辞令もないし、真面目な話題もたまにはするけど、結局は馬鹿話にすり替わっちゃうし。一番素で付き合える相手だね。――あ、もちろん翔もだよ」


 慌てたように最後の一言を付け加え、裕子が大石くんを見上げる――二人の身長差は十五センチくらいはあるだろうか――のを間近で見つめながら、わたしは胸中で確かにその通りだなぁと同意した。


 裕子とは、いつも気を遣わずに話ができる。


 それ故に、二人でいる時間は楽しくて仕方がないくらいだ。


 同じ感覚を共有してくれていたことに嬉しくなりつつ、わたしはスマホで時間を確かめ、「そろそろわたしは帰らなくちゃ」と名残惜しい気分を味わいながら二人へと告げた。


「そっか。ごめんね、引き止めるようなかたちになっちゃって。バイトのことは、明日にでもゆっくり聞かせてもらうわ」


「うん。話せる範囲のことならね。それじゃあ、大石くんも裕子のことよろしくお願いします」


「え? ああ、うん。任せて」


 突然話を振られ、一瞬ポカンとなった大石くんは、すぐに笑みを浮かべると温和な口調で返事をしてきた。


「何で保護者みたいなことをヒナが言うのよ。まったく、暗くなってきてるから、気をつけてね」


「うん、二人もね。それじゃ」


 口を尖らせ文句を言いつつも、こちらを心配してくれる親友へ軽く手を振って、わたしは再び家へと向かって歩きだした。

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