動画越しの執念 40
「うん、まぁねぇ。付き合い始めたのは、一月半くらい前なんだけど、恥ずかしいから言い出しにくくてさ。てか、初耳って意味でなら私だって同じですけどぉ? ヒナ、アルバイトなんて始めてたの? コンビニ?」
「違いますぅ。もっとこう……何だろ。特殊な仕事と言うか、うまく言えないんですけど探偵の助手っぽい仕事ですかね」
「探偵助手ぅ? ヒナがぁ? 想像できないわ、そんなの。てか、何で急に敬語使いだしてるの?」
「いや、何だか色々と複雑な気分になってきたから。え? でも待って、ホントに裕子の彼氏なんですか?」
日常生活が非日常に変わってしまったような感覚を拭えないまま、わたしは大石くんとやらへ裕子を指差しながら二人の関係について問いかけると、大石くんは優しそうな微笑を浮かべて
「うん、そうだよ」
と、はっきりとした口調で断言してきた。
「……はぁー、そっかぁ。裕子って彼氏作るんだぁ」
「は?」
想定していなかった親友の新しい一面を目の当たりにし、つい無意識に漏らしてしまったわたしの呟きに、裕子は喧嘩売ってんの? と言いたげな眼差しを返してくる。
「いや、そんな気配とか噂とかさ、今まで全然なかったし。勉強と部活と遊びに青春捧げてるんだろうなって、勝手に思ってたから。まさかここで恋愛とは、恐れ入りました」
わざとらしく頭を下げてわたしが茶化すと、裕子は
「あんたは人を何だと思ってるのよ?」
と、若干呆れた口調でぼやき、大石くんへ横目で一瞥してから馴れ初めの経緯を簡単に説明してきた。
「翔とは、部活のときに知り合ったんだ。翔、野球部の練習試合でうちらの学校に来ててさ、私はソフト部でしょ? 練習場所も近かったし、休憩時間がたまたま被ったときに女子たちでちょっと他校の男子を眺めに行こうかってなって、それで出会ったのがこの男よ」
「それで、一目惚れしたと?」
「一目惚れっていうか、話をしてみたら何だか気が合うなぁ見たいな感じで。そしたら、別れ際に翔の方から連絡先交換しませんか? って真面目な顔で赤くなりながら言ってきたもんだから、もう可愛いやら嬉しいやらで」
「骨抜きにされたと?」
「いや、骨は抜かれてないよ。そんなことされたら恐いでしょ、サイコパスじゃあるまいし」
「そういう意味じゃないでしょうよぉ」
何故か真面目に答えてくる裕子に、わたしは苦い声音で突っ込みを入れる。




